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第二十三話 月の軍、動く

 ――一か月後。


 月の軍艦が、ディランたちの搭乗する交易船に接舷する。

 月とアクエッタ間の航路を治安管轄をしている、第四師団が臨時の立ち入り調査をするという。


 軍艦から道板が交易船のデッキへと伸び、月の兵士たちが規律的な動きで、器具を固定していく。

「完了しました!」

 兵の号令が響く。第四師団は月の軍の中でもエリートたちが集結する、治安維持部隊である。現状、月に軍事的な脅威は存在していない。そのため、治安維持と称して紛争解決やするこの第四師団こそが、一番出撃機会も多く、月で唯一の実戦部隊と言われている。

 その第四師団が、わざわざ小型交易船の検査を行うなどなかなか前例がない。そもそも、月の入管検査を受けている船をわざわざ検査するなど、身内を疑うような行為である。


 彼らの言い分はこうだ。

「最近、この航路で不審船が目撃されている。出港後に接触して不審物を受け取ていないか、形ばかりの検査をさせてもらう」



「検査、ご苦労様です。よろしくお願いします」

 無精ひげをそり身なりを整えた船長が、月の調査団を迎えた。

 ――馬子にも衣装。正装した船長は、あの飲んだくれた姿が別人のように毅然としている。元々大柄な体躯、背筋を伸ばすと見上げるほどであった。そんな彼に、

「全く……古い船だ……もっと簡単に入れる様にしておけ……」

 と、憎まれ口をたたくのは中肉中背の調査団長、名前をカンサ・アッセイと言った。疎まし気に宇宙服を脱ぎ、取り巻きへと投げ捨てる。

「申し訳ありません……お手を煩わせてしまい……」

 正装した船長は、その態度までが丁寧である。しかしそんな彼に対し、カンサは舌打ちをしながらさらに悪態をつく。

「全く……これで何もなかったら、おまえを牢にぶち込んでやるからな」


 そう、この検査は仕組まれたものだった。月の軍部が臨時検査を装い、船からの貨物の調査要請に応えたものだ。しかし、一介の小さな交易船の要請に応え軍部が動くなどありえない。


「よし、さっさと調べろ。私も検査に参加する。おい、貴様らは部屋に戻れ。怪しい動きをするなよ?」

 カンサの怒号が響く。船長はこぶしを握り締めていた。まるで、自分たちが違法者扱いである。

 船長は振り向き、操舵室へ歩む。

 そして小さな声で、

「おのれ、月のブタめ……」と、誰にも聞こえぬように吐いた。

今回は短くてすいません!

次回もお楽しみに!

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