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第18話 夕飯

*** 中嶋あみ視点


『キーンコーンカーン・・・』


「それでそれで?」


お昼休み、わたしは愛実に背中をつつかれていた。

お昼ごはんを食べて、まったりとしている時間。

一日のうち、この時間が好き。

まどろんで、ちょっと眠いけど。


「♪~♪♪」


教室のスピーカーからは、クラッシック音楽が流れている。


わたしは、愛実に裕也の家まで行って、カモちゃんに「付き合う」と宣戦布告した事や、カモちゃんに「この家に一緒に暮らしたらどうかな?」と言われ、混乱してしまった事を話した。


「えええ?うっそでしょ?まあ、イギリス人だっけ。外国の人だとそう言う感性なのか…」


カモちゃんはイギリス人で、裕也の従妹との設定。

そう裕也が言っていた。


実際のところどうなのだろう?


設定のイギリス人だとすると、敬虔なクリスチャンだろうから、浮気とかそういうの許さないような気がするなあ。

愛実は全く疑っていないようで助かった。


「そうだよね…。わたしも最初、全然理解できなくてさ」


中東あたりだと、一夫多妻制で複数婚が当たり前だという。

でも、ここは日本だからねえ。

異世界では当たり前なのかな。


「そんで、付き合う事にしたの?」

「それは…まだ決まって無くて」

「んーそうねえ。松永くんの様子を聞いたところ…多分、大丈夫な感じする」


裕也と付き合う。

わたしに、出来るだろうか?

愛実にポンと肩を叩かれる。


「そんな不安げな顔をしなさんな。多分大丈夫だから」


愛実が、ニコッと微笑んで励ましてくれる。

そう言われると大丈夫な気がしてきた。


「分かった。もう一回告白してみる」


わたしはもう一度、裕也に告白する事にした。



*** 松永裕也視点



例によって、俺はあみに校舎裏に呼び出されていた。

これはもしかしなくても、あれ…だよな。


あみはキョロキョロして、終始落ち着かない様子だ。

俺は覚悟を決め、スウっと息を吸い込む。


「お、俺!あみの事好きみたいなんだ。良かったら付き合ってほしい」

「ええっ?」


俺はついに言った!

あみは、目をまん丸くして驚いている。

つぶらな瞳からは、大きな雫が零れ落ちていた。


「え?ちょ、ちょっと…あみ大丈夫か?」


突然泣き出した彼女に、俺は狼狽える。

そうだハンカチは…。

どこかにあったはずだが。

制服のズボンのポケットを探したが、見当たらない。


「ふふ、大丈夫。ありがと。嬉しくてつい泣いちゃっただけだから」

「そう…なのか」


「まさか、告白してくれるなんてね。実はわたしから言おうと思っていたの」


うん。

そうだろうとは思っていたよ。

でも、女子に二度も告白させるなんて、男としてカッコ悪いじゃないか。


「えっと、驚いた?」

「うん」


「あのさ…カモミールが、今日家に来ないかって言ってたよ。夕飯、一緒にどうかなって…」

「そっか。ありがとう。…昨日の、カモちゃん、ある意味衝撃的だったよね」


「うん。俺も驚いたよ…本当言うと、あの時怖くてヒヤヒヤしてた、あみたちが大喧嘩するんじゃないかって…」

「そうだよね…」


俺とあみは、いつの間にか自然と手を繋ぎ、一緒に同じ家に向かった。




「「ただいま」」

「おかえり」


玄関を開けると、カモミールがエプロン姿で出迎える。

うん、今日も可愛い。


家に入ると良い匂いがした。

今日の夕飯は…。


「おお!今日はオムライスか」

「わぁ!カモちゃん凄い!」


ふんわりとした柔らかい卵の生地に、トマトケチャップが掛かっていて…とても美味しそうだ。

俺は、思わずごくりとつばを飲み込む。


「カモミールは、料理を作るたびに上達しているな」


多分、ネットで調べながら料理をしているのだろうけど。

凄いな。

かなり努力したのだろう。


最初は、一つの卵を割るのにも苦労していたのに。

いつの間に、これ程上達したのだろう。

俺は目玉焼きすら、まともに作れないというのに。


「わたし、カモちゃんにお料理教わろうかな…」


あみは料理が苦手らしいからな。

こればかりは、得意不得意があるから仕方あるまい。



「「「いただきます」」」


ダイニングテーブルで食卓を囲む。

オムライスをスプーンですくい、ひとくち口の中へ運んだ。

ふんわりと甘く優しい味が、口の中に染み込む。


「カモちゃん凄い!これ、お店で出せるレベルだよ」

「そうだな」


「うふふ。褒めたって何も出ないよ?」


「いや、ほんと。カモミールと一緒に暮らせてよかった」


「ユウヤ…本当に…そう言ってもらえて嬉しい」


カモミールの目元が、ほんのり赤く頬が緩み瞳が潤んでいた。

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