制球が乱れています、不安な立ち上がりです
「……ということで、これから皆さんにはこの企画を進めていってもらいたいと思います。これは支店の取り組みになります。私も可能な限りフォローしますので何か出来ることあったら言ってください」
プロジェクトメンバーで決定したスキームを会議でフィードバックする
ある程度予想はしていただったが、まあ非難轟轟である。
前向きにとらえてくれている人が3割、残りはその逆。
面倒だの、意味がないだの結構辛辣な意見も飛んできた。
議論が大分白熱してしまい予定時間を大幅に超過した頃、所長から一言あった。
「お前ら決まっちまったもんはしょうがねえ。どうせ上からのお達しだ、やらねっつう選択肢はねえんだ。なんとか上手くできるように頑張ってくれや。六本木、進捗管理はお前に任せたわ」
事前に内容は相談してたが、この人も半分は諦めムードだった。
文句ばっかりになったらなんとかするという宣言通り今回は助け舟を出してくれて助かった。
「賛否あるかと思いますが損はない企画だとは思います。積極的に取り組みよろしくお願いします」
そう言って場を締めた。
前途多難だ。
◇
「あんなの誰もやるわけないじゃないですか。なんで反対しなかったんですか」
三本松から辛辣な言葉が飛んでくる。
「俺も反対出来るもんだったらしたかったよ。支店長が横で絶賛してる横で反対意見出せるか?」
「それは……無理ですね」
「だろ」
サラリーマンはつらいのだ。忖度忖度。
「六本木さんも大変なもん押し付けられたもんですねえ」
「そう思うならちょっとは協力頼むよ。マジで」
成果が出るかはともかく、進捗が芳しくないのもまずい。
最低限自分のところで1か所はなんとかするとして、他もそれなりに着手してほしいというのが本音だ。
「貸し1ですからね、覚悟しておいてくださいね」
「わかったわかった、なんでもするよ。それくらい困ってるんだよ」
「これはモチベーションあがりますね」
どんなことを要求されるのか若干不安であったが今は藁にでもすがりたい気分だ。
見返りを要求されてでも今は少しやる気を出してくれている後輩に感謝したいと思う。
「あんまり無茶な要求じゃなかったらそれなりに礼はするよ。だから頼むわー」
◇
しばらくしてプロジェクトに対する各営業所の進捗状況などを確認する中間ミーティングが行われた。
どこの報告も似たようなもので、あまり目立って進んだという報告はない。どちらかというと得意先からは消極的な反応が多く、問題点の共有等が議題の中心だ。
そんな中プロジェクトリーダーの円城寺から提案があった。
「なかなか得意先のご理解が得られないようですね。やはりこの企画の趣旨を十分ご理解いただき賛同いただくことが一番の課題のようですね」
ごもっともな意見ではある。それが出来ないから苦労しているわけだが。
そもそも論としてやる側の腹落ち感もあるとは思うが。正直な感想としては完全なやらされ仕事だ、とは口が裂けても言えない状況である。
「いかがでしょう、私としても皆さんのサポートをしたいと考えておりますので、一度現場の方に私自らが提案の場に同席させてただくというのは」
俺としてもそんなに時間を使える状況ではないし、ありがたい意見だとは思った。
とここで円城寺から資料の提示があった。
「支店としてはこちらに挙げている施設群を重要拠点と考えております。私が同席して趣旨を説明したいと思いますので、経営トップ層へのアポイント取得をお願いいたします」
資料を眺めていると自分の営業所の管轄が見つかる。
俺んとこじゃないかよ……こっちが困ってるとこ助けてくれよ、と思った。
ありがたい気持ちから一転、はた迷惑な話になったもんだ。




