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  作者: ゆくえ知らず
牧之条明日香
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55/62

牧之条明日香 3

 

 夏休み最後の学校開放日にようやく久美子に会えた。

 久美子は、少し雰囲気が変わっていた。そう伝えると、久美子は安達くんとのことを話してくれた。

 

 久美子の瞳が少し潤んでいて、女性の顔をしていた。


「もっと豪毅に近づきたい」と久美子はつぶやいたが、安達くんは愛されすぎていてまだ子供のように思えた。安達くんから見たらクラスメイトは一緒に秘密基地を運営する仲間にすぎないのだろう。

 彼から見たらそれがとても大切なことだけれど、久美子にとっては「仲間の一人」であることは物足りなくて、辛いことなのかもしれない。安達くんが自身の中にある久美子への感情に気がつく時があったら、それはとても素敵なことになりそうだった。

「羨ましいわ」と私は言った。私の境遇とは懸け離れた世界だった。


 久美子、あなたが羨ましい。


 私は、背中の羽が少しでも大きくなっているだろうかと時折鏡で背中を見た。 


 透明な見えない羽は、この文化祭でキャストを演じたらまた少し大きくなるはずだ。男装して愛想を振りまいて知らない人と話す、それはとても怖いことだったけれど、この羽が大きくなって、カゴの外へ出る力になるのであれば、それは楽しみなことだった。この羽はいつか飛び立てる力を持つはず、焦らずにゆっくりと育てていけばいい。


 しかし、文化祭を緊張しながらも心待ちにしていた私の希望は、文化祭を前にして霧散した。

 ママが、私の目の前で道路に飛び出して車に轢かれた。


 手のひらにのせた文鳥の死骸が蘇った。

 これも私だ、ママの姿も私だ、そう思った。

 牧之条家にこのままいたら、私はこうなるんだ。

 

 ママを亡くした悲しみよりも恐怖で足がすくんだ。そしてその時、初めて出会った時の久美子の姿を思い出した。光溢れる中にまっすぐに立つひまわりの花。

 

 私は、逃げることに決めた。


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