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これが戦争、これも戦争12

38

『ああ、そうだ。そこの君、先頭でどうしようか迷ってる感じの青い肌した魔族の君だ。

 そう、今「え、俺!?」みたいな感じで隣を見ながら自分を指さした君。

 ちょっと魔族と帝国の関係で知りたいことがあるから死にたくなかったら武器を捨ててそのまま前に進みなさい。

 大丈夫、安心しろ。

 俺の指示に従ってる限りドラゴンは君に手を出さない』


 ハインリヒの話を聞いた限りでは、変態ガライアスとの関係がわからなかったので直接話を聞くしかない。

 たぶん違うとは思う。

 もしも変態ガライアスが帝国の味方について俺と敵対するのならば初戦で投入する数は50程度では済まない。

 まず間違いなくその時点で投入できる全戦力を投入するはずだ。

 俺の油断を誘うための作戦?

 まぁ、その可能性は否定できないが、後にどんな秘策を用意していたところで油断を誘った程度で勝てるとは変態あいつも考えないだろう。

 そんなことを考えながら、ドラゴンの間をビクビクしながら通り抜けてきた青い肌の魔族――青肌くんと対面する。


「さて、君に聞きたいのは君たちの親玉は誰かってことだ」

「それはぁ?」


 単刀直入に切り出した俺の言葉に応えようとした青肌くんは言葉の途中で袈裟斬りにされ、半身がドサリと地面に落ちた。

 え? 斬ったのは俺じゃないよ?

 後ろから斬り付けられてるし。


「けっこう速いな。雷魔法を使った高速移動とか?」


 青肌くん以外は帝国の陣地からこちらに近づいていた人間はいなかった。ということは、通常ではありえない速度でこちらに走ってきたってことだ。

 普通の身体強化では1秒に満たない時間で1キロは離れたここまで近づけるような速度は出ない。

 雷魔法を用いた移動なら光速とはいかないまでも、音速は超えられるので可能性として高いのはこれだ。ちなみに次点は使い手の少ない短距離転移トリップの魔法である。


「お前がそれを知る必要はない」


 俺の質問に答えるようで答えていない言葉を返しながら、振り下ろしていた剣を振り上げてくる。

 剣速を考えるとやっぱ雷魔法かな?

 けっこう珍しいけど、いないわけじゃないし。

 ヒョイと軽く上体を後ろに下げることで剣を躱す。

 躱されたことが気に食わないのか、男は舌打ちしながら追撃を加えてくる。

 残念ながら、こんな鈍間な剣に斬られてやるほど俺は優しくないのだ。


「どっかで見たことあると思ったら、あれだ。お前、帝国で話した時にいただろ」


 あれだよ。

 ハインリヒとの謁見初日に襲いかかってきた連中を返り討ちにした時、貴族連中に向けて蹴り飛ばした剣をキャッチした偉丈夫だ。

 あの時はなかなか強いと思ったけど、評価を改めないとな。

 雷魔法の使い手で、魔族も一刀両断した実力とこの剣筋を見れば実力的にはなかなかではなく、かなりのものと言える。

 少なくともシュルムのおっさんやリオンでは手も足も出ないだろう。


「どうした永久殺戮機関エターナルキラー! 手も足も出ないか?」

「いや、別に反撃は出来るけどさ……」


 ヒョイヒョイと止まることなく繰り出される斬撃を躱しながら、そう言ってチラリとドラゴンたちに目を向ける。

 こちらを見ていながらも何もしようとしないドラゴンたちの態度に、思わずため息をこぼしてしまう。


「あ、そう言えばその呼び方やめてくれる? そんな厨二臭い名前で呼ばれたくないんだわ」

「ぬかせ!」


 剣を振るいながらも発動の準備を進めていたらしく、偉丈夫は剣に雷を纏わせた一撃を放ってきた。

 バチバチと刃から雷が広がっている剣を振るうのだから、今までのように軽く仰け反る程度では躱しきれないちょっと範囲の広い攻撃だ。

 つってもその程度の攻撃は何の意味もないけどな。

 雷をまったく意に介さず、振るわれた剣を指先で挟んで止める。


「なぁっ!?」


 驚いている偉丈夫の腹にぺたりと足裏を当ててやって、そのまま前に突き出す――変形ケンカキックだな。

 偉丈夫は面白いほど勢いよく後ろにすっ飛んでいき、衝撃で手放した剣だけが俺の手に残されている。

 飛んでいった偉丈夫は、二度、三度と地面の上を跳ね、土煙を上げながら5メートルほど地面の上を滑ってからようやく動きを止めた。

 ビクッビクッと動いているので生きてはいるようだ。けっこう頑丈ですね。


「ま、魔王様が負けたぁ!?」

「そんな!? 魔王様!?」


 帝国側の陣地で叫ぶ微かな声を魔法で強化された俺の耳が拾った。

 あれが魔王へんたい? そんなばかな。

 あの変態まおうはこんなに弱くない。

 案の定というか、何というか魔王を語っていただけの雑魚だったな。

 ん? そうするとあの変態ガライアスはどうしたんだ? まぁいいか。そのうち連絡も取れるだろう。


『さすがはカイト殿であるな』


 そんなことを念話で宣いながらノッシノッシとチョコ蜥蜴が歩み寄ってきた。


「おぉおぉ、これはこれはドラゴンの王様ではございませんか。言いつけられた簡単な仕事もまともにこなせないのに良く顔を出せましたね」

『ぬ? 言われた通りの仕事はしておるではないか』

「じゃあ、あれはなんだ?」


 いかにも心外と言いたげに反論してきたチョコ蜥蜴にビクンッ、ビ、ビクンッ!と微妙にリズミカルな感じの魔王もどきを指し示してやる。

 普通の人間では先ほど青肌くんを斬った一撃に反応できなかっただろうが、魔力察知に優れたドラゴンならば雷魔法を発動させる前段階で気づいて対処できたはずだ。

 そうだというのに魔王もどきの接近を許したのはドラゴンの怠慢と言う他にない。


「俺の依頼は、ドラゴンを並べた場所に武器を持って近づいてくる馬鹿の排除だ。これは立派な契約違反だろう?」

『むぅ……しかし、カイト殿であれば容易く対処できるだろうと信頼していたからこそ……』

「関係ないな。依頼を果たせなかったんだから、貸してる分の返済とは認めない。むしろ、俺の手を煩わせたんだから1個追加だな」

『それはないのではないか? せめて1つは返したことにしてくれてもよかろう』

「おいおい、ふざけんなよ? こっちは下手すりゃ何十年もお前の子どもの面倒見なくちゃいけないんだぞ? それを簡単な仕事1つでチャラにしてやるって言ったのにその簡単な仕事すらこなせないのに文句言ってんじゃねえよ」

『むぅ……』

「まぁ、報酬なしってのはそっちも都合が悪いだろう。酒と飯ぐらいはおごってやる」

『…………それならば、まぁ……いいだろう』


 よし。

 これでチョコ蜥蜴に貸し2つだ。

 儲け儲け。

 さて、これからは戦後処理とさらなる帝国への進軍か、面倒くさくなりそうだ。


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