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手続き代行サービスを利用しょうー悪魔との契約は寿命が縮むけど、見積もりはタダだからやり方を聞いてコストダウンすれば大丈夫だよねー  作者: ゆきと


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18話 ベッファ.ペッピーノ

水袋の様な腹を揺らしながら男は足早にやって来た。笑顔を浮かべていたサレオとは異なり、眉根を寄せた顔は取り繕うつもりがないらしい。受付の前にいた二人の男、アントニオとゴボーに目を走らせると対面するサレオの横に並んで値踏みするように目を細めた。


「話しは聞いていたが」


言葉を切って横のサレオへ向く。


「困りますな。ウロボロスの魔石は組合が買い取ると言う契約なのに目の前で他に渡されては私を引いては我がガスパール商会を軽んじていると受け取られても仕方ないですぞ。」


「ベッファ殿、この様な場所で契約内容について話題にするのは賛成致しかねますが・・・。」


『組合との契約はただでさえ規則ギリギリで他人からすれば面白くない内容なんだよ。それをこんな所で公開されてはこっちの立場がないだろうが!』


「何を言っているんだね。私の、引いてはガスパール商会のやる事に誰が横やりを入れると言うのだ。いいから君は言われた事をしっかりやりたまえ。」


アントニオ達には笑顔(それが形だけのものであったとしても)崩さなかったサレオが口を引き結んで目の前の男を睨む。


「ベッファ殿。当協会が商業組合と交わした契約は『探索者協会が集めたウロボロスの魔石は商業組合に優先順位が発生する』と言うもので何を差し置いても、まして慣習を無視してまで集めろと言うものではなかった筈ですが。」


ここまでなら誰が聞いていても問題ない。後ろ暗いことはしていないとアピールにもなる。但しこの後には『集めた魔石については商会組合が費用その他全ての責任を負うので細大漏らさず集めろ』と続いている。これは明確に法に触れない限り強引な方法もやむを得ないと暗に示しており、その保証としてつけられた条文だった。

商取引きを知っている者、例えば目の前の商人が聞けば裏の意味に気づく可能性が高く何かと差し障りがある内容なのだ。

当然、商業組合に属するベッファも分かっている筈なのだが、この男はとにかく尊大で他人を見下すきらいがある。

相手を見くびる余り、余計なことを言ってしまう可能性があった。

『そんな事になったら、この場で責任を押し付けてやる。』

小さな亀裂が生まれていた。


「ふん!まあいい。やはり探索者などに高尚な取引きなど任せられんと言う事だ。」


探索者協会本部を切り盛りするサレオは探索者ではないのだが、そんな事を気にする者はこの場にいなかった。


もし、ベッファがサレオの様子をもっと良く見ていたら、そして言い過ぎた事を少しでも取り繕っていたらこの後の展開は違っていたかもしれないが、ベッファはすぐにアントニオ達に向きを変えてしまった。


「お前たちなどに名乗る必要はないのだがな。商業組合理事、ガスパール商会のベッファ・ペッピーノだ。ウロボロスの魔石は全部こちらで買ってやるから手続きをして帰るがいい。」


あまりに勝手な言い分にゴボーは怒りも露わに怒鳴り始めたが、アントニオに制されて口を閉じた。

「これはこれは、かのガスパール商会のベッファ様ですか。ご高名はお聞きしております。

この様な所でベッファ様と知古を得ることができるとは今日はよほど運がいい。」

「何を言っているのだ。貴様などと今後関わり合う訳あるまい。」

「いえ々々、お目にかかれただけで僥倖と言うものです。ですが、この場の取り引きは私とゴボー氏で商談中でして、そこに割り込むのは些か品がない。ガスパール商会のベッファ様ともあろう方が商業の慣例も知らないと言われてはもったいないとは思いませんか?」


「たかが慣習ではないか。法に触れるわけでもなし、何が問題なのだ。それに私は公正な立場から詐欺紛いの取り引きを持ちかけられた犠牲者にアドバイスをするだけで慣習を無視する訳ではないぞ。」


「ほう?ベッファ様はゴボー氏がニセ物で騙そうとしていると?」

「なっ!何を言っているのだ。この魔石は

、あん」

何かを言いかけたゴボーがビクッとして中断し、変わってため息を吐いたベッファが憐れみすら浮かべて口を開く。

「物も見ていないのに本物かニセ物かなど分かる訳なかろう。私が詐欺紛いと言うのはお前の事だ、商人。お前は肝心な事を隠しているではないか。今の高騰したウロボロスの魔石を5倍の値段で買い取るとして、果たしてそんな金を持っているとは考えられないのだが。」


「ははっ、商売に携わる者として仰る事はわかります。さすがに現金の持ち合わせはありませんが、私とて口座もあれば貸し付けを利用する事もあります。この程度の取り引きでお客様を心配させる事はありませんよ。」


「ほう、口座に貸し付けか。それで、それはどこにあるのかな。まさか商業組合の事ではないだろうな。私はアントニオなどと言う名前は信用ランクの高い組合員の中に見た覚えはないのだがね。はてさてお前はどこに属していると言うのだ。」

「!ちょっと待ってくれ。さすがにSやAとはいかないがこの程度の保証を受けるのは組合員であれば可能な筈だ。何なら組合に問い合わせてくれてもいい。」

「理事である私が居るのにそんな必要があるとも思えないな。それに、仮に問い合わせたとしても結果は同じ事だ。」

「ふざけるな!そんな事がまかり通る筈があるか!」

「あるのだよ。何しろ私は組合の理事でガスパール商会の幹部なのだからな。」

「汚いぞ。」

「誰に楯突いているか理解してもらえたか。さて、ゴボーと言ったかな。支払いが怪しい相手と取り引きして丸損するか、確実に利益を手にするか、どちらがいいかな。」

「待ってくれ。売り先はしっかりしているから魔石を持っていけば金は手に入るんだ。7倍、いや10倍払う。支払いを1カ月待ってくれれば確実に用意してみせる。」


今や必死になってゴボーに詰め寄るが相手はあちこちに視線を彷徨わせてアントニオと目を合わせもしていなかった。


「ふん。話しにならないな。それを商人の言葉では空手形と言うのだよ。だが私も商人として誠意を見せようじゃないか。さすがに苦し紛れに言った10倍は話しにならないが、その男が最初に言った5倍で買ってやろう。それなら文句はないだろう。」

「くっ!ゴボーさんもし次があるなら、俺にチャンスをくれ。絶対損はさせない。10倍払う。今は間が悪かったが組合だって次もこの値段を払うわけじゃない。だったら充分リスクに見合う取り引きになるだろう?」


「見苦しいにも程がある。良し!この私が保証しよう。期限はもちろん設けるが今後ウロボロスの魔石は今の5倍で引き取ると約束しよう。支払いはガスパール商会が責任を持つ。何なら直接商会に持ち込んでもいいぞ。どうだ。これが格の違いと言うものだ。わはははは。」


「クソ!人の商売をジャマしやがって覚えてろよ。」


「わはははは!精々身の丈に合った商売をする事だ。わははは。」



俯き、肩を落としてアントニオが探索者協会を出て行くしかなかった。

一連の騒動を見物していた人たちはベッファとゴボーが奥の部屋に場を移すのを見送っていて、敗れたアントニオの後を追う者も、目で追う者さえいなかった。

サレオだけは去り行くアントニオを見ていたがベッファとのやり取りで半ば興味を失っており、違和感に気づく事はなかった。


地面を見つめる去り行く者の口の端は僅かに上がっていた。




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