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十一話 盗賊に襲われちゃった 下


「えっ」


 僕のことを殺そうとしてきたギーベルさん――ギーベルが素っ頓狂な声を上げた。

 いきなり右手がなくなったのだから、当然の反応だろう。

 というか、盗賊みたいのに囲まれてからどういう展開になっても動揺しないように覚悟をし、ギーベルのことを信用ならないと思って動向を見といて良かった。


「いてぇぇぇー!?」


 ギーベルはドバドバと血を流す腕をもう片方の腕で押さえながら、涙声が混じった声を出した。


「福崎くん?」


 ルヴィエさんはいきなり現れた剣がギーベルの右腕を飛ばしたことで、僕が何をしたのかが分かったのだろう。

 エルディーさんは、ルヴィエさんがいきなり僕の名前を出したことでギーベルさんの腕のなくなった原因なんとなく理解したのか、怯えた表情で自分のことを見る。

 ……僕がこれからやることを考えると、この反応は好都合だな。


「で、盗賊さん?達どうしますか。一応、僕人殺しとか嫌いなので去って行くなら別に追いませんよ」


 言っとくけど、僕はこんな物騒な世界で生きてきたわけじゃないから人殺しとかしたことはない。だから、今口にしたことは真実だ。

 でも、一応嫌いなんじゃなくて経験がないというウソはついているが。そう言っとくことで、相手も僕のことをヤバイ奴だと思ってくれそうだし。


「おまえなにしやがんだ!?」


 ギーベルは僕が盗賊達との交渉しようとしている所に、怒りに満ちた声を上げながらもう一本の腕を使って殴りかかってきた。

 一本目の腕を切り落とす前から、人を傷つける罪悪感や人を殺してしまうかも知れないという忌避感を考えないようにし、ここを切り抜けることだけを考えるようにだけ思考したため、容赦なくもう一本の腕を切り落とす。


「ウガァァァー!?」


「僕はどんな人であったとしてもパーティーメンバーを殺したくはないので、そこで黙って寝っ転がっていてください」


「……ッ、いてーんだよ!!このままじゃ死んじまう!」


 ギーベルは腕を押さえながら僕のことを涙でぐちゃぐちゃになっている顔をしながら涙声で訴え掛けてきた。


「分かりました。エルディーさん、出来れば彼を死なないぐらいには直してくれませんか?」


「えっ!?……分かったわ」


 エルディーさんはこんな状況下で自分の名前を呼ばれたことに驚いたのか、どうも言われたことを飲み込めなかったのか、動かなかったけど、少ししたらギーベルに治療魔法を掛け始めた。


「で、盗賊さん。そろそろどうするか決めましたか?」


 僕たちのやりとりの中、四の五の言わずにこっちを攻撃することも出来たのにしなかったのは、僕の虚仮威しが効いているのだろう。


「どうしやすか?おやびん」


 側近っぽいのは腰が引けた様子で顔色をうかがいながらリーダーっぽいのに聞く。


「あ、一つの判断材料のためにあなたには死んでもらいますね」


 僕はリーダーに訪ねていた男を魔法で複製した剣で、脳天から串刺しした。

串刺しにした男は悲鳴声すら上げずに、バタンと倒れる。

 ……これが初めての人殺しだったが、相手が相手だったからか、それともこういう状況だからかは分からないけど何も感じない。


「……お前分かってるのか。こっちにはこれがいるんだぞ」


 リーダーらしき男は今までよりも低い声を出す。

 そして、首輪をはめられている少女の顎下に懐から取り出したナイフを突きつけた。

 実際に一人の盗賊を一瞬で殺したのもあってか、強行突破という選択肢が出来るということが分かったのだろう。

 

「関係ないですよ。僕は僕以上に大事なものはありませんから。それに、ここであなたたちに屈したところで彼女は死んだ方がましレベルの生活は変わらないでしょう?」


 今告げたことは思っていることであり本心である。

 だからといって、あの少女を見捨てるということに抵抗感があることも認める。だとしても、僕が今言ったことを曲げるつもりはない。


「……おい、三つ、もってこい」


 リーダーに指示された取り巻きの一人が急ぎ足で森の方に入っていく。


「なんのつもりですか?」


「……少し待ってろ、待ったら答えを出してやる」


 僕はなんとなく嫌な予感がして待ちたくなかったが、無理を通すと人質の少女に何か起こるかもしれないからと迷っていると、取り巻きが三人の首輪を付けられた少年少女達を連れて帰ってきた。


「おい、一つこっちに持ってこい」


「はい、おやびん」


 首輪を付けられた男の子はビクビクしながら取り巻きに歩かされると、リーダーである男はその男の子の首を跳ね飛ばした。

 

「ッ!」


 僕は後ろの雰囲気が変わったことを感じた。

 僕はエルディーさんの反応で虚勢を張れているかを確認したあとは、覚悟をしているとはいえ僕のことをドンびいたような反応をされると動揺する可能性があると思ったため、後ろにいる三人を見てない。

 だから、三人がどんな表情をしているかは分からない。

 だけど、こんなショッキングな場面を怯えた表情だったエルディーさんと気の弱いカバネルさんは耐えられないだろう。


「これで俺が本気だと言うことが分かったか?」


 あーもう、脳筋そうな見た目をしているくせに頭が切れるな。

 最初からいた少女はお気に入りであるため殺したくなくて、スペアの奴隷を連れてきたという理由はあるのかも知れない。

 ただそれだけでなく、もし一人しかいない少女を殺してしまった場合それで終わりだが、他に人質となれる存在がいれば脅す材料になる。

 ここまですると言うことは、相手は引くつもりはないのだろう。……首輪を掛けられている人たちには悪いけど、やるしかないよな。


「僕は言いましたよね。引くつもりは……」


「ああああぁぁー!!」


 僕はここで相手が引かないなら火蓋を切るつもりで話している途中で、側近っぽい奴が炎に包まれた。


「悪いわね福崎君、あなた一人に頑張らせてしまって。でも、もう遅いけれど、こんなゴミは生かす価値がないことに今気づいたわ」


 突然現れた緋色の髪の女性が発した声色は底冷えするようなものだった。

 僕はその見覚えのある顔なのに見覚えのない髪色をした女性が使った魔法で男が炎に包まれる姿に、どこか見覚えがある気がした。


「……ルヴィエさん、ですよね?」


「……そうよ。あなたたち、ここで大人しく拘束されるならこれ以上犠牲を出さなくて済むわよ!」

 

 いつものクールなルヴィエさんとは少し違うタイプの威圧感と、いつもはない熱が感じられた。

 盗賊達もその圧で、ひるんでいるように見える。


「ここで大人しく捕まったらどうなる?」

 

 盗賊のリーダーは額に汗を浮かべながらも、何かを見極めるようにルヴィエさんのことを見つめる。


「そうね、憲兵にでも突き出してあげるわ」


「……そうかよ。ならここで引くことは出来ないな。お前達行くぞ!」


 盗賊のリーダーが下っ端達に号令を掛けたその瞬間――。


「うわぁぁぁー!?」


 リーダーの体が炎に包まれ、一瞬で燃え尽きた。


「それであなたたちはどうするのかしら?」


 ルヴィエさんの警告とともに、顔を青白くしながら盗賊達は一斉に持っていた武器を地面に捨てた。

 僕は人を燃え尽きるさまを見ていて、今まで女の子を見捨てて盗賊たちを皆殺しにするつもりだったのに、なんだか無性に怖くなった。


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