さすがに……きついですわ
「見せてやろう。煙草式魔法の究極の極致を!!」
そういってブラック・デビルは10本の煙草に一気に火をつけると一気に吸い、そして大量の煙を吐き出した。そして煙は徐々に形を変えていく。それは強靭な四肢と翼をもつ
「煙草式魔法5式・改“スモーク・ドラゴン”!!」
ドラゴンであった。
「さぁ行け!小娘をタールの海へと鎮めるのだ!!」
ブラック・デビルに命令され、スモーク・ドラゴンは真っ黒なブレスをピアニスに向けて発射した。ブレスからはタールをはじめとした煙草に復われている有害物質の香りが立ち上っている。
「くっ!」
ピアニスは寸でのところで躱すが、スモーク・ドラコンは容赦なくピアニスへタールのブレスを浴びせんとしている。おそらく当たればタールに絡めとられ、動くことすらままならなくなってしまうであろうブレスをピアニスは紙一重で避けていく。
「“ポイ捨て”!」
ピアニスも負けじと煙草式魔法3式“ポイ捨て”を発動するが、ピアニスの放った煙草はスモーク・ドラゴンをすり抜け、眼下で爆発した。
「……なるほど。実体のない煙の体というわけですか。」
ピアニスとブラック・デビルが現在乗っている煙草式魔法5式で作り出された“紫煙”は実際に触れるし質量もある。だが同じ魔法で作り出された目の前のスモーク・ドラゴンには実体がない。それもそのはず。スモーク・ドラゴンは“紫煙”を形作る有害物質をすべて攻撃に転じているためである。そのためスモーク・ドラゴンは実体を持たない、名前の通り煙の体を持っている。
「このままじゃ埒があきませんわね……!」
ピアニスはスモーク・ドラゴンのブレスを躱しつつ、さらに上昇していく。スモーク・ドラゴンはそれを追いかけ、さらに上昇していく。
「フフフ……たとえ地の果てまで逃げようともスモーク・ドラゴンは煙のように追いすがりますよ。」
“紫煙”の上で優雅に煙草を吸いながら空高く上昇していくピアニスを見物するブラック・デビル。その間にもスモーク・ドラゴンを創り出し、次々とピアニスのもとへと向かわせている。
一方ピアニスは四方八方からのタールのブレスを躱すので精いっぱいだった。だが、すべてよけきれるわけでもなく、ピアニスの左手、そして左足はタールによって固められ、少しも動かせなくなってしまっていた。それでもピアニスは“紫煙”を駆ることをやめなかった。だが、次第に増えていくスモーク・ドラゴンたちの猛攻にピアニスは次第に追い詰められていく。しかし、ピアニスはそれでも止まらず天高く飛翔する。
そして
雲が真下に見えるほど高高度へとたどり着いたとき、ピアニスは体のほとんどをどす黒いタールに覆われ、視界もほとんど効かず、スモーク・ドラゴンたちに囲まれている、まさに絶体絶命の中こう唱えた。
「アクア・ウォーター」
その瞬間、ピアニスの”紫煙”は消え、ピアニスは真っ逆さまに落下していった。