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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔王シルバースター編

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割り切った戦い

「お前のように生意気な人間を、私は幾千人葬ってきたと思っているのかしら?」

「伊達にババアじゃないってことか」

「口の減らないガキね……!」


 さっき自分でババアアピしてたし、煽り耐性の低いこと低いこと。

 頭に血が上れば思考は一辺倒になる。

 直情的になればなるほど戦いは有利に傾く。


「私には……大量の奴隷がいるのよ。それを全部防げるとでも?」


 オールムーンが指をパチンと鳴らすと、様々な物陰から人間の奴隷が湧き出てきた。

 近くに穴のような所があるため、もしかしたら奴隷達は地下で待機させられているのかもしれない。


「弾けて死ぬか、私の奴隷となって僅かな命を先延ばしにするか、選びなさい」

「弾けて死ぬ方で。ただし、お前がだけど」

「さようなら。『爆人弾形ボムドール』」


 一斉に奴隷がこちらに向けて走り出す。


 スプライトとウーリーは既に距離をとっているため、巻き込まれる心配はない。

 シーラは…………燃やす気満々だな……。


 奴隷の人達には申し訳ないけど、助けてあげることはできない。


 俺は勇者じゃないから。


 自分がこの世界を生きていくのに精一杯なんだ。


「シーラは少し離れてていいよ」

「何で? 私も戦う」

「アイツの度肝を抜いてやるんだよ。自分は安全な位置から他人の命を使うなんてこと、やめさせてやる」

「…………大丈夫?」

「大丈夫さ。今までとは覚悟が違うんだ。ただ一つだけ、合図したら使徒のところに最速の炎魔法を使って」

「…………分かった」


 シーラは渋々、といった感じだが俺から離れていく。

 シーラの炎魔法を使えば楽だろう。

 一瞬で奴隷の人達は灰になる。


「でもそれじゃあ…………俺の気が収まらないんだ」


 そう、ただの自己満足さ。


 直近まで来た奴隷達が発光を始める。

 俺は最大魔力を雷に変換させ、身に纏うように放出させる。

『避雷神』だ。


「死ね!!!」


 オールムーンの声と同時に奴隷達が一斉に爆発した。

 耳をつん裂くような爆発音、瞬間的に全てを吹き飛ばす爆風、空気を喰らうかのような爆炎。

 衝撃的な爆発が俺を襲った。


 だが、俺に届いたのは音だけ。

 爆風、爆炎は全て俺の手前で押し戻されていく。

 何一つ俺を傷つけることはなかった。


 そんな状況など知る由もないオールムーンは、次々と奴隷を爆破させていく。

 俺の周りは全て爆炎で覆われてしまった。

 それでもなお、俺には煙の一つも届かない。


 物質を問わず、全てを弾く『避雷神』の反則具合よ。

 実戦で実践するのは初めてだけど、思いのほか魔力は持っていかれる。

 ずっと魔力を垂れ流しにしているような感じで、決して燃費が良いわけじゃないけど、それでも魔王と同等のスキルだと思えば、充分にお釣りがくる代物だ。


 爆発音が止み、徐々に爆煙が晴れていく。


 予想しよう。

 間違いなく、オールムーンは恍惚の表情から驚嘆している表情になっていると。


「はぁ………………………!?!?!? な、なぜまだ生きている!?」

「何でだと思う?」

「あの爆発から生き延びて、なおかつ無傷……。何かしらの魔法なのは間違いないわね」

「察しがいいね。伊達にババアじゃないか」

「また言ったわねガキが……! なら私の高位魔法である『爆弾豪裂矛ボムゴーレム』を……」

「シーラ!」


 離れた位置から高密度に纏められたシーラの炎の槍が、空を切り裂きオールムーンに飛んでいった。

 オールムーンが咄嗟に打ち消し(レジスト)しようと水の防御壁を出現させ、炎の槍とぶつかる。

 シーラの高威力炎魔法と使徒の水魔法により打ち消し(レジスト)され、大量の水蒸気が発生した。


 オールムーンの目を眩ませられれば何でもいいと思ったが、ある意味最適な展開となった。


 接近戦に持ち込む。

 そのために最速で駆けて距離を詰める。


 少々距離があっても問題ない。

 水蒸気が晴れる前にオールムーンの元へ剣が届く。


「『爆人弾形ボムドール』!!」


 再び奴隷がこちら目掛けて走ってきた。


「ガキが何かしてくるのは分かってるのよ!」


 でも何をしてくるかは分かってない。

 そうだろ?


 それにこの苦肉の策は悪手だ。

 自分の首を絞めること山の如しだ。


 奴隷達が発光する。

 現在進行形で『避雷神』は使用中だ。

 右手に特に魔力を集中させる。


「飛べ!」


 右手をオールムーンの方向に向けて横に薙いだ。

 奴隷達が磁石で反発するかのように吹っ飛んでいく。

 そしてそのままオールムーンの近くで爆発。


「キャア!」

「可愛い声出るじゃんババア」


 それでも自分の魔法の対処ぐらいできているだろう。

 水蒸気は爆破で吹き飛び、オールムーンの姿が目の前に映る。


「ちぃっ!」

「逃がさない!」


 雷を、磁石の極を反転させるように弾くイメージから吸い寄せるイメージへと形質変化させる。

 さらにそれを『雷鳥』にまで流す。


『雷鳥』は抵抗することなくすんなりと、『避雷神』を纏った。


 そして『避雷神』によってオールムーンの体を引き寄せる。


「な、なんなのこれは!?」

「回避不能の即死攻撃さ」


 グンッと引き寄せられた体は、そのまま突き出された『雷鳥』へと引き寄せられ、そしてオールムーンの身体を貫く。


「ゔああっ!!」

「終わりだ」


 ポタポタと血が滴り落ちる。

 みぞおちからザックリと剣が突き刺さっている。

 間違いなく致命傷だ。


「致命傷……だけど治癒魔法なんか使われたら厄介だし、トドメといこうか」

「ガキめ……! 私が……私が人間なんかに……! 『爆弾豪裂ボムゴー───」


 ドンッ!


 右手に構えていた『獅子脅し』でオールムーンの顔面を撃ち抜いた。

 普通の銃よりも威力が強いこの銃は、人の頭を吹き飛ばすには充分で、オールムーンの頭は弾けて散った。


「奥の手は、最後に使えるから奥の手なんだよ」


 敵に何もさせずに殺しきる。

 理想的なりかただ。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 剣に突き刺さったままの死体に撃ち続ける。

 いくら撃っても、いくら撃っても俺の気が晴れない。

 まるで味のないガムをずっと噛み続けているかのような不快感。


 ドンッ! ドンッ!


「ミナト!!」


 シーラが後ろからガバッと抱きついてきた。


「シーラ…………」

「ミナト……もういいよ。それ以上……イジメないで」


 久々に聞いた「イジメないで」という言葉。

 抱きついているシーラの身体が震えているのが、俺にも伝わってくる。


「ミナトが……変わったみたいで…………」

「何も変わってないよ。さっきも言ったじゃん、ネジが少し外れただけだって」


 倫理観は捨ててない。

 価値観が変わっただけだ。


「とにかく……ベイルの仇は取った。魔王の側近である使徒も倒した。充分すぎる戦果だと思わない?」

「………………」


 何が不満なのか分からんな。

 いやごめん、嘘。

 本当は何か分かってる。

 自分が一番よく分かってる。


 でも割り切った戦い方をすれば、強敵相手でも死にかけることがないことが分かった。

 一方的に蹂躙できると知って、今更元には戻れないさ。

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