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貞操逆転世界でお金のためにホストになったら、神様が生んだ『子』と呼ばれるようになった  作者: 普通


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5/9

田中美晴Side

私は別にホストに興味はなかった。


そんな私が今はホストクラブの前に立っている。



「はぁ…入るしかないわね」





私がホストクラブに立っているのは…予約をしてしまったからだ。


普段の私であればホストクラブに予約をしたりしない。というか本当に興味がなかった。周りの女子は「ホストクラブって最高!」とか「男の子っていいわ」なんて言ってるけど、私としては別に男に囚われる必要性などないと考えている。


確かにこの世界で男は貴重な存在だ。




それは人類の比率を見れば誰が見ても明らかで、優遇されるのは分かる。これから種が反映していく上で男の存在は絶対に必要だし。


だけど、私自身は別に男と結ばれたいとか、男と結婚したいとか思ったことはない。だからこそホストクラブに行きたいとも思わない。



だったら尚更、今の状況が理解できないはずだ。




簡単に説明するとすれば酒に酔って予約してしまったのだ。


飲み会に同僚と参加した時にどうやらホストクラブに話になったらしく、その時に勢いで予約した。



すぐに気付いていればキャンセルの電話をしたが、これに気付いたのは数字時間前。さすがに今からのキャンセルは店に迷惑もかけることになる。ホストクラブに興味はないが、これからの人生を生きていく上でホストクラブに行ったという経験は別にそこまで悪い方に働かないだろう。





ということで仕方なく、ホストクラブに来た。








覚悟を決めてホストクラブに入ると最初に視界に入って来たのは中肉中世で笑顔を浮かべている男だった。見た目だと高校生ぐらいで黒髪、あどけなさを残すような感じ。



「今日はいらしていただき、ありがとうございます」



「うん」


内観は本当によく出来ていて、高級感あふれている。ここの予約する時に使った金額を考えるとそれに見合った場所と言えるかもしれない。


そしてこのホストクラブはどうやら完全予約制で1人ずつらしい。辺りを見渡しても座れる場所も少ないし、私以外の客がいない。




すると目の前の男が名前の確認をしてきた。



「田中様でお間違いないでしょうか?」



「そうよ」



「では、ご案内します」


慣れた手つきで席まで案内して、男は私の隣に腰を下ろした。男





「僕はテツと言います。改めてお名前を伺ってもいいですか?」



「田中美晴」



「美晴さんとお呼びしても良いですか?」



「構わないわ」



「ありがとうございます。では美晴さんとお呼びしますね」


今まで男と話したことは片手で数えられる程度しかない。それなのに目の前の男はどんどん距離を詰めてきて、名前で呼ぼうとして来る。別に拒否感はないが、ここまで詰められると少し引いてしまう。


