妄執の帝国7
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まさか帝国が変態と手を組むとは……
しかし、変態と手を組んだところで得られる利益はほとんどないぞ? むしろ変態に毒されたせいで出生率が低下するかもしれないことを考えれば、マイナス要素の方がデカいかもしれない。
「兄上は、魔王と手を組み魔族の力を使ってカイト様を亡き者にしようとしているのですわ」
「え? それ本気で言ってるの?」
「ええ。兄上は本気でそう考えているようですの」
魔族、それは俺的種族ランキングでドラゴンに次ぐ2位の座をガッチリキープしている種族だ。
数多の物語で語られるように人間や獣人、エルフにドワーフなどの種族をひっくるめた人族と呼ばれるグループからは排除され、酷く嫌われた種族でもある。
なぜ嫌われているのかと言えば、魔族は善神に嫌われた種族であり善神と敵対する闇を司る悪神の加護を受けている。そのため、善神の加護を受ける人族とは敵対関係にあるのだ。
様々な事件の裏で暗躍し、人族の王位継承問題を引っかき回して内戦を引き起こしたり、人族の村1つを一夜にして滅ぼすなどの話は枚挙に暇がない。
何よりも人魔大戦と呼ばれる魔族と人族全てを巻き込んだ世界規模の大戦が過去に幾度も起きており、両者の間にある溝はマリアナ海峡よりも深い――なんて事実は一切ない。
魔族が嫌われているのは確かだが、神に善悪なんて括りはないし、魔族が人族を敵視して何か事件を引き起こしたり暗躍したりなんて事実は存在しない。
そりゃ個人的にそう言ったことをしている魔族はいるかもしれないが、それは個人の資質や価値観的な問題であって魔族という種族全体の行動ではない。
何故嫌われているのか、本当のところは変態が王であることが何よりもわかりやすい理由だ。
やつはキングなのだ。
HENTAIキングであり、キングオブHENTAIなのだ。
お分かりいただけるだろうか?
つまり、魔族イコール変態なのである。
誰でも変態とわかりきっている相手とは距離を置きたいだろう。
会話の最中に何の脈絡もなく「踏んでください」とか「そう言えばあなたのパンツは何色ですか?」って平気な顔して聞いてくるのが魔族のスタンダードなのだ。
常識ってものが欠落しているとか思えないだろう。
とは言っても、現在では過去の行いを恥じる風潮が広がっており、王子や王妃を中心に国民の約半数ちょっとは魔族のイメージ回復を目指して涙ぐましい努力を重ねている。
すごいだろ? そんな風潮が広がってるのに未だに国民の半数近い数はガライアスの同類なんだぜ?
しかし、どれだけ変態であろうとも強さは本物だ。
人間の魔法兵の魔力を1とした場合、魔族の兵は歩兵ですら平均100ぐらいの魔力を有しており、人間と比較した場合は個の強さが突出している。
人族で魔法に長けたエルフですら、平均魔力は50ぐらいなのだからぶっ飛び具合は察して欲しい。
しかし、それも所詮は平均の話であって、勇者や魔王、ドラゴンなんかの化け物(笑)とは比較できるものではない。
少なくとも、俺からすれば魔族なんぞ人族と大差ないレベルだ。
そんな魔族を味方につけた程度で俺が殺せると思っているとは……
「馬鹿だなぁ~」
「我が兄ながら馬鹿としか申せませんわ」
魔族が俺を殺せるなら今頃俺は変態の刺客に怯えて暮らしてるわ。
俺が魔族に勝てない程度の実力しかなかったならば、俺の握ってる情報を葬るためにあいつは必ず刺客を放つ。
それをやらないのは、俺が普通の魔族では油断を突いても俺を殺すことなど不可能だと知っているので、そんなことをしても無駄だってことをこれ以上なく理解しているからだ。
それでも帝国に協力するなんて何考えてるんだろう?
