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仮想の現実は無法地帯  作者: 雪斎拓馬
仮想の現実は無法地帯 上
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 ゴーストと便利屋が戦争した日、山岳地帯アフガンゲートにて。

 一台のトラックが山岳を降りていく光景をヨル達は見ていた。彼らはトラックを見てゴーストが活動していることを再認識したが、これは死角だ。

 トラックの車内にて、白髪の男――聖護院悠聖はヨル達の姿を観察していた。不気味に笑いながら、足を組んで、ヨル達がこちらを見てから目を離すまでを。傍観主義の悠聖はこうして事件の死角に潜り込んでいる。

「運転手さん」

 悠聖は隣にいるゴーストの兵に話しかける。

「よかったね、今日君はあの三人に殺されずに済んだ。この後ゴーストは三人に攻め落とされる。君がその場にいれば、間違いなく殺されていただろう。いや、過去形になって申し訳ないね。殺されるだろう、君がゴーストの基地に残れば」

 数分前。

 熱海正一とフィーアへ悠聖は三人の動きを伝えていた。

「これから便利屋のヨル、リナ、霊猫が……詳しく言えばスーシェも含めた四人がここを襲撃する。目的は復讐、つまりは意趣返しだそうだ」

「生意気に。迎撃してみせよう」

 正一は舌打ちを一回、悠聖へそう言った。フィーアは黙ったまま話を聞く。

「健闘を祈るよ」

 と心にも思ってなさそうな言葉を残して、悠聖は部屋を出ていく。()()()()()()()|が《、

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 その後悠聖は兵を一人捕まえて、運転してくれと頼み、ここへ至る。

 隣に座る運転手は恐怖に怯えていた。人間は皆、死が怖いのだ。しかし彼らは問答無用で人を殺す組織。橘命名、ゴーストだ。

「ああ、ここでいいよ。ご苦労さん」

 悠聖はそう告げると、荒野の中小さな小屋の前でトラックを降りた。それから小屋の中にあった椅子を引っ張り出し、荒野と山岳を一望できる場所の中読書を始めた。本の名前は『オペラ座の怪人』。

 暫く読書に専念していた彼は、突然読書を止め、すぐに仮面をつけてから、見えない笑顔を浮かべ、誰かを待った。

「ふふ、くははは」

 笑いに耐えられなくなった悠聖はとうとう声に出して笑ってしまった。仮面をつけている為、声がくぐもる。

「予想はしていたけれど、正直予想以上だ。まさか拳銃も狙撃銃もなしに、ナイフ一つで僕の元へ来るなんてね。僕は嫌いじゃないよ」

 彼の前にはリナが立っている。

「少し気になっていたんだ。熱海正一がゴーストのリーダーに間違いはないが、それにしては頭が冴え過ぎている。そもそも、第五位は人の個人情報など知りえない。他に事件を指揮している奴がいるはずってね」

 リナは無表情のまま、正体もわからぬ仮面の男に言う。

「それではこうしようか。僕もナイフとこの体だけで戦おう。その上で僕に見事勝利できたのなら、君が気になっている質問の答えと、この世界の真相を教えよう」

 悠聖の提案にリナは乗っかり、一戦交えることになった。

 結局、リナは悠聖に敗北し、彼の優しさにて生きたままゴーストの基地へ向かうことができた。いつでも殺すことができたはずだが、何故自分を殺さなかった、という疑問が新たに浮かび、彼女を更に悩ませた。


 その後ヨルがフィーアを殴り、正一が逃げる。

 正一は戦場の隣にある部屋に逃亡したが、思いがけぬ人間が待ち構えていた。

「悠聖さん……!」

 驚愕と恐怖に正一は目を丸くする。悠聖は若い顔に満面の笑みを浮かべている。不気味で仕方がない。ご機嫌ようと言うかのように悠聖は彼へ言う。

「正一君、僕は君にユダの話をしたね。憶えているかな?」

 頷くことすらできない。悠聖の笑みがあまりにも恐ろしいのだ。

「譲君の時僕は彼を捨てた。決して裏切ってはない。使い物にならない、それに修復もできない時計なんて捨ててしまうだろう? それと同じで僕は彼を捨てた」

 決して彼を裏切ったり、咎めたりはしていない。彼を褒め、その上で殺したのだ、と続けるが、正一はその一語一句を完璧に耳へ入れることが困難な状況におかれていた。怖い、恐い、それだけ。この目の前に立つ白い髪の男が恐ろしい。

「譲君は立派な成果を上げた。けれど君はどうだね?」

 恐れ戦き正一は一歩後退する。

「君は僕が指示した任務を全うすることなく、その上で私を裏切ろうとしている。僕のことを嫌う人間に対して、僕がそいつを嫌ったところで何の文句もないだろう? というのが僕のセオリーでね。どうだい、あの戦場に戻って僕の指示した任務を成し遂げてみるかな? 裏切りの対価は高い、それだけは知っておいてくれ」

