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  作者: ゆくえ知らず
牧之条明日香
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57/62

牧之条明日香 5

 出雲大社が最終目的地だと思っていた。


柳沢君も「ここだ」と言った。


 だから、柳沢君からパパに会えないと言われた時、しかも彼がそれを想定していたかのような態度を見せた時に、裏切られたと思ってしまった。


 私は、出雲大社に邪魔が入らずに無事に到着したことで、そこが目的地だと言われたことで、ママが写真を撮った場所を訪れることができたことで、少し気が緩んでしまっていたのかもしれなかった。

 そのためだと思う、落胆も大きくて柳沢君を許すことができなかった、その時、もう口もききたくない、と思った。


 私は絶望し、諦めていた。きっとママと同じ運命を辿るんだ、そう思った。


 京都駅に到着する直前に、柳沢君が「お父さんに会わせる」とタイプした画面を私の眼の前に差し出した時、その文字の並びが知らない言葉のように感じられ、その意味を理解するのに随分時間がかかった。

 その言葉の意味を理解した時に私の心に広がったのは、パパに会えるという喜びよりも、柳沢君を裏切ってしまっていたという恐ろしいまでの後悔だった。


 柳沢君は、今でもこうして、最後まで私を逃がすことに一生懸命になってくれている。彼は手を差し伸べ続けてくれていたのに、私がそれに気がつかずに背を向けてしまった。裏切ってしまったのは私だった。

 すぐに謝ろうと思ったが、止められた。


 そして、もう時間はない。

 私にはどうすることもできない時間が過ぎていき、柳沢君がスマホの画面を見せて「行って」と指示し、その指示の通りに今、私は車室の出口に向かっている。

 

 彼は今どんな気持ちでいるんだろう、顔を見たい、顔を見て謝りたい。そう思うと泣きそうになる。

 でも、ここで彼の努力を無にするわけにいかなかった。振り返ってはいけないんだ、カゴの外に出るんだ。車室の出口が自動で開き、私の後ろで静かに閉まった。


 とにかく、今はパパに会って、逃げ切ることに集中しよう。トイレに向かえと言われた、この先にパパがいるんだ。


「明日香」と突然呼ばれて足を止めた、パパの声ではない。


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