ホストになれているような客であれば、引いたりしないんだろうが。



「差し支えなければ、美晴さんはどんなお仕事をしているんですか?」



「…アパレル関係のお仕事を」



「そうなんですね。どのくらいされているんですか?」



「5年ぐらい」



「5年もですか。すごいですね、一つのお仕事を5年間も続けるなんて、僕にはできそうにありませんよ」


今まで褒められたことがないわけではない。上司からも「あなたに仕事を任せておけば大丈夫ね」と言われることもあったりする。


でも、その時は別に何とも思わなかった。





それなのに今、テツというホストに褒められて体の温度が上がった気がした。男という存在への認識を少し変えざる負えないかもしれないとは思っている。


こんな風に純粋に褒めてくれるのは嬉しいものだ。仕事に対してはそれなりに熱量を注いで取り組んできた。そのことに対して仕事関係者以外で褒めてもらえるのは初めてだ。




「美晴さんがしっかりとお仕事に向き合って取り組まないと続かないと思います。そういう方を始めてのお客さんと迎えられたことは本当に嬉しいです」



「……褒めるのが上手ね」



「そうですかね。僕は考えていることを言葉に出して説明するのがあまり得意ではないので、美晴さんに伝わったのならよかったです」


男ってもうちょっと強引だと思ってた。


こんなに優しい笑顔を浮かべるものだとは知らなかった。別にこれからもホストクラブに行こうとかは思わないけど、今日来た事は後悔していない。


でも、このまま褒められ続けると恥ずかしいって気持ちが顔に出てしまいそうなので話題を変えることにした。


「私の話だけじゃなくて、あなたの話を聞きたいわ」



「僕の話ですか?」



「ええ」


単純にこの子のことが気になる。テツという彼はどんな生活を送っているのか、どんな子なのかを知りたい。



話している感じである程度は察しが付くものだけど、本人の口から語ってもらわないと分からないことも多い。




彼は意外と乗り気なようで「わかりました。ではどんな話をしましょうか」と言ってくれた。



「どんな話でもいいわ。あなたの話であれば」



「では…どんな話をしましょうか……」


彼は少し考える素振りを見せてから話し始めた。





内容としては彼の普段の日常。家事のことや高校での出来事、妹たちと喧嘩した時の事などで、私としてはとても興味深かった。私はもちろんこの世界に女として生を受けたので、男がどんな気持ちで生活しているのかを知る機会はなかったから。


それに何より話している時の彼はとても楽しそうで、人生を楽しんでいるのが伝わって来た。





だから自然と話を聞いていると口角が上がって来た。下手したら友達の相談よりも真剣に聞いたかもしれない。別にすごい話が上手いわけではないけど、話している時の彼がいいのだ。


彼にはこのまま笑顔で過ごして欲しいと思わさせられる。




「あなたの話は聞いていて楽しいわ」



「そんなことはないと思いますが、少しでも伝わったのであれば良かったです」



「伝わったわ」


あなたが良い人なのはね。この世界の男は女に対して多少なり嫌悪感を抱いている者がほとんどだ。私が今まで会ったことがある男たちもそうだった。


あそこまで嫌悪感を全面に出されるとこっちも関わろうとは思わない。それでも友達の中にはアタックしにいく人もいたけど。私はそんな気持ちになれなかったのが正直なところ。



でも、隣の彼はやっぱり違う。私と話していても嫌悪感をまるで出さないし、何より私と普通に話してくれている。それに節々に私のことを楽しませようと頑張っているところも見え隠れして、本当に良い子なのが伝わる。



少しだけだけど、同僚がなぜあそこまでホストに通っていたのかが分かった気がする。


「美晴さんが聞き上手で話し過ぎてしまいましたよ」



「…いや、あなたの話がうまいのよ」



「ありがとうございます」


この子は何でも自分ではなく、私のお陰にしてくれる。それは私がお客で彼がホストという関係上は仕方にないことだとは理解しているけど、それでも私は譲らない。





急に彼が「美晴さんはとてもキレイですね」と言い出したので、一瞬返答に困ってしまったけど、なるべく顔に出さないようにした。



「…そうかしら」



「はい、キレイですよ。美晴さんみたいな美しい方と話す機会はあんまりないので、こちらの方が緊張してしています」



「ほんとに言ってる?」



「本当に言っていますよ。僕は嘘を吐くと顔に出やすい人間なので、初対面の美晴さんでも分かっちゃうと思います」



「…そう。ありがとう」


この人はなんでこんなに恥ずかしがらずに褒められるの。こんな純粋な男がいるのかと疑いたくなる。目の前にいるのに。


この子、こんな感じで日常生活も送っていたら絶対にいつか何かしらの犯罪に巻き込まれそう。ここまで女に対して拒否感や抵抗感がなくて、顔立ちも可愛いし、この世の女であれば誰でも手に入れたいと思ってもおかしくないような存在。







その後もたくさん話して、彼についての理解が深まった。


普段よりも時の流れが早過ぎて、時間を確認した時は素直に驚いた。感覚的にはまだ10分ぐらいしか経っていないぐらい。




奥から女が出てきて、その女に料金を受け渡すとまた奥に消えていった。たぶん、あの女がこの店のオーナーといったところか。



このまま帰ろうと思っていると彼は私の目を貫くように見てきた。

「美晴さんのようなキレイな方とお話できてとても楽しかったです。よろしければまた来てください。僕は美晴さんのことをお待ちしていますので」



「…そう。気が向いたらね」



私は顔が赤くなっていくのを自分でも感じたので足早に去る事にした。









ホストクラブを出ると外気は少し冷たかった。まだ冬にはなっていないものの、少しずつ冬が近づいていくのを感じさせる。



「はぁ…また来よう」




別にホストにハマったわけではないが、あんな可愛すぎて危険な男を野放しにしておくわけにもいかないからな。




自分の中でそう結論付けて、私は帰路に付くことにした。家までの時間は今まで感じたことがないような高揚感に包まれていた。

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