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第9話 会話
バイクが粉々にぶっ壊れてしまったので、歩いて向かう。
月明り、海、草原、全く静かな空間。
助けに来た人間を後ろから殴り倒す女。
わからない。この女が。
「あいつはなんなんだ?」
「あの人は近衛府御城内定詰冷泉院三尾氏頭中将よ」
「あぁ?」
「この国で、最も強い人間。軍人にスカウトしたは良いけど、あまりにも人の話を聞かないので、
わざわざ特別役職を作って、自由裁量で雇っているのよ。
本当に強いから、他国に行って敵になるよりは、面倒な味方である方が利益という判断よ。」
「それで一人で来たのか。」
「質問に答えたから、私からも一つ聞いてもいい?なぜ奥さんを生き返らせたいの?」
「・・・」
足が止まる。
目的の場所まではもう少しだ。
「・・・俺は・・・医者をやっていた。」
「そう・・・つまり」
「救えなかった。その後悔が、いつまでも消えないんだ。いつまでも。毎日。」
「・・・悲しい事ね」
「ああ、耐えられないんだ。」
俺は姫の顔を見ることなく、先に歩き出した。




