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第23章 終焉

時間かけた割には内容は大したことがないので流し読みしてください。

 そこはがれきで埋まっていた。生物の気配は全くない。

 平らになった街の真ん中、巨大な塔だけが、我が物顔で立っていた。


 ズガッ

 静かな街に音は非常によく響いた。

 がれきが一部飛び上がり、空中で四散、一人青年が、立ち上がった。

 立ち上がった青年は、何かを探し辺りを見渡す。

 しばらくそうしていた青年は、やがて歩き出した。

 青年はあるところで立ち止まった。少し動きを止め、それから、

「はあっ。」

 かけ声と共に、そこらあたりのがれきを吹き飛ばした。

 まるでクレーターのようにえぐられたそこに、不自然に残っていた部分がある。

 そけには老人が横たわっていた。青年は自動拳銃を取り出し、老人に向けた。


「まだ元気そうだな。」

「そんなことはない。今のが正真正銘、最後の力だ。」

「会話できてんじゃないか。元気な証拠だ。」

 青年は苦い顔をする。会話ができているのだから、まだ何か行動を起こすことは十分に考えられる。

「会話をするのに必要なのは微々たる力だ。戦いに必要な力と比べてくれるな。お前が持っている拳銃という名の武器、その引き金を引くだけで私の命はつきるだろう。」

「信用ならねぇ。」

「なら引き金を引けばいい。それで終わりだ。私が死ぬにしても、死なないにしてもな。」

「そのとおりだ。」

「拳銃でとどめが刺せなかったとして、お前自身の拳をたたきつければいい。その方が威力があるだろう。」

「少し黙ってろ。聞きたいことがある。」

「聞きたいことだと。いまさら何を聞くというのだ。」

「俺が聞くんだ。黙ってろ。」

「・・・・・・」

 老人が黙り込んだのを見てから、青年は息を吸い込んで言った。

「なあ。今から戻れないか。」

「何に戻る?」

「普通の生活に、だ。」

「甘い選択だ。」

「そうか?俺にはこれ以上ない、最上の選択だと思うが?」

「それは子供の考えだ。しかもお前は生まれたその瞬間からこう(・・)ではなかったのか?何に戻るというのだ?お前にはそもそも、戻る、という選択肢自体がないだろう。普通、というのは、組織内での生活を示したものではないだろう。」

「・・・・・・」

「フン。やはり子供だな。」

「いや、そんなことは実際どうでもいい。俺は、お前と、他の人間のような、普通の生活がしたいんだ。」

「さっきも言ったが、普通、というのは・・・・・・」

「分かってるだろ?なにが言いたいのか。」

「・・・・・・」

「俺は何も最初から組織の一員だったわけじゃない。俺にだって普通(・・)だった時間がある。それこそ一瞬だがな。それに組織だって、最初からこんな活動ばかりだったわけじゃない。」

「そうか。忘れていた。」

「忘れているわけがないだろう。」

「長く一人でいたからな。」

「じゃあ、思い出してみるのはどうだ?」

「そんなものはいらない。」

「あんたへの最高刑のつもりだったから、べつに断られても構わないが、お前は死刑を望むのか?」

「そうだな。無理矢理思い出すよりも、その方が良い。」

「じゃあ最後に質問する。」

「何だ。」

「力を手にするために生け贄を用意したのは、あんたの意志か?」

「それ以外に誰の意志が介入する。」

「そうか。よかった。」

 青年がトリガーにかけた指を曲げる。

「後で自分を慰めることができそうだ。」

 銃声。そして、それと共にはき出された鉄の弾が、老人の頭を貫いた。

 青年は、老人が動かなくなったことを見てから、また別の場所へ向けて、歩き出した。

「弾切れ。思った以上に、役に立ったな。」


「おい、起きろ。」

 頭の上から声がする。

 起き上がろうとしたが、体が重い。前にもあったような、しかもついこの前。

 と、そこで気づいた。体が瓦礫の下になっている。前にあったようなどころじゃない。ついさっき。黒閃光(ブラック)()大爆発(エクスプロージョン)に初めて巻き込まれてから、まだそんなに時間はたっていないだろう。

 瓦礫がどけられた。彼の顔が目の前に現れる。

「やっぱり生きてた。まあ、さすがにこんなことでは死なないよな。」

 こんなことで死ななかったら、いつ死ぬんだろう。

 まあそんなことはどうでもいい。生きているなら。それが全てだ。

 僕は体を起こした。

「大丈夫そうだな。」

「不思議なことに。」

「訓練の成果だ。」

 ああ、なんかそんなことをやっていたような気がする。なんかどうでもいい訓練。

 ・・・・・・あれ?

「なんで・・・・・・塔が残ったままなの?」

「聞かれても知らないが。」

「壊さなくていいの?」

黒閃光(ブラック)()大爆発(エクスプロージョン)で壊れないようなものを壊す方法は思いつかない。」

「確かに、そうだけど・・・・・・」

「大丈夫だ。使用者がいなくなれば、何も起こらないはずだ。どうもあれはただの道具らしいからな。」

「使用者がいない?グレイは?」

「グレイはもう動けない。それにここらあたりにだれかが潜んでいる気配もない。潜んでいたとしても何も問題はないが。」

「確認はしたの?」

「もちろん。」

「じゃあ・・・・・・」

「この戦い、俺たちの完全勝利だ。」

「勝・・・・・・利?」

「そうだ。勝利だ。」

「やった・・・・・・?やった!勝ったんだ!」

「そうだ!俺たちは勝ったんだ!世界を救った救世主だぜ!」


 老人が、歩いていた。

 ただ、塔に向かって。

 老人を見て、生き物と思うものは誰もいないだろう。

 老人の頭には、遠目にも分かる風穴が開いていた。

 生き物の常識を、完全に打ち破って。


 やがて、老人は塔にたどり着いた。

「私は・・・・・・不死身だ・・・・・・この力がある限り・・・・・・何度でもよみがえる・・・・・・」

 老人の口から音が漏れる。

 そして、老人とは違う方向からまた、声が聞こえた。

―――もう用済みだな―――

 そして・・・・・・


「ええっ!じゃあグレイっていうのは・・・・・・」

「そう。俺の祖父だ。」

 僕達はのんきに話をしていた。と、言っても話す内容は限られているけれど。

 今更ながら身の上話みたいなものをしている。それにしても、この世界は最後まで驚きというものが絶えないらしい。

「有名な研究者である祖父は、その研究の途中で狂った。何十時間もぶっ続けで研究をするのはいい。だが途中で、生け贄まで使うようになった。何度も止めようと思ったが、その度に失敗した。研究所内にいた連中はみんな何かにとりつかれていた。孫である俺だけが、祖父の体を心配する形で、祖父を止めようとした。その結果がこれさ。」

 彼は辺りを見渡した。瓦礫の山が地平線までずっと続いている。そしてその途中に人間は、いや、生き物はいない。

「たくさんのものを犠牲にした上に、最終的には祖父を殺すしか手がなかった。」

「殺す?殺したの?」

「俺が、この手でな。ついさっきのことだ。」

「そう・・・・・・なんだ・・・・・・」

 僕には今後そんな経験をすることはないだろう。そして今の彼の気持ちを理解する日は、一生来ないだろう。



 その瞬間、

 ズガッッッッッァァァァァァァアアアン

 塔がまっぷたつに割れた。


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