乗船拒否
「え! 船に乗るのにそんなに金いるの!?」
「当たり前だろ。大陸を一つ移動するのにたったの50万Mで足りるかよ」
現在俺達は船着き場にて、サンクリッド大陸行きの船に乗り込もうとしていたが、ここにきて金銭的問題が発生していた。
まさか50万あって足りないとは……。
ソウグラス大陸から移動する時は足りたんだけどなぁ。
ちなみにアクエリア大陸の金銭価値は、ソウグラス大陸よりも低い。
1D=5Mぐらいの差がある。
ちなみにサンクリッド大陸の通貨はSと呼ばれ、MとSは同価値となるらしい。
と、そう考えれば、50万Mはソウグラス大陸では25万Dになるのか。
微妙っちゃ微妙だ。
「それにしても一人100万Mってエグくね?」
「そうはいっても、こっちだってそれぐらい貰わなきゃ割に合わんのだよ。航路の途中にだって魔物は出る。それを討伐してくれる討伐隊も雇わなきゃならんしな。しかもそっちの女の子、それ魔者だろ」
「おうよ。それが何か?」
「何かもなんもあったもんじゃねぇ。魔者は特別許可証がなければ乗せらんねぇ決まりだ」
「うそぉ」
確かにアイラは魔者だ。
海色のようなブルーの髪をしている。
可愛らしい耳もついてる。
でもソウグラス大陸からサンクリッド大陸に移動する時は、シーラは全然平気だったぜ?
「あ、あれか? 奴隷とかならオッケー的な?」
「え? 私、奴隷扱い?」
「奴隷でもダメだ。俺達は奴隷の移送なんてやってねぇ」
ケチィ。
頭の固いお役人みたいな奴だな。
だがしかし、ルールを守らない奴というのは俺も許せない。
列の割り込みとかする奴ね。
もう全部の爪の隙間に爪楊枝を差し込んでやりたい。
だから無理を言って乗せてもらうのはやめにしよう。
「じゃあ、その特別許可証とやらはどうやったらもらえんの?」
「国が発行してるものになるからな、ここから一番近いのは……まぁ無難にミラージュ王国に行った方がいいな。そこがこの大陸全ての交通権を発行してたりするし」
ミラージュ王国。
知ってる、知ってますとも。
世界三大国家の一つでございますよね。
3代目勇者グリムの生まれ故郷でもありんす。
「ここからどれくらいかかるんですか?」
「ああ? 魔者が俺に口を利くんじゃねぇよ」
唐突にカチンと来る言葉吐きやがったなこいつ。
「おっと手が滑った」
「ぎゃあ! 剣を落とすな! 危うく足が串刺しじゃねぇか!」
お前だって口を滑らしてるんだ。
おあいこだろうが。
「で、ここからどれぐらい?」
「……徒歩で3ヶ月。クラリスに乗ったら1ヶ月ってところだろう」
「なるほど。クラリスって何?」
「2足歩行の大きめの鳥みたいなやつだよ」
アイラが答えた。
ダチョウみたいなやつかな?
なんかすぐに連想できた。
「ミラージュ王国に行けば、魔者の乗船許可が降りるってことでいいんだよな?」
「ちゃんとした理由があるならな」
「だってさ。ちゃんとした理由ある?」
「えー私が考えるのー……?」
そんな露骨に冷たい目で俺を見ない。
興奮しちゃうだろ。
ま、なにはともあれミラージュ王国に行かなきゃ話が始まらないわけだ。
乗船料は足らんかったけど、旅のための資金としては十分すぎるほどあるんだ。
クラリスに乗ってもいいし、徒歩で向かってもいい。
某冒険ゲームのようにたらい回しにされてる感は否めないけど、無理な近道より楽な遠回りだ。
「ここで数日休んだら、ミラージュ王国に向かうか」
「はーい」
俺達は船着き場を離れ、街の中へと進んでいった。




