不安だらけ
桜はとうに散り尽くし、生暖かい風が樹々を揺らす五月の末。私は二週間の検査入院のため、朝から病院へ向かった。
先日の診察から数日後、シュウと会っていた私の携帯に病院から連絡が入った。病室の空きができたことの報告だった。
「はい……はい……わかりました。じゃあ、朝一番で行きます。……はい。よろしくお願いします」
電話を切り、となりで話を聞いていたシュウに伝える。
「明日から入院、決まったよ」
「そっかぁ。ちゃんと調べてもらったほうがいいもんな。頑張ってな、見舞い行くよ」
「──うん。ありがとう」
私の症状や病院へ行っていること、入院しなければならないことなど、もちろんシュウには話していた。だが、あまり詳しくは話していない。まだ確実に重症と決まったわけではない今は、無闇に心配をかけたくなかったから。その思いの中には、何事もなく検査が終わってほしいという願望も含まれていた。
(大丈夫。なんでもないよ。きっと、なんでもない……)
そういった願望を持つということは、それに見合った不安があるのと同じことだと思う。いくら自分に言い聞かせても、簡単に拭えるほど小さな不安ではない。それがシュウに伝わらないよう、彼が帰るまでその気持ちを隠さなければならなかった。
保育園へジョウを迎えに行って──ユヅキはこの春で小学生になった──家に戻り、父と子供たちに明日からのことを話す。ここでもシュウに話した時と同じく、子供たちに不安が伝わらないようにする必要があった。
「ちゃーちゃんね、明日から病院行ってしばらく帰ってこないから、おじいちゃんの言うことちゃんと聞いててね」
ジョウはテレビに夢中になっていたので、私はユヅキに向かって言った。
「病院行くの〜? しばらくって、どれくらい?」
「ん〜と、二週間ぐらいかな〜」
「え〜、二週間も〜?」
「うん。だから、ジョウと仲良く待っててね」
「う〜ん……」
「あっという間だよ! 毎日電話するからさ」
「……うん……」
やはり寂しいのだろう。──当然だと思う。以前は生活のために寂しい思いをさせていた。就職したことで少しは一緒にいられるようになっていたのに、こんなことになるなんて……。
(ごめんね、ユヅ……)
私はまた幼い頃を思い出し、当時の自分とユヅキを重ねていた。
病院へ着くと、看護師さんが病室まで案内してくれた。私の入る病室にはすでに名札が付けられていて、ユヅキやジョウを産んだ時のことを思い出させた。
だが今回は、喜びなど微塵もない。数分先のことさえ不安で仕方がない。悪い考えしか頭に浮かばない。自分がこんなにもネガティブだったことを、改めて知った。
大学病院の先生方は、チームを作って私を診てくれた。心強く思う反面、それほど重い病気なのかと心配にもなった。受けた科は、やはり呼吸器内科。
(やっぱり、心臓の病気なのかな……。私、どうなるんだろ……)
しかし、恐れてばかりもいられない。
(まだ検査もしてないんだから。きっとなんでもないよ……大丈夫、大丈夫)
意識して思い直してみるが、以前と同様、それに力がないことは自分でもわかっていた。




