絡み始める運命
電話をかけて、しばらくすることもないのでボーっとしていると、電話がかかってきた。
「はい、イグレントでございます。あら?うん、わかったわ。ちょっと待って」
エリーさんはそういって電話を子機に持ち替えると別の部屋に入っていった。
「誰だろ?」
「お友達とかじゃない?」
「お母さんが子機で電話なんて珍しい……。内緒話かな?」
マリアはエリーさんの入った部屋のドアに耳をくっつける。
「マリア!そんなこと……」
「もうっ、マサヤ君も共犯なんだよ?」
マリアに無理矢理電話内容を聞かされる羽目になる俺。
「……それで、向こうの警察の人はなんて?」
相手の声はもちろん聞こえない。
「……よかったじゃない!それで?……え?」
エリーさんの驚きの声。そして……
「あの人……生きてるの?」
「じゃあ……え?ちがうの?なんだ。びっくりさせないでよ。え?それもちがう?……わかったわよぅ。それで、ほかは?」
「ねえ、マリアのお父さんって、行方不明とかなの?」
俺は話に耳を傾けつつもマリアに気になることを聞く。
「違うよ。マサヤ君は見たことないんだよね。私のお父さん」
「うん」
「マサヤ君が寝込んでるときに使ってたベッドはお父さんのベッドなの。最近帰りが遅くて、忙しいのかな?って思ってるんだ」
「へえ……、じゃあ、エリーさんは誰について話してるんだろ?」
「やっぱり?じゃあ、どうする?あの子はなにも知らないわ。……え?そんな巻き込むなんて……。嘘。マサヤ君も?」
え?俺?いったい誰と話してるんだ?
「じゃあ、話してみるわ。あのことはもちろんまだ黙っとくわよ?はいはい。じゃあね」
エリーさんが戻ってきそうだったので、急いで元の位置に戻った。
「お母さん、電話誰だったの?」
マリアが聞く。
「そのことについて話さないといけないことがあるの。特に……マサヤ君に」
「……俺、ですか?」
「そう。マサヤ君、さっきあの建物に拉致されて来たって言ってたじゃない?」
「あ、はい。言いました」
「さっきの電話ね、リッツからだったの。あの建物についてワーナルの警察との合同捜査が決まったんだって。それで、資料を見せてもらったそうなの。そしたら……」
「俺の資料があったんですね」
「そう。リッツはその資料を見せてくれた刑事さんに話を詳しく聞いてみたそうなの。そしたら、資料の中で生存が確認されてるのは3人。そのうちの二人はワーナル地方にいて、もう一人は行方不明だって。爆発に巻き込まれてしまったってことなんだけど、現場には一人しかいなかったんだって。それは今朝話したわよね。あ、その救助された人、無事だったって」
それはすでにウィン先生から聞いた。三人ってことは、俺、由季、俊貴のことだ。
「その行方不明が俺なんですね?」
「そういうことなの。それで、警察が協力して組織を摘発する事になったんだけど……、マサヤ君がうちにいるってことは言い出せなかったらしいの」
「はあ……。ということは?」
「マサヤ君!ワーナル地方に帰りなさい!大丈夫。追い出す訳じゃないからね。何のためにマリアにもこの話を聞かせたんだと思う?」
「え?もしかして、私も行くの?」
「そう!さあ、いつでも出かけられるようにしとくのよ」
訳も分からぬまま出発の準備をするマリア。
「あの、俺は……?」
「マサヤ君はいいのよ。全部マリアに持たせとくから!」
「はあ……」
なんだか突然に出発することになった俺達。
いきなりだったなあ……いつもこんなに慌ただしいんだろうか?
「じゃあ、マサヤ君、マリア、行ってらっしゃい!」
次の日、エリーさんとリッツさんに見送られて、俺たちは出発した。
「リッツ、よかったの?本当に、マリアは何も知らないのよ?」
二人が出かけたあと、エリーはリッツに聞いた。
「組織が動き出したの……。あの子の人生、めちゃくちゃにされちゃうのなんて、私は嫌。でも、私たちにできることは限られてる……。だったら、何も知らないまま安全な場所に行った方がいいわ……」
「あっちの方が……安全なのね?」
「マサヤ君がいた病院のお医者さんは、一度、あの組織の構成員を捕まえたことがあるそうよ。それに……兵器にされた子たちが……二人もいる。対策を練ってないはずがないもの」
「……それで、あの人の情報は?」
「電話で言ったことは本当よ。あの人は生きてる。でも……戦えないわ。下手したら……死んでしまうかも知れない」
「でもあの人も……」
「うん……。あの町に、向かってる。まるであの町にあの子が向かってること、知ってるみたいにね」
「私たちは?」
「私たちはあの子の帰ってくるこの場所を守りましょう。……組織が何を考えているのかはわからないけど……」