まぁいいや。魔道通信で聞けばすぐ分かる。
「どなたに通信をしていますの?」
「え? 変態」
「へ、変態?」
「変態と書いてガライアスって男でな、一応職業は魔王やってる」
「…………さすがはカイト様ですわね。まさか魔王と連絡が取れるとは思いませんでしたわ」
そう?
あの変態は自分から喜々として俺に連絡先教えてきたけど。
『がっはっはっは! ガライアスである』
「あ、もしもし?」
『所用により通信を受けることが出来ん。用がある者は発信音の後に伝言を残すが良い』
「あれ? また留守か」
伝言を残すことなく通信を終え、首をひねる。
そう言えば、チョコ蜥蜴に会う前に連絡した折り返しもないな。
あの変態のことだから、文句の1つでも言ってくると思ったのに……
「どうかなさいましたの?」
「いや、留守だったんだよ。この前連絡した折り返しもないし、どうしたのかと思ってな」
「そうなんですの? まさか……兄上と接触しているなんて事はないですわよね?」
ふむ……
たしかに何かしらの重要な仕事で出られないのだとすれば、他国の王族との会合はその重要な仕事に含まれるだろう。
話し合いが長引き忙しくなっていることも考えられるし、通信に気づいていないのにも納得が出来る。
まさか、本当にあいつが帝国の味方になっているって言うのか!?
そんな馬鹿な……いったい何を考えているんだ!?
…………まぁ、それが知りたかったら息子に聞きゃいい。
魔族の国の将軍やってるから機密も知ってるだろう。
「今度はどちらに通信をしていますの?」
「ん? 変態の息子」
「変態……魔王さんですわよね。魔族の王子とも知己があるとはさすがカイト様ですわね」
「あんがと」
『はい、もしもし』
「あ、もしもし? アルか?」
『はいそうです。そうだ、カイトさんあの写真のことなんですが……』
「あ、あれは合成でも何でもなくお前の親父が本当にやったことだぞ」
『まさか父上が……』
父親の性癖が露わになっている写真は息子としてショックだろうな。
しかしなアルよ、それはお前の親父の108つある性癖の1つに過ぎないんだ。
「その話は置いといて、ちょっと聞きたいことがあるんだが大丈夫か?」
『あ、はい。なんでしょう?』
「いやな。なんでもルファート帝国が魔王――つーか、魔族と手を組んだらしくてな? 帝国の狙いは俺の命なんだわ」
『はぁ……え!? カイトさんの命を魔族が狙う!?』
あ、驚いてる。
やっぱガセか?
「んで、ガライアスに確認しようと思ったんだが、あいつ通信に出ないんだよ。仕事が忙しいのか?」
『はい……なんでも重要な案件があるらしく、詳細は私も聞かされてないんですよ。ここ1ヶ月ほどは父と会ってもいません』
「あれ? そうなの?」
魔王軍四天王(笑)のアルでも聞かされていない仕事か……
こりゃマジで帝国とつながってるのか?
もしや、アルやティアに写真送ったせいで完全にぶち切れたか?
いや、あの程度でマジギレするような男ならもっと前にキレてるだろうし、やっぱ違うのか?
でもそうするとアルにも言えないような話ってのはなんなんだ?
俺と敵対するって話なら絶対に反対するだろうアルに話せないのもわかる。
というか、そうでもなければ魔王自ら動かなくちゃいけないレベルの案件で、アルにも話せないような内容に想像がつかない。
「なぁ……アル。お前はガライアスが俺の敵に回ったと思うか?」
『どうでしょうか? ですけど、最後に父と会った時に言ってました』
「なにを?」
『これでカイトさんも終わり……だと』
本気で俺の敵に回った可能性があるのでアルの声が震えている。
そりゃそうだ。
あいつやガライアスは俺の強さを身に染みて理解しているはずなのだから。
それでも敵に回ったとすれば魔族と帝国が手を組んだ他に何か秘策があるのか、それともまったく別の何かなのか。
これはもう、まったくもって面倒なことになりそうだ。




