39、物語の続き②
河川敷を走り続けた俺とちさは土手に座り込んだ。
「はぁはぁ…いやー疲れた。
それにしても長老がちさちゃんのおじいちゃんだったなんて…」
「あはは。びっくりした?」
「うん。長老とはいっつもスタジアムで一緒だったからね。まさかそんな人が…」
「私がサッカーをやりたいと言って一番喜んでくれたのはおじいちゃんなの。
浅草エンジェルスに入れるような選手になれ!が口癖で・・・」
「そうだったんだ。優勝という最高のおじいちゃん孝行ができたじゃん!」
「うん。私がエンジェルスのセレクションに合格したときも
高校生のときに全国大会で優勝したときも
そして、今日のリーグ優勝もおじいちゃんが一番喜んでた!」
「長老、泣いて喜んでたよ。」
「ははは。すぐ泣くんだよ…」
「はは。俺も昨年から長老の涙を何度見たことか・・・」
「まあ、ありがたいよ。
私の両親は仕事が忙しいから、いつも試合のときはおじいちゃんが送り迎えをしてくれて弁当まで作ってくれてたんだ。」
「長老からしたら目に入れても痛くない孫娘なんだろうね…」
「そういえば、一つ聞きたいことがあったの。」
「聞きたいこと?」
「なんで、うちのチームの試合を観に来るようになったの?」
「あー、それか。
ちさちゃんが昨年の開幕戦でゴールを決めたじゃん!」
「うん。決めた!」
「あのゴールをたまたまスポーツニュースで見てさ、
本当に感動して…
生で試合を観戦したいって思ったんだ。」
「えっ!?あのゴール?あんなブサイクなゴールに感動したの?」
「ブサイク?いや、ちさちゃんがゴールに飛び込んでカッコよかったよ!」
「あれが?変なの・・・」
「なんかさ、体のどこでもいいから当たってくれって感じで飛び込んで…
女の子がここまで体を張るのかって思って感動したんだ。」
「あー、あれは・・・
いいパスが入って来たからカッコよく決めようと思ってんだけど…
相手のDFに押されてズッコケちゃって…
気づいたらチームメイトは喜んでるし…
ゴールを見たら入ってるし・・・」
「えっ!?そうだったの?ズッコケただけだったのか!」
「あははははは。」
「ははははは。」
秋風が吹く少し肌寒い河川敷の土手で二人は大笑いをした。
いつまでもこんな時が続けばな!と心の底からそう思った。
感動なんて忘れていた俺の心を蘇らせてくれたゴールは
ちさがズッコケただけのゴールだったとは。
そんなことはどうでもよかった!
選手のひたむきさ
一生懸命さ
あきらめない姿勢
これらが全て揃ってのゴールなんだと思う。
「ちさちゃんのお陰で俺はこんな素晴らしいスポーツと出会うことができたよ。優勝まで見させてもらってありがとう!」
「いやいや、私の方こそ応援してもらって…
なんか少しだけ青春できたかな。」
「青春か・・・」
「サッカーばかりだったから…
周りの友達みたいな青春に憧れてたんだ。」
「サッカーが青春って素晴らしいじゃん。」
「いや…サッカーしかやってないってどうだろう。」
「俺なんか、学校を途中でヤメちゃって家出して…
それから自分が生きることで精一杯だったよ。はは。」
「一人で生活してきたの?」
「うん…ろくな青春を送ってないよ。」
「よかったら、一緒に青春しませんか?」
「一緒に青春か。」
武藤ちさ。
サッカー一筋の天使が
俺の心に住み着いた悪魔を取り払ってくれたようだ!




