第13話 本屋
トントントン。
「ユウヤ、入るよ。晩御飯何が良い?」
カモミールが、ドアをノックして開けた。
俺の部屋には何十冊もマンガがきれいに本棚に並べられている。
フィギィアもキレイに陳列されており、ちょっとした自慢だ。
誰に見せびらかすという訳でも無いんだけどね。
「最初、この部屋に入った時、これ何だろうって思ったんだよね」
異世界では、マンガなんて無いからな。
絵で物語が描かれていて驚いていたっけ。
カモミールもマンガが好きになったらしくて、最近では俺の本棚からマンガを借りて読んでいる。
男性用のマンガしか無くて恐縮なのだが。
少女漫画というのもあるとは教えたのだ。
そういえば最近アニメ〇トに行っていないな。
毎月発売されるマンガをチェックしによく行っていたのに。
「今日は一緒に本を見に行くか?」
マンガだけなら、高崎駅に本屋が入っているから、あそこに行けばいいだろう。
気に入った本があれば購入すれば良いし。
家は駅の近くなので5分足らずで駅の中に入った。
「いらっしゃいませー」
「普通の本屋に来るのは久しぶりだな」
いつもアニメ〇トで買っているから新鮮だ。
あそこは品揃えは良いが、普通の本は置いてないからな。
本屋にはもちろんマンガ以外の雑誌や小説なんかも置いてある。
マンガがほとんどを占めているのは違いないが。
「これ、可愛い」
本じゃなくて、小さいぬいぐるみを手に持ってカモミールがやってきた。
ペンギンの可愛らしいぬいぐるみだ。
これ、あれだな。
電車の会社のトレードマークのキャラだ。
ストラップが付いていて、カバンに付けられるようになっている。
「じゃあ、これ買おうか」
「え?いいの?ありがとう」
料理の本と、ストラップを買って帰ってきた。
異世界の料理とはだいぶ違うらしくて、写真にくぎ付けになっている。
俺は逆に異世界の料理の方が気になるのだが。
「これ、解かりやすくていいね。今度作ってみようかな」
「材料とかあるか?俺の家は最低限の材料しか置いてないからな。何か足りなければ買ってくるが」
「~ん。簡単な料理から作るつもりだから大丈夫じゃないかな」
ペラペラと楽しそうにページをめくる。
「この写真って凄いね。元居た世界であったら便利だっただろうに」
しばらく空想に浸るカモミール。
帰れない故郷を思い出しているのだろうか。
しばらくしてから、少し手の凝った料理がテーブルに並ぶようになった。
頑張らなくていいと伝えたのだが、料理をするのが楽しいと言っているから大丈夫なのだろう。
何か趣味みたいなものがないと、家に居ても退屈でしょうがないだろうからな。
俺が学校に行っている時間は、パソコンでネットサーフィンをしているらしい。
家に居る時は暇だろうから、俺が教えておいた。
だが、ネットも全てが正しいわけじゃない。
変な知識を憶えてしまわないか心配だな。
*** カモミール・ルムフェ視点
ユウヤから、本とペンギンのストラップを買ってもらった。
ストラップは部屋に飾っておこう。
ペンギンと言うのは、主に南極という場所にいる動物らしい。
氷がある寒い場所らしくて…そんなところでも生きている動物が居るなんて感動する。
お料理の本をめくる。
色彩鮮やかな写真。
見ているだけでよだれが…って、はしたないな。
元の世界のシンプルな料理とは違って手が凝っている。
味も想像がつかない。
和食、洋食、中華…どうやら国によって分けられているみたいなのだけど、よく分かってない。
日本は和食らしいから、和食の料理から作ってみよう。
みそ汁…これは飲んだことある。
作り方を見るとかなり手間暇がかかるらしい。
インスタントとは違うものなのだろうか?
「じゃあ、みそ汁から作ってみよう」
私は思い立って、材料を確認する事にした。




