第三話:足の治療と10年越しの再会【加筆&修正】(26年6月17日)
さとしはミニスカートであった美波の膝に自分が着ていたカーディガンをかけ、スカートの中が見えないように注意しながらひねった足首とは別の足首を掴み、軽く内側にひねった。
(この人大丈夫かしら……)
「あのー、ひねったのは反対の足なんですけど……」
「これは治療するときの正式な手順なんだよ。まずは健康な足から先に足首を曲げてみて、痛みが出ないことを確認してから、実際にひねった方の足に同じことをして痛みのチェックをするんだよ」
「そうなんですね。すいません。てっきり間違えてるのかと思いました」
「そう思う気持ちもわかるから大丈夫だよ。それじゃ怪我した右足でやるね」
そういうとゆっくりと右足首を内側にひねっていった。
「いたっ!」と声を出す美波。
「やっぱり内返し捻挫みたいだね」
そう言うと足首を持って施術を始めた。
その施術内容はどんなかって?それはもちろん企業秘密です。
これでご飯を食べているのだから簡単には教えられないのさ。
しばらく施術したのち美波に立つように伝えるさとし。
恐る恐る足をついた美波が不思議そうに言った。
「あれ?痛くない」
「これでも自称神の手だからね」といってウィンクするさとし。
(この人もしかしてウィンク気に入ってるのかな……。あえて触れないでおこう)
「ありがとうございます。これで歩けそうです」
「これは一時的に痛みをとってるだけだから無理はしないようにね。後テープ持ってるからテーピングしておこう」
そう言うとカバンからいつでも対応できるようにと常備しているキネシオテープとハサミを取り出し、手際よく足首が痛い方へ曲がらないように固定していく。そして、手を動かしながらさとしがつぶやいた。
「そういえば10年前にここに来た時にも人助けしたんだよ。まだ小学校1、2年生ぐらいの女の子が迷子になっててね、一緒にお母さんを探したんだよ」
それを聞いた美波ははっとした。
「それってもしかして青いワンピースを着ていた女の子じゃなかったですか?」
身を乗り出すようにして尋ねる美波
「確かそうだったような、そうじゃないような……。黒いサラサラの髪が特徴的だったからそのことはよく覚えてるんだけどね。あと、確か『みなみちゃん』て名前だったかな」
確信に満ちた顔で美波は答えた。
「その女の子多分私です!10年前にここでお母さんとはぐれちゃって、それを見たおじさん?お兄さん?が一緒に探してくれたんですよ」
「なら君がその時の子だったの?世の中は狭いね」
「あの時は本当にありがとうございました。ほんと不安でいっぱいだったんで、助けてくれたあなたのことがヒーローに見えてたんですよ」
美波は楽しそうに笑いながら話していた。
「それにまた助けられちゃいましたね。おじさんは私のヒーローだったんですね」
目を輝かせてさとしを見つめる美波。
そんな風に見つめられることに慣れていないさとしは目をそらして、目が泳いでいることをごまかした。
「そういえばお名前をうかがってもいいですか?」
「俺の名前は折口さとしだよ。よかったらさとし、あるいはサッサンって呼んでくれ。仲いい人はみんなそのどちらかで呼ぶから」
「なら私のことは美波って呼び捨てにしてください。友達はみんなそう呼ぶので」
上目づかいでお願いをする美波であった。
「わかったよ、美波」
さとしは苦笑しながら応じた。
「それでこれから美波はどうするんだい?」
「私は美術館に行ったら三原に帰りますよ。」
「それなら俺と一緒だね。俺も三原に泊まる予定だし。よかったら俺と一緒に回らないか?また途中で足が痛くなってもいけないし」
(これはきっと運命の再会なのね!年の差なんて関係ないわ。こうして再び出会った二人が恋に落ちていくのよ。それにさとしさんだってきっとこの美少女の私と少しでも一緒にいたいはずよね)
恋に恋するお年頃であり、特に今回はドラマチックな再会であったことが拍車をかけていた。
「はい!よろこんでお供させて頂きます」
そう言うとさとしの腕に抱きついて、美術館の入り口へと引っ張っていった。
とまどう中年と積極的な女子高校生の奇妙な時間が始まったのであった。
食いしん坊たちの御朱印集め紀行をお読みいただきありがとうございます。
10年ぶりの運命の再会を果たした二人にこの後どんな展開が待っているのかお楽しみに。
もし気に入っていただけましたら、ブックマークと評価☆及び感想を頂けると作者みょうりに尽きます。




