96 おかえりなさい その2
「ただいま帰りましたー。」
お昼の営業も落ち着いてきたころに、聞きなれたおっとりした声が入り口から聞えた。
入ってきたのは3人。
「アリサさん、エリカさん、レックスさんおかえりなさいー。
フェリックスさんは?」
「はいー、冒険者ギルドにー、報告にー、行ってますよー。
わたしたちだけー、先に来たんですー。
あー、でもー、リックの分もー、ご飯お願いしますねー。」
「はーい、かしこまりましたー。
それじゃテーブルへどうぞ。」
少しお客様も減ってきてたから、すぐにテーブルにご案内できた。
そのままあたしは厨房へ。
「クルトさん、あと4つ入ります。
フェリックスさんたちが帰ってきたの。」
「そうか、今回は少し早かったみたいだね。」
そういいながら、あっという間に盛り付けをすませてしまうクルトさん。
あっという間に4人分のランチが完成しちゃう。
「それじゃ運んでもらえるかな?」
「はーい。」
さすがに4つ全部一気に運ぶのはまだ無理だから、2つずつ運ぶことにした。
テーブルに持っていくと、フェリックスさんはまだ戻ってないみたい。
「お待たせしました。
あと2つもすぐにお持ちしますね。」
「ありがとうー、お願いしますねー。」
戻るときに、お客様が帰った後の食器をいくつか回収していく。
だいぶお客様も減っちゃったね。
回収した食器を水場に置いて、残った2つのランチを運ぶ。
食堂に入るのと同じくらいに、カランカランと音がして、玄関の扉が開いた。
「ふぅ、ただいま。
間に合ったか?」
「大丈夫ッス、多分もうすぐ来るッスよ。」
「はーい、お待たせしました。
フェリックスさんもおかえりなさい。」
「おっ、ぴったりか。
ただいま、ミアちゃん。」
さっきの2つは、アリサさんとエリカさんの前に並んでたから、今持ってきた分をレックスさんとフェリックスさんの前に置く。
ペコっとお辞儀してテーブルを離れて、また食器の回収。
っていうか、もうフェリックスさんたちしかいないのね…
だいぶ遅いもんね。
「クルトさん、多分今のが最後ですー。」
「了解、リックたちはまだ少しかかるだろうから、交代でご飯を食べてしまおうか。」
「はーい。」
ためた水に食器をつけておいて、先にご飯をいただくことなった。
クルトさんはあたしが終わったら食べるみたいだし、ちょっと急ぎめに食べなきゃね。
あたしが食べてる間に、クルトさんが洗い物をしてくれてたから水場もだいぶ片付いてきてる。
うー、だいぶ急いだつもりだったんだけどな。
「ごちそーさまでした。
クルトさん、変わりますー。」
「それじゃ、食堂の方を見てきてくれるかい?
もしかしたら食事がすんでいるかもしれないからね。」
「はーい、いってきまーす。」
食堂に入ると、もう食事は終わってたみたいで、マリーさんとみなさんがお喋りしてた。
んー…お茶とかだしたらいいかもしれない…
「すみません、食器だけ下げますね。」
「はいー、ここにー、そろってますー。」
アリサさんが指したところに、4人分の食器が重ねてあった。
結構いろんな人がこんな風に協力してくれるんだよね。
食器を運んで行こうとしたら、マリーさんに呼びとめられた。
「ミア、向こうが片付いたらクルトと食堂来てくれる?
ちょっと話があるから。」
「はーい。」
お話、何だろ?
とにかく厨房に食器を持って戻って、クルトさんにも伝えなきゃ。
「クルトさーん。」
「あ、食事終わってたんだね。」
「はひ、えっと…
こっちが片付いたら食堂に来てほしいって。
お話があるってマリーさんが言ってたよ。」
「そうか…まあ、だいたいは片付いているし、その食器を洗ってしまおうか。
ミア、ちょっと任せていいかな?」
「うん、だいじょぶだよ。」
あたしはそのまま、水場で食器を洗う。
クルトさん、他の分全部洗っちゃったんだね…任せっぱなしだよ…
そのクルトさんはご飯の準備かな?
4つだけだし、さっさと洗ったつもりだったんだけど、その間にクルトさんは2人分の賄いの盛り付けを終わって、お茶まで準備してる。
「こっち終わりました。」
「ちょうどよかった。
ミア、お茶を持ってきてくれるかい?
私はマリーの分も合わせてお昼を持っていくから。」
「カップもだよね。
おっきいポットってことは、フェリックスさんたちの分もだよね。」
「うん、ちょっと量が多いけど頼むよ。」
大きめのトレーにポットとカップを載せて、クルトさんについて運んでく。
食堂ではマリーさんたちがお話してた。
「お待たせ、マリーもちょっと食べといて。」
「あらありがと。」
「みなさん、お茶をどうぞー。」
マリーさんとクルトさんが並んで座ったのを確認して、みなさんにお茶を配っていく。
最後にあたしの分を持って、あいてるイスに座った。
「ミアもありがとね。
じゃ、ちょっと話戻るんだけど…」
そのお話はちょっと大変なものだったんだ…