銀髪の剣士
夕暮れの草原。
巨大なクレーター。
そして、
完全に固まっているフィア。
……終わった。
絶対怪しまれた。
というか、
あれを“普通の魔法”で押し通すの無理だろ。
「ユーマ……」
フィアがゆっくり口を開く。
赤い瞳が、
真っ直ぐこちらを見ていた。
「今の、何?」
「えーっと……」
どうする。
神権です、
とか言えるわけない。
でも黙ってても怪しい。
脳内で高速会議していると、
フィアがクレーターへ視線を向けた。
「空間系……?」
「へ?」
「でも違う……時間停止にも見えた」
めちゃくちゃ分析されてる。
この子、
思った以上に戦闘知識あるな?
「複数属性の複合魔法……?」
フィアはぶつぶつ呟いている。
助かった。
なんか勝手に難しい方向へ考えてくれてる。
俺は全力で乗っかった。
「そ、そんな感じ」
「そんな感じで済ませる魔法じゃない」
ですよね。
フィアはしばらく黙っていた。
やがて。
「……秘密にする」
「え?」
予想外の言葉だった。
「ユーマの力」
フィアは真顔で言う。
「知られたら面倒」
「……いいのか?」
「高位魔法使いは珍しい。利用される」
その言葉には、
妙な実感があった。
たぶん、
フィア自身も色々見てきたんだろう。
「だから隠した方がいい」
「……ありがとな」
そう言うと、
フィアは少しだけ視線を逸らした。
「別に」
ツンだ。
ちょっと分かりやすい。
その後、
俺たちは薬草採取を再開した。
ただし。
「……めっちゃ見られてる」
フィアがさっきより明らかにこっちを意識している。
ちらちら見る。
何か言いたそう。
でも聞かない。
なんだこの空気。
気まずいような、
そうでもないような。
「ユーマ」
「ん?」
「戦い方、変」
「変?」
「慣れてない」
ギクッ。
「普通、魔導師は距離を取る」
「あー……」
完全に初心者なのバレてる。
まあ実際、
今日異世界来たばっかだし。
フィアは薬草を摘みながら続ける。
「でも迷いがない」
「そうか?」
「魔物が来た瞬間に動ける」
それは。
多分、
事故の時と同じだ。
考えるより先に身体が動く。
俺は少しだけ苦笑した。
「昔から体が勝手に動くタイプなんだよ」
「変」
また言われた。
でも、
フィアは少しだけ笑っていた。
初めて見た。
かなり微笑みに近い、
小さな表情。
その時だった。
ドクン。
右手が脈打った。
「っ……!」
急激な熱。
紋章が光る。
頭の中に、
大量の情報が流れ込んできた。
「な、なんだ……!?」
視界が揺れる。
文字。
知らない言葉。
力。
法則。
――第一制限解除。
声が聞こえた気がした。
次の瞬間。
視界が元に戻る。
「はぁ……っ」
息が荒い。
フィアが驚いていた。
「大丈夫!?」
「あ、ああ……」
右手を見る。
紋章が、
少しだけ変化していた。
線が増えている。
嫌な予感しかしない。
すると。
頭の中に、
突然“理解”が生まれた。
「……解析」
自然に言葉が出る。
その瞬間。
フィアの頭上に、
半透明の文字が浮かんだ。
《フィア・ルークス》
種族:人間
年齢:17
戦闘技能:A
魔力適性:A
剣術適性:S
状態:軽度疲労
「うおっ!?」
何これ!?
ゲーム画面みたいなの出た!
フィアがびくっとする。
「な、何!?」
「あ、いや!」
見えてないのか?
俺だけ?
再び集中すると、
今度は周囲の情報まで流れ込んできた。
草の種類。
地面の状態。
空気の流れ。
魔力反応。
全部分かる。
「……これ、《解析》か」
スキル。
本物の。
どうやら神権の影響で、
普通じゃない性能になってるらしい。
チート臭がすごい。
その時。
《警告》
突然、
視界に赤い文字が浮かんだ。
《敵性反応 接近中》
「……え?」
直後。
森の奥から、
巨大な咆哮が響いた。
「グオオオオオオッ!!」
空気が震える。
フィアの顔色が変わった。
「嘘……」
彼女が剣を抜く。
「なんだ!?」
フィアは険しい顔で呟いた。
「上位種.....!」




