第1章「転入生」(1)
青空広がる6月初め。私東山希々も4月に入学したこの高校に慣れ始めてきいた。
ここは大阪府吹田市、千里ニュータウンと呼ばれる場所にある府立南千里高校。
私の自宅から徒歩10分程度にある普通科高校である。
この高校を選んだ理由は大きく分けて2つある。
1つは単純に家から近いこと。もう1つは私の学力と高校の偏差値が最も適していたからだ。
制服はベージュ色をベースにしたブレザーと深緑色のスカートとリボンで私は結構気に入っている。
高校に入学してから特にトラブルやいじめに遭うことなく平和で穏やかに過ごしていた。
ちなみに大学は進学校狙いなので部活には入らず、家に帰ったら参考書をひろげて勉強している。
しかし、6月2日の金曜日の朝のそのイベントは突然発生した。
「新しい転入生?」
朝8時35分。
教室に着くと先に着ていた中学からの友人である白石瑠琉が興奮気味で鼻息を荒げながら私に転入生の話題を持ちかけた。
「そうだよ希々!しかも1人じゃないんやで!4人も来るんやで!」
「はぁ!?一度にも4人も?」
「すごいよね!今、学年全体でその話題で盛り上がっているで!」
そりゃ、こんな普通科高校に一気に4人も転入生が来れば話題になるよ。
「で、どんな人たちなん?」
「日本人2人とアメリカ人2人で全員女子」
「へぇ・・・え?・・・えぇっ!?アメリカ人?!」
流石にこれはもう夢かもしれないと思った。
何でアメリカ人がこんなニュータウンにある普通科高校に転入するのか全く理解できなかった。
いや、夢だった方が良かったのかもしれない。
「ちなみにこのクラスに来るは日本人の方やで」
「へぇ・・・」
「それでや!さっきその転入生の子たまたま見たんやけど、めっちゃ可愛かったで!ザ・大和撫子って感じ」
「大和撫子か・・・うん、それは気になる」
朝8時45分。1時間目に入る前の5分間のHRにて担任の秋山先生に連れられその転入生はやって来た。
(へぇ・・・あの子が転入生か)
教室に入ってきたのは、さらさらとしたセミロングの茶髪に優しい顔立ちの身長170cm近い少女であった。
男女問わず、クラスメイトは全員彼女に釘付けになっていた。
(可愛い・・・たしかに瑠琉の言うとおり大和撫子って感じかも)
私は少しにやにやしながら彼女を見つめていた。
すると、彼女も一瞬私の方を向いて、微笑んでいた。
私の気のせいかもしれないが、少し彼女の瞳は潤んでいた。
「はいはい、お前ら落ち着けー」
秋山先生は騒いでいるクラスメイトたちをたしなめた。
そして転入生の彼女に白のチョークを持たせ、黒板に名前を書かせた。
しばらくして、黒板には綺麗な文字で彼女の名前が書かれていた。
「太浪東」。
それがこのクラスに来た転入生の名前であった。