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3人目の召喚者

 ノエルとリリアに自分がこの世界に来た経緯を伝える。コブスやジェリド、アイネに伝えた時はそれなりに驚かれていたが、この2人は全く動じない。これも軍人だからなのだろうか?


「リリア、今の話どう思う?」

「私のせいで頭がおかしくなったのかと心配しましたが、違うようですね」


 確かに頭がおかしくなりそうなぐらいの締め技と豊満なありがたみは体験したが、こればかりは嘘ではない。


「いい加減、縄を解いてもらえないですかね……! それと少佐、いい加減服を着てください。目のやり場に困ります……」

「なんだ? こっちのほうが喜ぶと思ったんだが。特別にお前の相手をしてやってもいいぞ? お前は私のお気に入りだからな……!」


 ノエルの鋭い眼差しに背筋がゾクッとした。助けを求める様にアイネの方を向いたが、目が合った瞬間に逸らされる。怯える子犬とはこのような状態なのだろう。本当に何をされたのだろうか。

 気が付くと、ノエルが目の前まで来ている。


『やはりデカい……。しかも黒い下着がエロい……! いや今はそれ何処じゃないって!』


 本郷は目の前の光景と自分の中の煩悩と戦い続け、勝利した。バンデン砦で敵と戦う以上にある意味苦労したのではないだろうかと思う。


「はぁぁ……。それで、俺が戦う理由について理解してもらえました?」


 ノエルは机に置いてあったバスローブのようなものに身を包む。


「それで、ラカスラトの召喚士がダルシオ・コンスコンだということ、お前がここまで必死に軍隊を作ろうとしていた理由も分かった」

「やっと信じてもらえましたか……」

「だがな、お前のやったことは間違っていたかもしれんぞ……」

「え?」


 先程まで不敵な笑みを浮かべていたノエルの表情が戦う人間の顔になっていた。何かとても嫌なような、ひどく何かを否定したいような顔だ。本郷もできれば聞きたくはない。そう思ったが、恐らくこれは召喚者の話と関係がある。そんな予感がしていた。


「間違っていたというのはどういうことですか……」

「今回の作戦、間違いなく軍上層部に話が行く。お前の存在や戦術が報告されるだろう。そしてさっき言った機密室の件だがな。つい最近追加された文書だった。それもお前がレッグスに提案するよりも前だ」

「それはどういう……」

「お前と、同じことを知っている人間がガムルスの中にいるということだ。そして、開発を行わずに機密室に置いたということは、少なくともガムルスが負けることも計算しての行動ではないかと私は思っている」


 それは事実上、ガムルスにも召喚者が存在しているということになる。そんなことがあり得るのだろうか。


「仮説にすぎないが、ホンゴーが一番最初に傭兵と戦った際に、召喚者が関わっている場合は逃げられないといったな? しかし、その時にラカスラトとは関係がなかったはずだ。結果としてラカスラトに召喚者がいることになったが、『ガムルスに召喚者がいる』という解釈も出来るのだろう?」

「確かに、そう考えればそうとも言えますが……」


 ノエルの言うことも間違ってはいない。あくまで召喚者が関わっていなければ本郷の自決システムは発動しない。ラカスラトが急に強くなったということに気をとられ、そちらにだけ、召喚者がいると思い込んでいた。本当にガムルスに召喚者がいるのか?


「そして、お前たちを最初に襲撃した男たち、今回の作戦でお前達を出撃させようとした軍上層部、自ずと関係性が増してくる。そして、ガムルスが負けたとしても容易に国外に逃げ出すことのできる連中がいる」

「貴族派……ですか?」

「そうだ。もし貴族派に召喚者がいるのであれば不可解なことにも一応の説明がつく」


 ノエルが説明をすればするほどに、納得がいく部分が多かった。


「ミサイル、イージス、空母、戦闘機……この言葉をホンゴーは知っているな?」

「俺のいた世界で、兵器についている名前です」

「私が呼んだ機密文書に書いてあった言葉だ。何かの暗号化と思っていたが……」


 ノエルが深く考え込んでいるようだった。そしておそらく本郷と考えていることは同じ。今のノエルの言葉で疑心が確信に変わる。そんな言葉はまだこの世界に存在していないはずだ。知っている人間がいるはずがない。


「ホンゴー。敵が増えてしまったな」

「ラカスラトで精一杯なのに本当に勘弁してほしいものです……」

「それだけ言えるなら大丈夫だろう。私とリリアはしばらくアウグスタに戻る。少なくとも貴族派の中にいる連中を探る必要があるだろうからな」


 ノエルとリリアが動いてくれるのはありがたい。軍内部でもかなりの発言力があることは知っているし、信頼もこの上ない。


「でも、どうして俺に協力してくれるんですか?」

「そいつがガムルスの敵だからさ。少なくともそいつはこの国が消えてもいいと思っている。そんな奴を放置できないだろう? それに、私は楽しい方の味方だ」

「私は、少佐が行くなら着いていくだけです。それに、今度新しい締め技もホンゴーで試さなくてはなりません。ここまで頑丈な人は貴重ですから」


 どこまでも自分勝手な人たちだなと本郷は思う。そして同時にこんなにも頼れる味方が出来たことをありがたいと感じていた。

 ラカスラトの『ダルシオ・コンスコン』、そしてガムルスの貴族派に紛れているもう1人の召喚者。少しずつ本郷の倒すべき敵が分かり始めていた。

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