第19話 グローバルな視野?
*** 安浦直樹(裕也のクラスメート)視点
「お前、彼女が居るんじゃなかったのか?」
学校の昼休み。
教室内で、眼前の男は確か数日前に、彼女が居るって言っていたはずだが。
どうしたわけか、隣のクラスの人気女子と仲良くしている。
前から二人は、仲良かったがまるで恋人同士の様だ。
「安浦くん?えっと、そうなんだけどね?まあ、事情があってさ」
松永は、奥歯に物が挟まったような物言いを言う。
何なんだお前は?
「浮気って言うんじゃねえの?それ。おれが言う事じゃねえかもしれねえけど」
「はははは。そうだよねえ」
松永は困った様子で、頭を掻いている。
「こっちの事情なんだから、ほっといてくれる?」
中嶋さんがおれを睨みつけてきた。
「そういう訳だから、ごめんね。安浦くん」
何故か松永に謝られてしまった。
訳が分からんな。
「安浦くん?だっけ。松永くんの彼女は外国人でグローバルな思考の持ち主なの。だから、そういうの関係ないのよ」
黒髪の美少女が説明をする。
中嶋さんの友達の長坂さんだっけ。
ていうか、松永が女子に庇われているから余計にムカつくんだが。
「モテないからってすねないの。そういうのがカッコ悪いのだよ」
「愛実…言い方」
「「一人に二人なんてどう考えてもおかしいだろ?そうだよな。みんな!」
」
皆に同意をしてほしかったのだが、クラスメートから冷めた目でおれは見つめられた。
「外人かぁー」
「何て言うか、松永くんが羨ましい…」
「日本人じゃないから、浮気しても良いって事?」
「彼女欲しいなあ…」
クラスメートは、各々勝手に盛り上がっている。
まあ、おれには関係のない事なのだがな。
*** 松永裕也視点
安浦くんに指摘された時は、どう言おうか悩んでいたが…全くの杞憂だった。
あみの友達が、一言で理由を説明してくれたからだ。
助かった…。
「こんな事、滅多にないんだからね?あみに「良かったね」と言うべきなのかな…」
長坂さんも複雑な心境のようだ。
日本人なら、みなそう感じるだろう。
実際には、日本にはイスラム系の人も住んでいて、夫はイスラムの人で妻はイスラムの女性とか日本人女性が、複数人同じ家に住んでいるから別に変な事ではないのか。
フードを被った女性が、複数人で自転車を漕ぎ移動するのを駅前でよく見掛けるしな。
「でもやっぱり一人のひとに、愛実だけ愛してもらいたい。ああっ、彼氏欲しい!」
長坂さんがうっとりと呟く。
まあ、普通はそうだろうな。
俺だってまさか、数カ月前まではこんな事になるなんて思いもしなかったのだから。
毎日趣味のマンガや、アニメを見る日々だったし。
この前もコミケに行ってきたばかりだったしな。
そういえば、最近コミック買って無いな。
あれほどマンガの発売を楽しみにしていたのに。
カモミールと暮らしていて、毎日が楽しくて忘れていたらしい。
学校が無ければ、彼女ともっと一緒にいられるのだけど。
「今、カモちゃんの事考えていたでしょ?」
「え?ごめん。分かっちゃったか…」
「別に良いけどね。わたしと居る時は、わたしだけ見てほしいな」
あみの事は好きだが、多分カモミールの方が好きなのだろう。
平等に愛せれば良いのかもしれないけど、そんなの俺には無理だ。
「何て、無理言ってごめんね?裕也はカモちゃんの事、大好きだもんね。ごめんね?」
あみは首を傾げて、笑ってみせる。
好きな人と一緒に暮らせる。
俺って、凄く幸せな奴なのかもしれない。




