36、気持ち
ついに東京エリーザを捕まえた浅草エンジェルス!
俺は週末の試合が楽しみで楽しみで待ちきれなかった。
水曜日に休みをもらったけれども以前のように常連客とデートをするなんてことは、これっぽっちも考えなかった。
そんなことよりも最終戦のことばかり考え
居ても立ってもいられなくなり試合会場であるエリーザのホーム江戸川区スタジアムに足が向いていた…
何かあるわけでもないのにスタジアム付近をブラブラし試合のことを考えていた。
ただ、それだけで気持ちが落ちついた。
帰りに江戸川の河川敷を歩いていると遠くの方にトレーニングウェア姿で女性が走っているのが見えた。
(あれ?ひょっとして…)
走っていたのは武藤ちさだった!
ちさのプレーを何度も見ている俺は
走り方だけで本人と確認出来てしまうレベルにまで達していた。
(やっぱり!)
ちさが近づいてきた。
「武藤さん!」
俺が声をかけると、ちさはニコっと微笑みながら立ち止まってくれた。
「こんにちはー!」
「すみません。トレーニング中に…」
「いいですよ!そろそろ休憩しようと思ってたし。
それよりも、こんなとこで何してるんですか?あはは。」
「不審ですよね?はは。
いや、最終戦が待ち遠しくて…つい、スタジアムまで来ちゃいました。」
「え?そんなに楽しみなんですか?」
「はい。いつも武藤さんのプレーを楽しみにしてるんですよ!」
「いつも応援してくれてありがとうございます!
そういえば、昨年も今くらいの時期に会いましたよね?」
「そうっすね!浅草でチラシ配ってましたね。」
「そうそう!でも、昨年は一緒に優勝しましょうなんて偉そうなことを言って…優勝出来なくて申し訳ないです。」
「武藤さん、まだ物語は続いてるんですよ!」
「物語?」
「俺の中で昨年から勝手に始まった物語ですけどね…」
「その物語、私が最高のエンディングを見せてやりますよ!」
「えっ?」
「あはは。そ…そういえば、綾香とはどうやって知り合いになったんですか?」
「あ~、あいつ…店に乗り込んで来たんですよ!」
「乗り込んだ?」
「まあ、乗り込んだは少し大げさですけど。
武藤さんのことが心配だったみたいで…」
「私のこと?」
「ええ、最初はおとなしかったんですけど酒が入ると
ちさはホストクラブの常連なのか?お前は食い物にしようとしてるんだれ?とか散々罵倒されましたよ。」
「え?え?綾香が?」
「だから、俺が武藤さんを勝手に応援してるだけだ!
って言い聞かせて大変でしたよ…ははは。」
「なんで綾香はそんなことを…」
「なんか、エリーザでもいろいろあったみたいで…
子供の頃に武藤さんとサッカーしてたときが本当に楽しかった!
と言ってましたよ。」
「あや…」
「一緒に優勝しましょうよ!八神もおまけで!!」
「了解です!」
「あっ、すみません。トレーニング中に長々と話しちゃって…」
「いいえ。楽しかったですよ!」
「それじゃ、最高のエンディング楽しみにしてますよ!」
「プレッシャーかけないでくださいよー!」
「ですね…ははは。」
「では、日曜日。一生懸命パワーを送ってくださいね!」
「了解!それじゃ頑張って!!」
「はーい。」
武藤ちさは最高の笑顔を見せてくれた。
まさか、ちさに会えるとは…
最高の休日となった!
よし、こうなったら悪魔の俺が神でも仏でもなって最強のパワーを送ってやる!




