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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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瞬きの結末

【剣聖視点】


 ハボックがいるとすれば、奴は国王の近くだろう。

 魔法を使うことしかできない奴は、まず前線には出てこないはずだ。

 つまり最奥の城へと向かえばハボックはいる。


 問題は城内の警備の層の厚さになるが、これほどの状況であるならば必要最低限の数しか残していないだろう。

 さすがに私一人でどうこうできるとは思ってはいないが、最終的にハボックが殺せれば構わない。


 幸いにも、私には駒が多い。

 この国には『裏』に属するアイツ(・・・)もいる。

 今日という日がこの国の最後となるだろう。


「待て剣聖!」

「バカな……。あの戦力をこれほど早く退けてきたというのか?」


 気付くと背後から避雷神が追いかけてきていた。

 まだ奴らと別れてから5分と経っていない。

 私も決して走る速度を落としているわけではないというのに、これほど恐ろしい奴だとは思いもしなかった。


 これが勇者の弟子か。


「私の邪魔をするな避雷神」

「いいや、邪魔するね。俺はアナタの行いを絶対に許しはしない。電光石火ライズ


 バチッという音がしたかと思えば、避雷神は私の目の前に移動していた。


 思わず足を止める。


「お互いの信念が折れない時、譲れない時、どうすればいいかなんてアナタも分かっているだろう?」

「クク……そうだな。今さら退けだなどと、私も弟子に対して少々情があったらしい。仮にも私は『剣聖』と呼ばれている者。敵が立ちはだかるならば、どのようにしてきたかなどと再確認するまでもない」


 弟子如きから逃げてばかりだったな情けない。

 歳を取って私も耄碌としたか。


 若い頃は血気盛んであった筈だが、いつからか挑戦者としての自覚が無かったようだ。


 恐らく、全てにおいて避雷神は私を上回っているだろう。

 それは例え全盛期の時の私であったとしてもだ。

 様々な剣技を織り交ぜても、コイツには届かない。

 長引けば長引くほどに私はコイツには勝てない。


 ならば勝負は一瞬だ。


 全ての力を込めた一撃を叩き込む。

 奴が対応出来ないような、渾身の一撃を。


「斬るぞ。避雷神」

「斬られるのはアンタだ。剣聖」


 私は剣を抜き、両手で構えながら剣先を避雷神へと向けた。

 地の足に力を込め、膝を折り曲げてクッション性を持たせる。

 攻撃の構えは一の剣技神速。

 しかし、敵を斬るのではなく突く構え。

 振りかぶって斬るよりも突く方が早いに決まっている故、この数年で新たに形とした避雷神の知らない剣技。

 一の剣技神速・改とでも名付けようか。


 次の連撃に繋げられないのが欠点だが、関係ない。

 この一撃で決めるのだからな。


 斬ると言っておきながら突くのは情けないことこの上ないが、そんな恥などとうに捨てている。

 剣士としての私は遥か昔に死んだのだから。


 避雷神も剣を抜いた。

 向こうも同じく神剣流の構え。


 ジリジリと間合いが近くなる。


 お互いが一歩で斬りかかれる間合いまで。


 そしてその時が来た瞬間、私は己の身体に脳が命令するよりも早く、反射的に身体を動かした。


 避雷神も同時に動き出す。


 奴も同じ神速だ。


 ならば身体能力に差があろうと、突く方向にシフトした私の方が速い。


 勝った。


 避雷神と交錯した。


 お互いそのまま通り過ぎる。


 ………………通り過ぎる?


 バカな。

 突いていれば通り過ぎるはずなど…………。


「さらば……剣聖」


 ブシュウウゥゥゥ!!


 赤い血が私の脇腹から噴き出していた。

 そして遅れてくる激痛。


 斬られている。


 ザックリと身体の中心まで切り込まれている剣の傷。


「バカ……な……。これほどまでに……差があるのか……?」


 私はそのまま力が抜けたように仰向けに倒れた。


 血がドバドバと流れ出ている。

 熱く感じる傷口と、寒くなりつつある身体の変化に戸惑う。


 死ぬのか私は……。


「わ……私はまだ…………復讐を果たしていない……。志半ばで死ぬことなど…………許されぬ……」

「剣聖…………」


 避雷神が憐れむような目で見下ろしてきた。


 やめろ。

 私をそんな目で見るな。


 私は………………私は…………!



 …………なぜこんなことをしている?



「私が…………無関係の人を…………殺した……?」

「何を今さら……。俺がどんなに進言しようともやめるつもりはないと言っていただろう」


 いや……最初は私もハボックだけを狙いに絞っていたはずだ…………。


 いつからだ……一体いつから…………!




 そうか……。


 そういうことか……。


 私も結局は奴の手の平の上で遊ばれていただけか。


「やってくれたなガルムめ…………!」

「ガルム…………?」


 私には闇魔法を使わないと言っておきながら……その実、奴は私に…………!


 クク…………気付くのが遅れたな。

 今さら、人々を殺した事実は無かったことには出来ない。


 取り返しのつかないことをした、か。


「…………避雷神」

「何だよ」

「…………ガルムには……気を付けろ」

「それはどういうーーーーーー」


 避雷神が何か叫んでいるが、耳が聞こえなくなってきた。


 死が近づいてきたか。


 人生の終わりなど、なんと呆気ないものだろう。


 ハボックを殺せなかったことが心残りではあるが…………悪いことばかりではなかった。


『待ってたぜツォルク』


 …………クク。いよいよか、死人が迎えに来るとはな。死神気取りか?


『俺達のせいで、随分と生きづらい人生を送ったみたいだな……すまない』


 謝る必要などないだろう。私達は親友なのだから。


『さぁ疲れたろう。行こうぜ、みんなが待ってる』


 そうだな……少々…………疲れ…………。

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