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第4章:国家の防壁と非課税の神殿

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/08
財務省の地下資料室。歴史の深淵へと吸い込まれるような重たい足音と蛍光灯の低いハムノイズのなか、キャリア官僚と補佐官は、国家の資産運用政策をまとめた法規集と民間の投資信託のデータを見つめていた。
世間の個人投資家たちは、NISA口座を通じたインデックス投資に国家の手厚いバックアップや安心感を見出している。しかし官僚は、金融商品が「自己責任」の領域に属する以上、政府が直接的な現金給付や損失補填を行うことは法制度上あり得ないと冷徹に切り捨てる。国が用意した唯一の武器は、税制を免除して国民の資金を誘導する「NISA」という名の非課税の神殿にすぎない。
しかもその神殿の門をくぐれるのは、デリバティブを駆使した投機的なファンドや毎月分配型、短命な商品を冷徹に排除した「長期・積立・分散」の王道な器だけだった。
個人のミクロな資産形成を綺麗に整える一方で、国家レベルのマクロな経済危機や構造的歪みを支えるには、このお行儀の良い非課税の防壁だけではあまりにも無力である。制度の検問所が厳格にデリバティブを弾き出すその裏側で、国家の未来を揺るがす「全く別の歯車」をいかにして回すのか――。冷え切った地下資料室の闇の中で、二人の男は国家の運命を左右する新たな企図の扉を開こうとしていた。
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