第3章 第四十四話:名古屋コーチンは再会の印
第三章の最終話です。
三人の乗った電車が東京駅のホームに到着した。
三人はホームに降り立つと、さとしはスマホの時間を確認した。
「11時45分ですね。まだ時間に余裕がありますけど、お昼は改札を出て食べますか?」
「もし出ないでも食べられる場所があるならその方が落ち着くかしら……」
美鈴のその言葉に苦笑するさとし。
「新幹線乗る前ってあまり落ち着かないですもんね」
「ええ、どこかいい場所はあるかしら?」
さとしは少し考えると一つ提案をした。
「それなら次回の愛知県での御朱印集めにかけて、愛知県の食材を使ったご飯を食べに行きませんか?」
「それおもしろそう!」
美波がさとしの提案に飛びついた。
「美波も賛成しているみたいですし、せっかくだからそうしましょうか」
二人の賛成を得られたさとしは、二人を『グランスタ東京B1Fにある名古屋コーチン専門店』へと案内するのであった。
ーーー
お店の前までやってきた三人。
「この店ですよ。早速入りましょうか」
三人はさとしを先頭にお店に入っていった。
店員に席まで案内された三人はさっそくメニューを確認した。
「やっぱりメインは名古屋コーチンを使った親子丼でどうでしょう?」
さとしが二人に提案すると、二人も同意した。
「それと、あとは名古屋と言えばこの『手羽唐』も食べておかないとですね」
「手羽先美味しそうです!」
「本当ね。でもビールが欲しくなってしまいそうだわ」
「確かにこれはビールに合いそうですよね」
そう言って笑うさとしであった。
注文を済ませて待つこと10分、料理が届けられた。
親子丼の蓋を開けた瞬間に現れたのは、ご飯を覆い尽くす、ふんわりと波打つ卵の海であった。
そして、お出汁の湯気とともに、ツヤツヤと輝く鶏肉が美味そうな見た目を際立たせていた。
「早速食べてみましょうか」
「「「いただきます」」」
三人とも木製のレンゲですくうと口へと運んでいった。
三人の顔が驚きと幸せを合わせたような表情になる。
「美味しい!とろとろの卵に『プリン』とした歯ごたえの名古屋コーチンがめちゃくちゃよく合います!」
「ほんとうね。家でもこんな美味しい親子丼が作れたらいいのにね。はぁ、口の中が幸せだわ」
「お二人の口に合ったみたいでよかったです。今度愛知県に行ったときにもいろんなものを食べましょうね」
親子丼を食べていると『手羽唐』が届けられた。
「この手羽先の唐揚げも食べてみてください」
二人が一つずつ手に取り口へと運んだ。
一口噛むと口の中に特製甘辛だれの味が口内に広がっていった。
「やだ、これは本当にビール案件だわ!」
「私この甘辛いタレの味大好きです!」
さとしは二人の幸せそうな顔を見て、連れて来て本当に良かったと心からそう思うのであった。
ここでさとしはふと思い出し笑いをしてしまう。
訝しそうに見る二人。
「さとしさん、急に笑い出してどうしたんですか?」
「ごめんごめん。実は10年ほど前に亡くなった祖父の口癖を思い出してね。じいちゃんもこんな気持ちでその口癖を言っていたのかなって思ったらおかしくなっちゃって……」
「それはどんな口癖だったんですか?」
美波が尋ねた。
「母方の祖父なんだけど、よくみんなで食事をしているとビール片手に『僕はみんながこうして幸せそうに食べている姿を見るのが好きなんだ』って言っていたのを思い出したんだよ。そしたら俺も二人が幸せそうに食べている姿を見るのが好きなんだって気が付いて、じいちゃんもこんな気持ちで見てたのかなって……」
その言葉に心が温まるのと同時に、胸の高鳴りを感じる二人であった。
「本当にさとしさんは無自覚に心を捕まえてしまうんですから……。堕とした責任は取ってもらいますからね!」
美鈴が言うと、それに美波も続いた。
「本当にさとしさんは悪い人です!そんなこと言われたら離れたくなくなっちゃうじゃないですか……。これは責任取ってもらうしかありません!」
これにさとしが驚いた顔をする。
「俺またなんかやっちゃいましたか?俺でできる責任なら何でもするのでどうかお許しを!」
これを聞いた二人は満面の笑顔になる。
「お母さん今の聞いたよね!これで私たちのどっちかが……で残った方が……ね!」
「そうね。二人でさとしさんをガッチリ捕まえて離さないようにしなとね!」
「よく聞こえなかったんだけど、美波は今、二人が俺の何と何になるって言ったの?」
さとしだ尋ねると美波が真っ赤な顔で答えた。
「そんな恥ずかしいこと聞かないでくださいよ!そんなことを聞いちゃう悪いさとしさんには内緒です!」
「そんな理不尽なぁ……」
情けない声でつぶやくさとしであった。
ーーー
お昼を食べ終わった三人は東海道新幹線の乗り換え改札口へとやって来ていた。
「次美波に会うのは2月の試験の時だね。あと、美鈴さんは美波が卒業してからになるかな」
「そうですね。その時はよろしくお願いします、師匠!」
そう言って美波はお辞儀をした。
美鈴もさとしに美波のことをお願いした。
「すいませんけどその時には娘のことを宜しくお願いしますね」
「はい。お任せください」
ここで美鈴が美波に声をかけた。
「そろそろ改札内に入りましょうか」
「わかった、お母さん」
そう言った後で美波は再度さとしの方を向いた。
「さとしさんちょっと耳を貸してもらえますか?」
さとしは耳を美波の口元に耳を近づけるため、膝を軽く曲げて身長差を埋めた。
ここで美波は、さとしの首に両手を回すと抱きしめるよに自分へと引き寄せ、その唇を奪ったのだった。
突然の出来事に目を見開いて驚くさとしと美鈴。
美波は唇を合わせたまま、10秒ほどさとしの顔を離さないでいた。
ゆっくりと唇を離した美波は顔を赤くしたまま、小悪魔フェイスでさとしに告げた。
「今のが正真正銘のファーストキスですから……。ちゃんと責任取ってくださいね」
そう言うと美波は真っ赤な顔のまま微笑んだのであった。
未だに動揺しているさとしの顔が不意に両手で挟まれて左側を向かされた。
すると今度は美鈴が唇を重ねてきたのだった。
これもきっちり10秒間の間唇が離れることはなかった。
「美波には負けてられませんからね」
そう言うと美鈴はさとしにウィンクをしたのだった。
「二人ともどうしてキスなんか……」
「「それが私たち二人の気持ちですから!ちゃんと責任取ってくださいね!」」
それだけ言うと二人は改札をくぐって行った。
呆然とするさとしに美波と美鈴は手を振りながら進んで行くのだった。
こうして埼玉での三人の旅は終わりを迎えたのだった。
美波と美鈴がさとしへの大きな置き土産を残して……。
第三章の最終話をお読みいただきありがとうございます。
今回で埼玉県編はおしまいとなります。最後に二人から熱烈なキスをされたさとし。
今後どのような展開が待っているのか今後の投稿をお待ちください。
お知らせ:次回投稿予定日は未定です。ある程度ストックがたまりましたら、『外伝:秩父編』を投稿する予定です(まだ確定ではありません)。ブックマークをして投稿が再開されるのをお待ちください。




