図書館
図書館には私が見る限り誰もいなくて、どうやら司書の先生も奥の方に引っ込んでいるみたいだった。
図書館は昼休みは煩いだけだし、放課後は逆に行くのが面倒臭いからあまり来た試しががなかった。
中学の時はとてもこじんまりとした図書館で映画とかアニメとかのノベライズ本とかばかりが置いてあるイメージだったけれど、流石に高校ともなればそんな本はざっと見ても見当たらなくて新着本のコーナーには現在の不況を語った新書本が置いてあった。
私達は図書館の真ん中を陣取る6人がけのテーブルにつくと、それぞれ脇に原稿用紙とぱを置いた。
パソコンなんて本当は図書館持ってきてはいけないはずなのだけれど、今はこれから彼の口からどんな言葉が発せられるのか凄くワクワクしていて、そんなことは気にも留めなかった。
自覚はしていなかったけれど、私にはもしかしたら彼に選ばれたなんていうどきどきとそれに見合う期待が綯い交ぜになっていたのかも。
「それでさ、何か用事があるんだよね?」
ほぼ初対面といっても過言ではない彼とふたりきりで図書館にいるというのは、どうしてこんなにも私の心臓を少しずつ跳ねあがらせていくのかな。
これが、梓の言っていた青春ならば悪いものではないのかもしれないなぁ。
「いや、2人で共作を一緒に作れないかなぁと思ってて…」
そこまで言って彼は下を向いて、男子にしては長めの前髪を引っ張り始めた。
後から、これは彼が恥ずかしい時にする独特の癖であることを知った。
私はそんな彼をあえて下から窺うようにして話しかける。
「なんで私?」
正直、私よりも真面目な人なんてあの文芸同好会には沢山いるのに。
わざわざ不真面目な私を選ぶ理由があるのかなぁ。
「えっと、なんかさ、飯田さんの雰囲気が好きっていうか…。一緒に作ってみたいなぁ、と思ったんだけど。そしたら楽しそうだなぁ…とか」
そう言うと彼は覗き込む私から顔をそらすように、反対側ん向いていた。
彼の後ろ髪から垣間見える耳がほんのりと紅くなっていて、私に対してこんなにも紅くなりながら提案してくれてるんだと思ったらもう彼が可愛くて可愛くて仕方なくなってしまった。
「いいよ!じゃあさ、折角だからどんな話にするかはなそうよ」
もう、その時には彼の魅力に私は惹かれてて。
その時から胸の奥にある、小さなスイッチがかちっという音を立てて、私の中の微かな恋をスタートさせていた。




