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これが戦争、これも戦争11

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 今まさに戦争が始まったというのに時が止まったかのようだった。

 駆け出していた帝国の兵たちは足を止めて自陣側、黒煙を上げながら旗が燃え落ちている本陣を呆然と見ている。

 あまりにも訳が分からない状況ってやつだ。

 誰も、何も言うことも出来ず、ただただ呆然としていた。

 さて、早速ネタバレしてあげるとしますか。


『えぇ~、テステス。帝国兵の皆さん、助っ人の魔族の皆さん、こちらは王国軍総指揮官カイト・コルネリアス・フォン・ドルーフェン戦爵です。

 先ほどは伝え忘れましたが、帝国に魔族の助っ人がいることは予め知っていました。

 帝国が助っ人を呼んだので、こちらも助っ人を呼んであったので今更ですがご紹介させていただきましょう。

 上を見てください』


 拡声用の魔道具マイクを片手にそう言うと帝国兵だけでなく王国兵も空を見上げた。

 俺の隣にいるリオンやセロも同様だ。


『竜の王、黒雷のエルンストさんとドラゴンの精鋭20頭の皆さんです。

 戦争が始まったので、速攻で帝国本陣に竜魔法ブレスを吐いてもらいました』


 戦場にいる誰もが見上げた先でバッサバッサと飛んでいたドラゴンたちがゆっくりと戦場の中心に降り立った。

 21頭ものドラゴンが集まっている様はなかなか壮観だ。

 そう、ドラゴンである。

 帝国が俺的種族ランキング2位の魔族を味方につけたのだから、こちらは1位のドラゴンを味方につけたのだ。

 相手が強い助っ人を呼ぶならこっちはもっと強い助っ人を呼ぶ。非常に簡単な方法である。

 さすが俺の考えた作戦だ。

 これ以上勝利を確実なものにする方法など他にないだろう。

 うんうんと頷いていると戦場は大混乱になった。

 帝国だけじゃなくて王国も大混乱なのは何故だ? 解せぬ。


「カイト……お前……」

「ん?」

「何を考えている!?」

「何って勝利?」


 総大将なのだからそれ以外の何を考えろというのかね?


「よりにもよってドラゴンを使うなど……」


 ああ……そう言うこと?


「リオン、よく考えろ」

「何がだ?」

「ドラゴンを使って他国を攻撃するのはなんでダメなんだ?」

「それは……ドラゴンには兵だろうが民だろうが関係なく……」

「ここに民がいるのか?」


 その一言でリオンは何かに気がついたようで、ハッとした表情を浮かべた。

 この世界において民は意外ときっちり保護の対象とされている。

 民の数が国力につながることをきちんと理解し、国力が上がれば自分も含めたみんなが豊かになるという認識が一般的だからだ。

 そのため私利私欲に走る貴族は意外と少ない。その辺の教育がきちんとなされているし、それが理解できない人間は爵位を継げないか継いでもすぐに潰されるからだ。

 そして、守られている民と守られない兵は明確に分けられている。分け方は単純で、戦場にいるかいないかだ。

 そういった区別の仕方なので、徴兵された農民の兵士も普段は民なのに兵と区分されてしまうことになるが、徴兵される農民兵の数自体が少ない。

 この世界における兵の基本は国軍と貴族軍であり、それらを構成しているのは職業軍人だ。普段から基礎訓練という名の農作業を行っていたりするが職業軍人なのである。

 ドコカノン王国ではおよそ10万の軍人がおり、この戦場でも7万のうち5万がそれにあたる。残りの2万は約90%が冒険者と傭兵などで、農民兵は10%も満たない。しかもその10%ですら、騎士が連れてきた従士と言う名の半分ぐらい騎士と言って過言ない連中なので、純粋な農民と呼べる徴兵された人間はいないと言っていい。

 農民まで戦力として動員するのは、それこそ負け続けて軍人が足りなくなった場合や敵が圧倒的な数で攻めてくるような国家存亡の危機にでも陥らない限りありえない。

 そう。

 ドラゴンを利用して他国に攻撃を仕掛けるのがタブーとされるのは、ドラゴンの怒りは兵でも民でも関係なく全ての人間に等しく向けられるのが理由だ。

 では、向けられるのがドラゴンの怒りではなく理性的な攻撃だったなら?

 兵と民をきちんと判別した上での攻撃であったなら?

 そもそも民がいない場所だけに攻撃が向けられるのなら?

 そうなれば、禁忌タブーとされる前提が崩壊するのだ。


「この状況で利用しないのはもったいないだろ?」

「それでこちらにまで被害が出たらどうするのだ?」

「出ない出ない。ドラゴンってけっこう理性的で頭も悪くないから、こっちの考えだって普通に理解してくれるんだよ」

「なぜそんなことがわかる……なるほどシンディアの件か」


 正解です。

 リオンはシンディアを俺が面倒見ることになった経緯を全て知っているので合点がいったのだろう。

 さて、リオンも納得したみたいだし帝国さんに止めを刺すとしますか。


『いま君らの前にいるドラゴンたちは俺の指揮下にある。攻撃する条件は近づいてくる人間だ。つまり、武器を捨てて逃げる人間は見逃すと言うことでもある。死にたくないのなら逃げることをオススメしよう』


 この言葉だけでけっこうな数が我先にと逃げ出した。

 帝国の指揮官は逃げようとする兵たちを押し留めようと必死で叫ぶが、ドラゴンなどという魔族すら雑魚扱い出来る化け物を前にして混乱した兵たちを止めるには至らない。


『逃げながらでもいいから聞いておけよ?

 俺は国王陛下より今回の戦争で帝国を滅ぼすように仰せつかっている。

 前の戦争みたいに和平は認めない。

 これから俺たちが進んだ先の街はドラゴンが先鋒となって攻撃する。

 街に到着してから攻撃開始まで24時間の猶予は与えるので、王国に従えない人間はその間に逃げるようにしろ。

 ちなみに降伏した人間には王国民として迎え入れる用意があるので、無駄な抵抗はしないで降伏することをオススメする。

 逃げるのも大変だろうし、この場で降伏したい場合は武器を地面に刺してその場で伏せてろ。

 後から対応させてもらう。

 さぁ、戦争が続けたい馬鹿はまずドラゴンに挑むといい』


 こう言われて逃げないのはよほど愛国心のある馬鹿か先の見えない馬鹿かただの馬鹿だ。

 典型的なクソ貴族である帝国貴族の連中なら、自分たちの身分を守るために戦おうなどとはしない。

 むしろこの場は率先して逃げ出す。

 その後、帝国が王国に吸収されても自分は今と同じ待遇かそれ以上で迎え入れられると本気で信じていることだろう。

 なんでそんな風に思えるのか謎ですね。


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