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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第三章・発覚
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激痛の正体

 最初の痛みが発生してからおよそ半年経った、三月の上旬。私は勤めていた保険会社を辞めようと考えていた。

 理由は二つ。新しい所長との折り合いが悪くなってきたことと、その時タイミング良く別の保険会社で働く友人から「辞めるなら、うち来ない?」と誘われたこと。私は二つ返事で誘いを受け、この月の下旬に退職する旨を所長に伝え、友人の会社には四月から勤める予定になった。


 その間の十日ほど、定休日以外は毎日キャバクラで働いていた。人間関係のストレスがなくなったからだろうか、今頃あるはずの痛みが不思議とやってこなかった。

(やっぱりストレスだったのかなぁ……? 偶然にしてはタイミング良すぎるし、たぶんそうだったんだ。ストレス、こわっ!)

 私は自分の素人判断を信じた。


 四月に入る二日前、会社に入るための健康診断を受けた。その結果、初めに行った病院と同じく〝肺に影あり〟と診断されて入社を見送られてしまったので、仕方なく次の職が見つかるまではキャバクラで繋ぐことにした。

 また昼夜逆転の生活に戻ったにも関わらず、この月も痛みが現れなかったので、私はすっかり安心しきっていた。


 しかし、五月も半ばを過ぎたある日の明け方……。

「痛い、痛い、痛い……!!」

 眠っていた時、突如激しい痛みに襲われた。動くこともままならず、呼吸するだけでズキズキと痛みが走る。背中、肩、首筋に、いくつものナイフが突き刺さってくる。

 今までにない激痛に耐えかねて、死に物狂いで救急箱まで這っていき、市販の湿布薬を見つけて貼る。冷えている間はわずかに痛みを紛らわせることができたが、それも数分と続かない。あとはただ必死に耐えて、痛みが治まるのを待つしかなかった。


 どのぐらい耐えただろう。このまま死んでしまうのかとも思うほどだったが、なんとか痛みは落ち着いてきた。私は息を切らせてぐったりと横になり、その場から動けずにいた。

(はぁ……はぁ……やっぱり、ヤバいかも……。明日また、病院行ってみよ……)


 翌日──というより数時間後、朝一番で病院へ行ってそのことを話した。すると診察医師は大学病院を紹介してくれたので、病院を出た足でそのまま向かった。

 到着してみるとそこはとても大きな病院で、待合所もかなり混雑していた。受付で紹介状を見せたが、今すぐには診察してもらえないとのことなので、数日後に予約を取って帰った。それまでの間も、夜ごとに激しい痛みを繰り返していた。


 予約当日、病院で受付を済ませた私は待合所のソファに座っている間、何度も時計を見た。

(いつ呼ばれんのよ、予約の意味ないじゃん。……こんなもんなのかなぁ?)

 今まで病気という病気の経験がないので、こんな大きな病院にかかるのは初めてだ。通院している人はいつもこんな苦労をしているのかと思い、どうにかならないものかと考えてみた。だが当然、答えなど出るはずもなかった。


 ようやく診察室に呼ばれた私は、総合病院から渡された今までの診断書やCT写真などを見せ、痛みが生理と重なっていることを強調して話した。

 ひと通りの診察を終えた担当のO先生は、また机に並べられた書類を見つめ始めたかと思うとこちらに向き直り、予想だにしなかった言葉を口にした。

「入院してください」

「──えっ?」

「検査入院しなければいけません」

 私はすぐに反応できずにいた。O先生はさらに続ける。

「子宮内膜症かもしれない」

「心音もおかしい。もしかしたら、心臓のほうもおかしいかもしれない」

「そうだとすると、命に関わる」

 先生が話すごとに、意識が遠のいてゆく感覚に襲われた──。

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