 悠聖は笑顔のまま問う。その満面の笑みを絶やすことはなかった。対して正一は実戦経験を持ちながら死という恐怖を覚え、戦場への再登場を拒んでいた。

「そうか、残念だ」

 言って悠聖はどこからか拳銃を握り、正一へ銃口を向けた。正一の震えが増す。

 乾いた銃声がコンクリートの部屋に反響した。銃弾が正一の額を貫く。彼は即死、壁に崩れ、死体が寄り掛かった。

 悠聖は別れも言わずにその部屋を去った。

 すぐ後、ヨルが部屋へ入るが、額を貫かれた正一の屍だけを見て戦場へ戻った。


 時は繋がっている。それに伴い事件も繋がっている。

 街は死角だらけだ。彼らの知らないところで、彼らの知らない人間が手を引いて、彼らの知る事件が繋がっている。

 そう、例えば()()()()()()()()()()()()()が、彼らの知る事件を手引きしている。


    *


 九月二十五日。月曜日、朝零時。

 聖護院悠聖は一人、オリジンゲートの風車の上に座って笑う。この世界で初めての街はヨーロッパのオランダを連想させる。綺麗な街並みに、広大な草原。トワイライトゲートとは大違いである。

「今日、この時、世界は大きく変わる」

 白髪は風に揺れ、太陽の光を綺麗に反射している。


『意識の回復命令文を削除。時間概念を現実世界とリンクし制御。睡眠制御文、及び時間による温度、空間的な証明制御文を加筆。前記の反復を定義。死亡を判断する制御文を、現実世界の物理的判断に基づき定義。死亡と判断されたアカウントは削除、及び現実世界のユーザーへ物理的削除を命令。異常を持ってプログラミングを再構築』


 無慈悲な声で淡々と続いた言葉は終わり、彼を囲っていた無数の羅列した文字の魔法陣は消えた。その魔法陣の大きさと言えば、ユイネやヨルの比ではない。

「こんなものかな。さて、いつも通り傍観に徹するとしようか」


 初めは誰も気が付かなかった。そもそもこの世界に時間と言う概念が存在しないからだ。誰も時計など欲しがらなかったのだ。

 しかし、あまりにも長過ぎた。通常ならばこの頃には既に鐘の音が鳴り、意識が暗転しているはずだが、今日はそれがない。鐘が鳴る気配などない。不安がった、あるいは首を傾げたユーザーはデータを見る。

 そこには午前六時半を示す表記があった。時計だ。それだけなら朗報だが、明らかにおかしな問題があった。

 この世界は朝五時になると自動的にログアウトするように設定してあるはずだ。しかし、現在時刻は六時半。一時間半も遅れている。その上、当然のことながらログアウトを自発的に行うボタンも存在しない。何がどうなっているのかわからない。

 やがて一つの考えに辿り着く。

 ライトノベルのように、あるいはホラー小説のように、まさかこの世界に()()()()()()()のではないだろうか。最悪の可能性を考えてしまう生き物こそが人間だ。その疑心暗鬼は彼ら自身を蝕み、徐々に縛り上げていく。

 ヨル達便利屋もこの事態に気が付いていた。

 運が悪いことに今日はスーシェを含めた便利屋全員が、ログインしている。


「さあ、本番はこれからだ。悲劇なき物語など、所詮は娯楽だ」

 悠聖は冷酷に、世界へそう宣戦布告した。








あとがき


これにて『仮想の現実は無法地帯』の上は終わりです。

一つの区切りとしてあとがきを書かせて頂きます。

どうでしたでしょうか。恐らく「読みにくい」という感想が出ると考えられますが、それに対する答えとしては以下の通りです。

この小説は元々自分で印刷し、製本してみるとどうなるのか、というテストにて作られた作品なので、面白さを全く追及していません。ですので、当然ながら縦書きで執筆をしています。それをそのまま投稿しているので読みにくいわけです。

語彙力及び文章力に関して読みづらいとの感想があれば、申し訳ありません、それは私が下手な所為です。


さて、内容は理解できましたでしょうか。作者は無論頭の中に物語が入っているわけですが、自分にしかわからない表現や、話の大幅な飛躍が含まれている為、読者様にとっては非常にわかりにくい作品だったと思います、申し訳ありません。

上は要するに「恋人を失った駄目高校生が改心する」という話です。

ライトノベルのようなかっこいい表現はまず入れないので、キャラ自体に全く感情は入らなかったことでしょう。


下は個人的に面白くさせるつもりです。

「狂った仮想世界に起こる戦争」が下のテーマだと思います。

ヨルやユイネや悠聖が使える魔法陣、聖護院悠聖の正体、リナの『イレギュラー』、作中に度々登場する「私」の正体を下で明らかにしていきます。

色々な伏線を張りっぱなしの上ですが、下で全て回収しますのでご安心を。


ここまでお読み下さいましてありがとうございました。

よければ引き続き『仮想の現実は無法地帯 下』をよろしくお願いします!

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