23話 決闘
握っている柄を構えて相手を見据える。鋭い視線を交わしながらリゼと僕はお互いに一歩も動かず固まっていた。
何故だか別人のように気迫を感じるリゼに、本気を出さなきゃこっちが危ない気がしたから。太陽の光がジリジリと降り注ぐなかで、あの赤い瞳は決して、焦点を反らさずずっと隙を伺っているのはよくわかる。
リゼが持っている長い武器は、青白い光を煌めかせながら電気を放ち時々ばちっと音を立てるだ長剣だ。
これは丸腰かと思っていたリゼがどこから出してきたもの。
始めはただの棒切れかと思った。まぁ詳しく言うと、刃先がない柄。どうみても役に立ちそうもない物だった。それでどう戦うんだろうっと思ったが、試合になった瞬間に起動させたようで、目を張った。
(ちょっと危なすぎやしませんか!?)
内心焦りった。表情に出さないように勤めた。魔王から助言がなければ僕は聖剣を持ってこなかっただろうが、今思えば魔王に感謝だ。
こんな本気モードの相手に普通の剣では難しそうなことがなんだから腹立たしい。
両者動く気配がないとでも言うべきか…。
いい加減このにらみ合いに疲れてきた。
ため息を心の中で吐いたが、それが相手にわかったんだろう。
リゼがこちらに向かってくる。僕は据えて待ち、左手側から裂くように斬りつけられる刀を、ワンステップでひらりと僕は避けて、剣を振り下ろす。
しかしリゼは容易く剣を受け止め、撥ねる。その反動で僕はすっと距離を離しまた剣を構え直す。思ったより出来るみたいだ。
「やるね」
「そりゃどうも」
ニヤリと笑ったリゼが、またこちらに素早く接近し、今度は頭目掛けて振り落としてきたので剣を頭上に向け防ぐ。
「でもこれはどうかな?」
その言葉に裏が有りそうで、はっとして剣を払い退けようとした。が、遅かった。リゼが言った瞬間には剣が青白く光が増して電流のように聖剣から僕の方へと伝わり強烈な痛みが走る。
こんな痛みに耐えられるはずもなく、聖剣を握っていた手はいとも簡単に離してしまってドンッという音と共に落ちた。
(ダメだ)
気が遠くなりそうになったときに強烈な痛みが引き、ぺったんと腰を落としてしまう。
どうしたんだろうてあの痛みが引いたのだろうと上を見上げれば、ノアがリゼを取り押さえて、魔王がリゼがさっき使っていた棒切れを持っていた。
「言いましたよね?魔法は使うなと…」
「アークスはバカなの?これ魔法じゃないし、ただの魔具だし」
「…それを屁理屈だろ」
「屁理屈じゃねぇし!ちゃんと改良した俺専用の武器なの!!」
仁王立ちに言うリゼ。そこ威張るところなのか…。
ノアの眉間の皺を深くしたところで、
「あなたは失格です」
「えー」
「あたりまえだろう」
「ちょっ魔王までそう言うの!!」
ショックとばかりに、顔が青ざめているリゼ。あわあわと震えだしている。なんとなくだが、前のへなちょこリゼに戻ったようだ。魔王の一言恐るべし…。
というかこの状況一様は僕が勝ったてことでいいでしょうか?