表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第五章・迷い
64/74

揺れ動く気持ち

 翌朝、私は複雑な気持ちで約束の時間を待った。いろいろと考えを巡らせていると、あっという間に棚の上の時計の針は九時二十分を指していた。昨日のような気まずさを表に出さないように、何も考えず約束の場所へと向かう。


 喫茶店に着くと、すでに小泉先生は座って待っていた。夜勤明けだというのに爽やかな笑顔で手を振ってくる先生に、思わずドキッとする。

「おはよう」

 先生は私服だった。白衣を着ている時の凛とした先生と違い、今はどこにでもいる普通の男性だ。それが柔らかな雰囲気をさらに強調している。

「おはようございます。すいません、疲れてるのに……」

「大丈夫だよ。何飲む? オレンジジュース? あ、喉痛いから駄目か」

「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


 先生とは二時間近くも話した。治療のことや先生の仕事のこと、少しだけプライベートなことも。こうして話している先生はとても楽しい人で、放射線技師としての先生とはまた違う魅力があった。ユーモアもあり、例えるならシュウとヨウちゃんを足して二で割ったような、バランス感覚に長けた印象を受けた。それは先生とシュウをまったくの別人として捉えさせるとともに、私の気持ちを少しずつ揺り動かすことにもなった。


 とても新鮮な気分だった。先生と話せば話すほど、シュウへの気持ちが薄らいでゆく自分がいた。

「不安なこととか相談したいことがあったら、いつでもメールしてきていいよ。まぁ、すぐには返せないと思うけど……ちゃんと返事はするからさ」

〝いつでも〟〝ちゃんと〟──今の私に、その言葉は反則だ。先生にはシュウのことなど話していないのに、まるで気持ちを見透かされたようだった。

「……うん。ありがとう、先生」

 先生と別れたあと、私は思った。

(もっと話したい。先生のこと、もっと知りたい……)


 その晩から、何かきっかけを探しては先生にメールをしていた。確かめたいという気持ちもあった。本当に〝いつでも〟メールして平気なのか。本当に〝ちゃんと〟返事をくれるのか。……先生は本当のことしか言っていなかった。


 ぐらぐらと、激しく揺れ動く心。シュウのことより、小泉先生のことを考える時間が増えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