第70話 よそ者が来た村
この町には、見慣れない男が一人滞在していた。名は佐倉。都内の大学で歴史学を専攻する、30代半ばの准教授。眼鏡の奥の瞳は、知的好奇心に満ち、どこか傲慢な光を宿している。
佐倉の専門は、都市伝説や地方に埋もれた伝承の研究だ。彼は、この町の古い伝承に隠された「歴史の真実」を見つけるという野心に燃えていた。
「これは、世紀の大発見になる。歴史学の常識を覆す、偉大な発見だ」
彼は、町の古道具屋の店先で、老店主と話し込んでいた。
「この町には、古くから伝わる水にまつわる言い伝えがあるそうですね。水時計とか、巫女とか」
「……さあ、そんなもん、聞いたこともねえな」
老店主は、目を合わせずに、煙草の煙を吐き出した。その言葉には、明らかに嘘が含まれていた。町の住人たちがこの話題を避けていることを、佐倉は知っていた。それが、彼の好奇心をさらに掻き立てる。
佐倉は、図書館や郷土資料館で、古い戸籍簿や新聞の縮刷版を読み漁った。そこで、亮介が失踪した年に、この町に滞在していたらしい、彼の祖父・源三郎の記録を見つけた。
「源三郎という男は、一体何者なんだ…?」
彼の調査は、やがて田辺家へと辿り着いた。 「田辺家……和子……亮介…」 佐倉は、点と点だった情報を線で結びつけ、一つの結論に達した。 「これは、単なる伝承ではない。現実に、人が犠牲になっている」




