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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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202/217

お互いの切り札

 だけど手持ちの上級魔人は残り一体。


 ここで使えば無くなってしまう。

 あれほど苦労して倒した上級魔人を。


「デスファイヤ!」


 黒い炎が飛んでくる。

 俺は足のズキズキと響く痛みを我慢しながらかわした。


「結構逃げやがるなコイツ。だったら逃げられないように囲ってやる」


 俺の足元一帯に次々と魔法陣が浮かび上がってきた。

 俺はポーチから青色のビー球を取り出して、赤い鎧の魔者に投げつけた。


「なんだそりゃ」


 魔者は片手で払い除け、ビー球が砕かれる。

 中から現れた光の塊が下級魔人へと変わった。


「グオアアアアアアアア!!!」

「げっ! そういうことか!!」


 魔人の地面を抉る一撃を魔者はかわし、黒色の炎を放った。

 それと同時に、俺の足元に広がっていた魔法陣が全て消えた。


「やはり同時に魔法を使うことは出来ないってことか」


 複数の魔法を同時に使いこなすゼロは、意外と凄かったってことだ。


「ぬん!」


 見ると、掛け声と共に最初に出していた魔人のうち、最後の下級魔人がフォルゲートによって両断されていた。


 魔者も下級魔人をすぐさま処理して、注意をこちらに向けている。

 これで状況はまたしても2対1。


「貴公の片足が潰されていることは、我にとっての好機であるようだな」

「俺のおかげですよフォルゲート様!」

「違いない。ヤシロミナトを殺したのち、褒美をやろう」

「やったぜ!」


 フォルゲートが巨大斧を肩に担ぎ、魔者が魔力を練り始める。

 中級魔人を出してもフォルゲートの前では有象無象かもしれない。

 それなら、出し惜しみはなしだ。

 上級魔人に魔者を処理してもらい、その後こちらの2対1でフォルゲートを倒す。


「この状況、こちらが圧倒的に有利であるが、それでもヤシロミナトは魔人を使役してくる。まだ何か隠しているやもしれぬ故、こちらも魔人を用いらせてもらおう」

「いいですね!」

「………………なんだと」


 この状況で更に魔人を出してくるとか、どんだけ用心深いんだよこいつ!

 こっちは下級魔人はそれなりに数があるけど、中級も数体、上級は1体しかいないんだぞ?


「貴公はビー球から魔人を召喚しているが、本来の魔人はこのように四角形の形をしている。これを砲台にセットする事で遠くまで放つことも出来る」


 フォルゲートが取り出したのは、ビー球ほど小さくはないが、手に収まりきるほどのキューブ型の物体。

 つまり奴らはこのキューブ状のものを何かしらから射出することで、ソウグラス大陸の時や今回の時のように流星として魔人を送り込んでいたんだ。


 そしてフォルゲートが持っているキューブの色は…………赤だった。


 嫌な予感しかしない。


 赤色にいい思い出なんかない。


「では行くぞ」


 フォルゲートが手をグーの形にし、キューブを殴るようにして押し当てた。

 よく見ると中指に指輪が嵌められており、それにキューブが反応しているようだった。


 キューブが鈍く光った瞬間、赤い煙がキューブから吹き出し、そのまま形を彩ったかと思えば、その場には本日2度目の上級魔人が現れた。


「くそっ……!」


 俺もすかさず赤いビー球をポーチから取り出して地面に叩きつけた。

 光の塊が上級魔人と変貌した。


「何だよお前も持っていたのか」

「やはり侮れぬヤシロミナト。上級魔人すらも使役するとは。ではこちらも2体目、3体目と出して行くべきか?」


 う、嘘だろ!?

 追加で上級魔人を出されたらさすがに……!


「狼狽えているな? 既に気持ちで負けている貴公に、勝機はない」

「はっ、狼狽えてなんかねーよ。どうやってこの状況を打破すべきか、計算してるところだ」


 強がりだった。

 切り札の上級魔人を召喚したにも関わらず、以前として状況は変わらず不利のまま。

 それどころか、向こうには更に魔人が控えている可能性すらある。


 絶望的だ。


 だけどそんなことで俺の心は折れない。

 もっとヤバい状況はこれまでにもあった。

 例えば、スサノ町で初めて中級魔人と出会った時とかだ。

 あの時も死ぬ一歩寸前だったけど、覚醒したシーラに助けられた。


 凛々しく、それでいて美麗に中級魔人の前に立ち塞がるシーラ。

 あの姿に俺は心底惚れた。


 俺はもう一度あの姿を見るために、生きなければならない。


「やってやろうぜ。何度だって俺は生き残る」

「デザイア、貴公は遠距離から魔法で攻撃しろ。我と魔人が詰める」

「了解でさ!」


 ゴウッ!!


 俺とフォルゲート達を阻むようにして豪炎が立ち込めた。


 距離を詰めさせないつもりか……!


「…………何をしている。これでは我も近づけないではないか」

「い、いや! 俺はまだ何もしてないですよ!?」

「なんだと……? ではこの炎は一体……」


 テトッ。


 俺の隣に人の気配がした。

 まるで足りなかったものが埋められたような安心感。

 俺の視線がゆっくりと隣に移り、そこにいる人物を視界に捉えた。


 …………なるほど。

 赤色は嫌な思い出ばかりじゃないってことか。

 彼女は以前と同じく凛々しく、でもどこか申し訳なさそうな顔をしていた。


「手を貸してもらえるか?」

「ん………………そのために私は来たの」


 そう言って力強く俺の目を見返す彼女。


 やはり俺の隣に立つのは、シーラ以外ありえないんだ。

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