第1章「転入生」(2)
「アメリカから帰国して来ました太浪東です。よろしくお願いします」
太浪さんは可愛らしい笑顔で簡潔に自己紹介した。
しかしこの声を私はどこかで聞いたことがある気がした。
いや、気のせいなのかもしれない。
「じゃあ、太浪さんは窓側の空いている席へどうぞ」
「はい」
やっぱり私の隣の席じゃなかったかというくだらないことを考えているうちに太浪さんは自分の席へ歩いていった。
まだその理由はわからないけど、私は太浪さんと仲良くなれそうな気がした。
気のせいだろうか。私の席に近づいた時、太浪さんは私の方を見ていた。
この瞬間だけ、私の時の流れがスローモーションのようにゆっくりと流れている気分になった。
「にっ!」
「・・・・・・」
とりあえず、私は太浪さんににこっと笑顔を送った。
何の反応もなかったけど太浪さんは笑顔のままだった。とりあえず私が変な人と思われてないことを祈るばかりだ。
「やっぱ、話しかけづらいなぁ・・・」
それか昼休みまで時間は流れたが、私はまだ太浪さんと話ができていなかった。
理由は簡単、他のクラスメイトたちが男女とも太浪さんの席に集まっていろいろ質問なりお話をしているからだ。
転入経験のない私にとって、転入生ってこんなものなのかなと思っていた。
あと太浪さんは可愛いから興味ある人も多いのかもしれない。
「あ!そうや!」
隣にいた瑠琉は何か良からぬことを思いついたらしい。
変な行動を起こして注目してもらうのも良くないので、もしその場合は私が全力で止める。
「時間つぶしに他の3人の転入生見に行かへん?」
ニパッと笑い何か得意げそうに瑠琉はそう言った。
「いや、多分ここと同じ状態だと思うよ」
「えー。ええやん。一目見るくらいはどこも行けるって」
「そうか・・・」
しばらくそんな瑠琉とそんなやり取りをして、とりあえず他の転入生たちを一目見ることにしたその時だった。
「あずまさーん、鈴乃です!昼休みですので着ちゃいましたー!」
教室の扉の方から、ボーイッシュな元気の良い声で太浪さんに呼び掛けた。
私が振り向くと前髪は五分分けのショートヘアで身長は太浪さんより少し低めの1人の女子生徒がいた。
とても大きな声だったので、太浪さんに話しかけていたクラスメイトたちも驚いて一斉に彼女の方を向いた。
「あ、鈴!丁度良いところに」
太浪さんが「鈴」と呼んだ子は太浪さんの席へ来た。
転入生の太浪さんが「鈴」と親しげに呼んでいるということは・・・。
「あの子も転入生の1人・・・?」




