2人で
文芸同好会、と言ってもそれは小説を書きたいという人が集まって各々で小説を書くというスタイルで同学年の人ともあまり喋ったことはなかった。
そこでは賞に応募する、というのが全員の目標で実際過去に何人か入賞をもらったこともあるらしい。
本気で小説家を目指している人は原稿用紙と万年筆を持ってきていた。
だから、万年筆のカリカリという音とくしゃくしゃと失敗した時の音が聞こえてきて、それは何とも言えない雰囲気を醸し出していた。
「飯田さん、今何してるの?」
正人と初めて喋った時の会話。
隣で彼は自分のパソコンを立ち上げていて、その白い画面には半分くらいまでぎっしりと文章が書かれていた。
ちらっと横目で見ると、それはどうやら恋愛のようでちょうどキスをしているシーンみたいだった。
「あ、何見てんだよ。まだ全然書けてないし、恥ずかしい」
彼はパソコンの画面を覆うようにして、私から見えなくなるようにして言った。
その時の彼の顔はほんのりと紅く染まっていて、不意に可愛いなと思ってしまった。
もしかしたら、その時から私は彼のことが好きだったのかなぁなんて思ったり。
「隠すことないじゃん、見せてよー」
「もう、そこうるさい!図書館で喋ってきてよ」
喋ってると、窓の近くで原稿用紙に黙々と万年筆で小説を書いてる部長がイライラしながら珍しく大声で怒鳴った。
「………あ、すみませーん」
部長は黒縁眼鏡をくいと押し上げて、私達が教室を出て行くのをじっと見た後に元の自分の作業に戻った。
「あんなに怒らなくったっていい気がするのに」
私達は部長が言ったように図書室へと向かった。
「まぁ、でも新人賞の応募締め切りまで2週間しかないから、先輩も焦ってるんだよ」
正人はそう私を慰めるように言った。
日光が窓からキラキラと入ってきていて、原稿用紙とボールペンを持った両腕の右側だけがじんわりと熱を持っているのが伝わってくる。
「そっかぁ、私、知らなかったなぁ」
嘘でしょって顔をして彼は隣でハハハッと笑った。




