表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/41

3話 妄執の帝国1

18

 当然のことながら式典が終わったからといって「はい、解散」とはならなかった。

 豚の国――ではなく帝国への対応をどうするか決まっていないのだ。

 戦争するかどうかとかの話より俺の戦爵への叙勲を優先するって国としてどうなんだろうね?

 あ、戦争するって決めた時に戦爵がいた方がいいのか……

 とりあえず、これからの話で決まった内容をリオンに伝えれば俺の仕事はひとまず終了……って、あいつもニヤニヤしながら叙爵の儀式にも出てたんだし、まだいるんだろ? 俺は帰ってよくね?

 あ、ダメですか……はい……

 戦爵ですもんね。


「さて、ドルーフェン戦爵。戦爵となって最初の仕事を言い渡そう」


 バルコニーから戻って玉座に座った義兄が尊大な口調でそう言った。

 ちなみにドルーフェン戦爵というのは、戦爵になったことで領地を押し付けあたえられた俺のことである。

 今日から俺はカイト・コルネリアス・フォン・ドルーフェンだ。

 やっだね! 今日から俺も領地持ちの仲間入りだ。

 ほんと最悪……


「戦争は嫌いだと公言し、民の守護者を名乗る戦爵ならば、戦争を止めるための労は厭わんだろう?」

「つまり戦争はしないと?」

「そもそもの問題は帝国が戦争を求めている可能性があることだ。私とて先の戦争の傷が完全に癒えたわけでもないのに戦争をしたいとは思わん」


 そうだよな。

 そうやって考えられる王様じゃなければ、いくら家族や友人がいるとは言え、俺はさっさとこの国を見限っている。

 戦争が終わって5年。

 人によっては長いと感じるかもしれないが、戦争の傷が癒えるのにはまだまだ時間がかかる。

 建物は5年という歳月で建て直すことはできたが、失われた人口など物以外は5年程度で取り戻せるわけではない。

 義兄がそんなことも気にしない屑野郎だったなら、前の戦争の時に戦う力のない俺が守ろうと思っている人間を保護しておけば、何もしなければ末だけでこの国が滅びていたのだ。

 まぁ、その後に調子に乗った帝国をたたきつぶしてまともな人間を王に据える面倒を考えたら、やってられないと思ったので採点は多少甘くしたけど……それを差し引いても義兄はまともな人間だ。

 嫌がる可愛い義弟を戦爵なんていう面倒な立場にするような腹黒だけどな。


「戦争をしたいとは思わんが、帝国が我が国の領土を侵そうとしているのならば、守るための剣を取る必要はある。しかし、リッタナ村を占拠しようとしたやり方や意図など個人が暴走したとも考えられる。よって、戦爵に全権を委ね、帝国へ抗議の使者として送り出す」


 豚を首にしたことの抗議が来る前にこちらが電撃作戦を仕掛けるわけですね。わかります。

 いちゃもんつけるのは早い者勝ちだ。

 その点を考えれば国を跨いだ場合、シシカもいる俺の速さに勝てる人間はまず存在しないので俺が適任だろう。

 それにしても戦爵に就任して最初の仕事は出張ですか……

 というか、戦爵って戦争になった時以外は暇なはずじゃないの?

 勘弁してくれよ……面倒くさい。


「陛下、使者として他国に赴くのは戦爵の仕事なのでしょうか?」

「疑問に思うのももっともだ。しかし、戦爵は過去に1人しか居らず、その前例であった戦爵は戦爵に叙されてからどのような仕事をしたのかは記録がない」


 王国史上1人目の戦爵は、大陸中が戦争で溢れていた時代に活躍し、最後の大戦での活躍が認められて戦爵という爵位を新たに創設して叙された。

 その大まかな職務こそ定められているが、戦爵に叙されてからは平和が続いたため戦爵としてなにかを成したという公式の記録は存在しないのだ。


「まともな前例がないのならば、新たに前例を作るしかない。よって、私の判断でこの職務を戦爵に任せるのだ」


 マジ面倒です。

 もしかして、これからもあれこれ理由つけて仕事を押し付けるつもりじゃないのか?

 それは絶対嫌だぞ?


「乗りかかった船ですのですし、本を正した原因が私にも多少はあるので今回は承りましょう。しかし、褒賞の件がある以上、今回だけですよ?」

「うむ。いいだろう。戦時を除き、戦爵自身の問題以外ならば、戦爵しか出来ぬ仕事を除き領地の運営以外の仕事は候補から外そう」


 姉婿なのでどうしても俺以外に出来ないことは協力すると約束したが、それ以外の俺でなくとも出来る面倒な仕事を押し付けられない権利ってのを戦争で活躍した褒賞としてもらったはずなのだ。

 戦爵という爵位を与えられるというのは、いわば抜け道ってやつだな。

 姉貴に会いたくないってのもあったが、それをわかっていたから王都には来たくなかったんだよ。

 爵位を与えるのは褒賞の副賞的な褒美であって、仕事を与えるわけではない。

 あくまでも戦爵という褒美をを与えた結果、どうしても仕事が付随してしまうだけなのだ。

 こういうやり取りは騙される方が悪いので、褒賞をもらう時にそこまで考えなかった俺が悪い。

 だから戦爵に叙された以上は、最低限の仕事はするさ。

 断りゃもっと面倒になるのは目に見えてるもの。


「その言葉を聞いて安心いたしました。そうであるならば、此度の一件は無事に解決して見せましょう」

「うむ。戦爵の活躍に期待する」

「かしこまりました」


 さて、面倒だけどお仕事の時間だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