第12話 図書館で
*** カモミール・ルムフェ視点
ユウヤの家に来てから、一か月が経とうとしていた。
聞いたところ、日本にはそもそも魔法そのものがないらしい。
不思議な事に、私は魔法を使えるようなのだけど。
大気中の魔力が薄いのもそのせいか?
私は、ユウヤに頼んで図書館に連れて行ってもらった。
もちろん魔法に関する書物は一切なかった。
架空の話を書いた小説は沢山あったのだが。
異世界に転移する魔法を調べたかったのに…。
そもそも魔法が無い世界じゃ無理に決まっている。
「詰んだ…」
私は、図書館のテーブルで項垂れていた。
ユウヤが頭をぽんと叩く。
「良いもの見つかった?」
「いいや…。ユウヤの言っていた通りだった。魔法が無い世界じゃ調べようがない」
せめて、転移する前に異世界召喚の魔法を調べておくべきだった。
多分、ここから異世界へ召喚しているのだから。
「俺としては…カモミールさえよければ、ずっと家に居てくれて構わないよ」
「え…?流石にそれは申し訳ない」
一か月も、お金を払わずに世話になっているのだ。
本来ならお金を支払うべきなのだろうが、この世界のお金は持ち合わせていない。
「ずっと世話になっていて、お礼も出来ないとは…エルフ失格だ」
「多分、事故に遭ったようなものなのだし、気にしなくて良いと思うけど」
ユウヤは優しい。
多分誰に対してもなのだろう。
時々、あみが羨ましくなる。
幼いころからずっと一緒だったらしいから。
「カモミールは…最初の頃と随分変わったよな。気の強い変なエルフくらいにしか思わなかったのに」
「あの頃は申し訳なかった。気持ちに余裕が無かったんだ」
売り言葉に買い言葉。
まさかこんなに長く世話になるとは…あの頃は微塵も思っていなかった。
「もう元の世界に帰らなくても良いんじゃないか?ほら、俺という恋人もいることだし…」
「うーん。そうなのだけど…今は良いけど、ずっといられる保証はないだろう?」
エルフと人間じゃ寿命が違い過ぎる。
これからの事を考えると、元の世界に戻った方が良いに決まっている。
ユウヤに聞いてみたところ、彼は少しお金に余裕があるとか。
どおりで、私を住まわせるなんてことを言ってくれたわけだ。
普通、余裕のない人はそんな事は出来ない。
このまま彼に甘えてしまえば――と何度思ったことか。
だけど、それは現実的には無理で。
「もうっ!難しく考えるなよ。俺は、カモミールが一緒にいるだけで良いって言ってるんだ。結婚は出来ないかもだけど、君一人だけなら養っていけるよ」
養う?
まるでプロポーズのようだが。
隣のユウヤは顔を真っ赤にして俯いていた。
「「お、俺そんな事言うの初めてだし、カモミールだけなんだからな!」」
カウンターに座っている司書の人にじろっと睨まれる。
「図書館では静かにしてください」と張り紙が張ってあった。
少し騒ぎすぎたかもしれない。
「ありがとう。じゃあ、甘えさせてもらおうかな?」
ユウヤが死んだ後…考えたくもない事だが、その時になって考えればいい。
帰れないのなら、それまでに困らないようにすれば良いだけなのだから。
「ほら、俺たちの家に帰るぞ」
私は、ユウヤに差し出された右手を掴む。
自分の言った言葉で、照れているのか顔をそむけている。
「一緒にいるだけで良い」そう言われて嬉しくなった。




