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生まれていく兵器と消えていく恐怖と

あの、壮絶な夜を越えて、翌朝にノエルとリリアは首都アウグスタに戻ると言い出した。


「私たちの敵が内部にいる以上、探るしかないだろう。寂しくなったらアイネも、ついでにホンゴーも夜の相手ぐらいは何時でもしてやるから来い」


「ホンゴー。次はもっと耐えられるように訓練していてください。簡単に墜ちてはつまらないですから」


やる気があるのかないのかは分からないが、2人は出発していった。ともに見送ったアイネの表情は……まだ暗い。大丈夫だろうかと本郷は声を掛けた。


「アイネ、大丈夫か……?」

「ヒッ! パ、パンツは勘弁してください!」

「しっかりしろ、少佐じゃなくて俺だよ!」


ハッ気が付いたアイネの目はうるうると今にも涙が流れそうだった。余程のトラウマになったのだろう……。


2人がアウグスタに出発してから数週間、ノエルの命令でレッグスが人を集めてくれていたらしい。トルガに続々と集まってきていた。そして、町も拡大を続け、倍以上の広さになりつつある。


「ホンゴー伍長! お疲れ様です!」

「おー、レッグス伍長。久しぶりだな」


獣人族を引き連れて、トルガにレッグスがやってきた。


「新しい兵器が出来ましたので、届けに来ました!」

「早いな。開発局の人たちは大丈夫なのか……?」

「死んだ顔をしていますが、ノエル少佐の活のおかげで皆元気ですよ」


それは活ではなくて恐喝されているのではないだろうかと思うが、レッグスがとても、とても満面な笑顔をしていたのでそれ以上聞かないことにした。


「これが、図面を基に設計した大砲です」

「おー、ちゃんとできてるな」

「まだ15門程度しか出来ていませんが、今回はその中の1つを持ってきました!」

「さっそく、試射してみようか」


ベアーズ、マウシーの部隊に荷台から大砲を降ろさせる。大砲には車輪を付けてあるので、降ろしてしまえば押したり引いたりできる様に作ってある。

それを森の訓練場まで持っていき、設置してもらう。


「やだ、なにこれ。おっきい♪」

「これもタイチの世界の技術か? やけにデカいものを作ったんだな」


気が付くと、コブスとジェリドも見学に来ていた。


「大砲って言うんだけど、この世界は銃はあるのにこれがないなと思って。射程距離も魔法より断然長いし、威力も銃弾とは比べ物にならない。味方の被害もかなり減らせると思うんだ。まぁ正確に再現できなかったから多少のアレンジはしてあるけど」


そうはいったものの大砲の扱い方が分からなかった。銃や剣とはカテゴリーが違うようである。


『【砲術】を習得しますか ※確率10%』

『あんなに怖がっていたのに、10%で死ぬのが何とも感じなくなってきたな……』

『【砲術】を習得しました』


何のためらいもなくスキルを習得する。0%以下で死を恐れていたとは思えないほどの冷静さだった。

そう思いスキルを取ると、本郷はまるで弾薬を巨大化したような砲弾を持ち、大砲の後ろからセットした。そして、装填部分を閉めると、大砲から伸びていたトリガーを手に持った。


「かなり大きい音がするはずだから耳を塞いでおけよー」


その場にいた全員が各々耳を塞いだのを確認して、トリガーを引いた。


『ボーン!』

『……バーン!』


発射と同時に銃や手榴弾と比べ物にならないぐらいの大きな音が響く、そして、遠くで大きな爆発と土煙が

上がるのが見えた。


「「おぉ……」」


それを見ていた兵士達から声が漏れる。音もさることながら、この距離でもしっかりと確認できるほどの爆発の威力だ。驚かないわけがない、一番驚いていたのは本郷だった。


『大砲ってこんな感じなのか……。映画だともっとポンポン撃ってるイメージだったけど……』


手に残るジンジンとした感触を確かめながら、初めての大砲を見ていた。それからは数人に分かれて、観測、装填、砲手などを割り当て、試射を繰り返した。


「コブス、これならいけそうかな?」

「あぁ、かなりこちらの損耗を減らせるだろうな。今更ながら、タイチがガムルスで良かったと思う」

「その件、なんだけどさ……」


コブスと、近くにいたジェリドに昨晩のノエルの推測を離す。ラカスラトだけでなく、恐らくガムルスにも召喚者がいる。そしてそれが貴族派の中にいる可能性が高いということだ。


「貴族派か……。昔から陰湿な奴らばかりだから当たり前に思っていたがそうか……」

「嫌なイメージしかない連中よね。でも今は少佐を待つしかないんじゃないかしら?」

「まぁ、そうだよな。今のところすぐに俺から紋章を奪おうとしてるみたいじゃなさそうだし」


2人も貴族派は気に入らないらしい。一番の原因はアデン砦の事件、サイス絡みだろう。愚痴をこぼしていると、街の方からミケットが走ってくるのが見えた。


「タイチさん大変ッスよ! 軍から出撃命令ッス!」


その場にいた全員が騒めき出す。戻ってから一週間ちょっとだというのにもう出ろというのか。ミケットが持って来ていた書類にコブスが目を通していく。


「ニューヤード平原にて敵の撃滅か……」

「ニューヤードって、バンデン砦を越えたところにあるんだっけ? 確かガムルスとラカスラトのちょうど真ん中ぐらいの広い場所だろ?」

「そうだ。敵の大規模な基地がある。そこに私たちだけで出ろとのことだ」

「俺たちだけ!?」


ガムルスは取り返したバンデン砦を越え、ニューヤード平原入り口まで進軍を行っていた。しかし、大規模な基地が存在するニューヤード平原の守備は固く、足止めされている状態だった。


「厳しいけど、行くしかないわよねこれ……」

「私たちは一応軍人扱いだからな……。あれから多少人が増えたとはいえ、戦力はざっと400人。この基地の規模からすると数千はいるだろうな」


2人の顔は厳しいものだった。確かに、圧倒的な戦力差である。


「レッグス伍長、悪いんだけどすぐに首都に戻って、全部の大砲と、砲弾をニューヤードに持って来てほしい。それと、この砲弾以外にも頼んでたやつも持ってこれるか?」

「何とかしてみせますよ! これぐらい少佐のご指導に比べれば楽勝です! では!」


そういうとトルガに戻るため、何時もの様に全力ダッシュで走っていった。


「まだ何か隠してあるのか?」

「バリエーションは合ったほうがいいだろうなと思ってさ。我ながら非人道的だとは思うけどね……」


コブスの問いに関して、口元だけ笑っていた本郷であった。

レッグスに頼んでいたものがそろうなら。勝てるはず。自分の気持ちとは関係なく、死と戦いに慣れていく本郷だった。そして大きな声で叫ぶ。


「よし! モルモット隊、出撃だ!」

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