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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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再び相見える

「雨…………?」


 地下シェルターから外に出ると、突然ポツリポツリと雨が降ってきた。

 いや、降り落ちた雨粒が花のような形になっているから、これは多分魔法だ。


 火の手を上げているこの状況で、敵が水魔法で火を搔き消すとは思えないから、これは味方の魔法だろう。

 これほど大きな範囲魔法ということは魔術級か魔導級魔法だろうか。

 いずれにせよ、ナイスプレーだ。


「被害が大きいのはどこだ……?」


 依然として三方向から衝突音、爆発音は聞こえてくる。

 強いて言うなら正面の正門付近が一番戦闘が激しそうか。


 俺はすぐに駆け出し、正門方向へと向かった。

 その道中、見覚えのある人が味方であるはずの兵士を斬りつけているのを見つけた。

 あれはそう、確か三龍将の一人フレニアルだ。


「フレニアルさん!」

「ん? やあ少年。入隊して直ぐにコレとは、君もツイていないね」


 彼女は血に濡れた剣を払うかのように一閃した後、剣を納めながらこちらへ微笑んだ。

 トレンチコートのような服を身に纏っている彼女は、とても仕事が出来そうに見える。


「ツイてないことには定評があるのは自負してますが……。この人は味方の兵じゃないんですか?」


 既に死んでいる兵士を指差して聞いた。


「そのはずだったんだけど、どうやら私達の軍にも裏切り者が紛れ込んでいるらしい。2代目勇者に惚れ込んで『裏』へと流れた奴らだろうね。見たまえ」


 そう言ってフレニアルは足で兵士を蹴飛ばして仰向けに転がした。

 かなり歳のいった男だった。

 それ以前に鎧が普通の人達よりも金装飾が多い。

 胸の所にも勲章のようなものがついている。


「これは…………?」

「彼は五天羅と呼ばれる階級にいた人物だ。私達の一つ下、軍で言うナンバー2の階級職だね」

「……っ! そんな階級の人ですら裏切っているということですか!?」

「残念なことに。捕縛程度に留めておいて事情を確認したかったけど、彼の実力とこの状況では難しくてね、殺すしかなかった」


 単純な戦力差。

 それに加えて内部からの裏切り。

『裏』へと流れた兵士がこのタイミングで行動に移すということは今回の件、魔王ベルファイアだけの仕業ではないということが判断できる。


「『裏』と魔族による国境付近の国に対する侵攻……。対応に追われている所に本国に対する魔族の攻撃……。そして『裏』による同時奮起。これらが示す意味、ハボックを言い負かした少年なら察しがつくだろう?」

「『裏』と魔王ベルファイアは手を組んでいる……!」

「その通り」


 魔王ローズフィリップを討伐した時、現れたのは魔王ベルファイアの軍勢だった。

 その段階でガルムが魔王ベルファイアと何かしらの盟約を結んでいることは理解できた。

 でもそれは魔王を討伐するための、ガルムの一計なんだろうって勝手に思っていた自分がいる。


 《骨喰い》はちょっとヤバい奴だけど……《空ノ神》や《魔女》といった人達が人類に対して牙を剥くとは思えない。


 だけど今回の動きを見る限り、『裏』が絡んでいるのは間違いない。

『裏』の全てをガルムが管理しているのか。

 それとも『裏』とはただの烏合の集で、ガルムが関わっているのは【怪童】のみなのか。


 俺が気にすべき重点はそこだ。


「私はこれから一人で行動する。いくら私と言えど、背後から斬りつけられれば防げないしね。もしもドット龍将やハボック龍将に会えたなら、この状況を伝えてもらってもいいかな?」

「……分かりました」


 そう言ってフレニアルは走って行ってしまった。


 味方も味方とは限らない。

 俺も一人で戦ったほうが良さそうだ。


 雨足が強い。

 視界が多少なりとも悪くなる。

 あまり雨の中での戦闘は経験がないから、より一層周囲に注意しなければ。


 と、戦闘区域に入った俺は崩れた瓦礫の上に立って周囲を見回した。


 すると、近くの瓦礫の所で男が一人立っているのが見えた。

 一見して兵士という風には見えない。

 かと言って魔者でもなさそうだ。

 一般の人だろうか。


 だが、その男は腰から剣を抜いた。

 正しく言えば抜いたように見えた。


 刀身が全く見えないんだ。


 瓦礫に向かって何を…………子供か?

 子供が瓦礫に埋まっているのか?


 次の瞬間、男はしゃがみ込んだかと思うと、剣を子供に突き刺す動作をした。

 いや、突き刺したんだ。


 殺した。

 殺しやがった。


「あんた…………何をやってんだ……!?」


 俺は男に対して大声で怒鳴りつけた。

 男がゆっくりとこちらを向く。


 雨の音が一瞬聞こえなくなるほどに、息を呑んだ。


 あの男を俺は知っている。

 なぜ刀身が見えないのか、その意味も俺は知っている。


 短い期間ではあったけど、俺に剣を教えてくれた師匠。


「何をしてんだって聞いてるんだよ!!」


 俺は確かめるように再び怒鳴りつけた。

 俺の何かの見間違いであると願うように。

 今回の事件も、『裏』へと流れた新参達が勝手にやっていることなんじゃないかと思っていたように。


「剣聖!!」


 確定してしまった。


 ガルム達は、人類に仇なす存在であるのだと。

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