九話 新生パーティー
「福崎君はいつも何してるの?」
「あー、基本的には勉強とかそんな感じですね」
「そっか、福崎君って記憶喪失だからいろいろと覚えることが多いもんね。やっぱり大変なの?」
「そうですね……。計算とかは出来るんですけど歴史とか魔法とかの記憶がないので、そういう記憶のない奴は結構苦労してますね」
今なんでエルディーさんと会話をしているかというと、僕が会話をするターンだからだ。
どういうことかというと、普通に会話できるエルディーさんと、引っ込み思案なカバネルさん、孤高という言葉が似合うルヴィエさん、学校以外ではずっと引きこもり人と関わらずに生きてきた僕で構成された食事会では一人しか話を振れる人間がいないことになる。
つまり、エルディーさんと話を振られている人でしか会話にならず、他は黙って店の料理を口に運ぶという状況になってしまうのだ。
「へ~、じゃあ計算は結構得意なの?」
「人並ぐらいですね」
僕はそう答えながらもチラリと横目でルヴィエさんを見る。
さっきは僕のターンだと言ったが、実はここ数分ほとんど僕とエルディーさんでしか会話していない。
僕は話を広げたりというのが下手というだけで、受け答え出来ないこともないという感じだ。
それに比べて、ルヴィエさんは妙な威圧感があるというのも起因して会話が続け辛いし、カバネルさんは小さな声でぼそっと答えてその後小さく縮こまっちゃうという感じだから、比較的僕のほうが会話のキャッチボールが成立しやすいためそうなってしまっている。
「今思ったんですけど、これから一緒に組む上で必要なことってなんですかね?」
そこそこ一緒にパーティを組んで来たおかげで最近なんとなく分かってきたのだが、ルヴィエさんは自分自身が必要性を感じたことは結構自分から口に出すタイプだ。
今回、ルヴィエさんが食事の誘いに乗ったのは、多分これから一緒に組む相手との親睦を深めることが重要だと感じたからだと僕は思っている。
よって、これからの方針といったようなことをこの場で話すのは良くないと思い口に出してないのだと思う。これも多分だけど。
だから、自分から話題を出すのは苦手だけど、ここでそういう堅い感じの話になるような話題を振ってルヴィエさんも話に参加出来るようにした。
このほぼ一対一の話し合いを終わらせる為に。
「……さっきの授業で福崎君が言っていた連携を高めるというのが大事なんじゃない?ルヴィエさんはどう思う?」
「……そうね。具体的にはお互いに得意な魔法や得意でなくても使える魔法を理解し合うのが重要ね」
僕の思った感じになりそうだな。
ちなみにこの後は、ルヴィエさんが今後において重要なことや課題を出していき、エルディーさんはルヴィエさんに同意しながら、さらに思いついたことを言うといった感じでどんどんと話が進んでいった。
そのとき僕は、ルヴィエさんとエルディーさんが特に的外れなことを言わないので、そうですねとかいいですねなどと同意の言葉を言うだけのボットになっていた。
今僕がいるチームはいくらでも欠点を上げることはできると思うけど、クラスの中ではかなり実力派ではあると思う。
なぜかというと、クラスで一番の実力者のルヴィエさんとルヴィエさんの次に成績が良いエルディーさん、いろいろと問題はあるけれど実力は確かなギーベルさんがいるからだ。
まあ、ギーベルさんはいつもいないけど。
というか、前回受けた依頼のコボルト討伐とかは今挙げた人物一人で達成できてしまう難易度なので、本来チームを組まなくともどうとでもなってしまう。
「で、今日は何すんの?」
チームを組んでから三回目の依頼で初めて来たギーベルさんは勿論、依頼を知るために集まっているときにいないので、今回がどんな依頼なのかすら知らないはずなので当然の疑問だろう。
「それをあんたに教える価値を感じないんだけど。……まあいいわ、依頼内容の確認もかねて説明するわね」
エルディーさんはしょうがないわねといった表情をしながらも依頼内容について説明し始める。
「今回はこの鞄に入っているものを依頼主の元まで届けることが目的よ」
僕はエルディーさんの説明し始めるのとともにまた依頼が始まったことを実感した。
まあでも、学校側からの依頼を受けるのが面倒くさいと最初は思っていたが、最近は面倒くさくはあるが特に大変な訳じゃなくお金も支払われるので悪くないと思っている。
それに、今回は配達するだけだから楽そうでむしろ気分がいい。
「ふーん、つまんなそう。……俺いる?」
「いるいらないとかそう言う問題じゃなくて、依頼を受けたら少なくともついてのいくのが普通なのよ!」
「でもさ~」
ギーベルさんは僕たちをチラリと見た。
「こんな大勢でやらなきゃいけないようなものには思えないけどな」
「だ、か、ら、そういうことじゃなくて!……はあ、もういい。それに、人様のものを届けるんだから、そこら辺のモンスターを狩るのと違って責任重大なのよ!」
エルディーさんから出た、五本の指に入るくらい僕が嫌いな責任という単語を聞いて、今までのよりも厄介なのかも知れないと上がっていたテンションが落ちた。
といっても、責任感が強そうな人が二人もパーティーにいるし大丈夫か。
「で、まだなんかある?」
「別にねぇかな」
「えっ」
ギーベルさんの言葉がエルディーさんにとって予想外だったからか、不機嫌そうだった表情は潜め素っ頓狂な声を出した。
僕はギーベルさんがここで帰るのかな思っていたので、エルディーさんの反応は理解出来る。
今回の依頼内容的にとか輪を乱しそうといった要素から、素直に帰ってくれた方がこっちにとってはありがたそうだけど。
「まあ、それならいいわ。……じゃあ、続けるわね。今回はここ、ネブリス林を抜けることが一番の鬼門となる可能性が高いわ。だから……」
エルディーさんは地図を取り出し、指をさしながら説明を続けていく。
そんなエルディーさんの説明をまあ後についていけばどうにかなるだろう理論から、聞いてないと言われればそんなことないと言えるが、真面目に聞いているかと言われれば首を傾げるレベルで話を聞いていた。
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