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入学

初めて投稿します!

楽しんで読んでいただけたら幸いです!

※あらかじめ「あらすじ」に目を通していただくと、よりスムーズに物語をお楽しみいただけます。

――4月

今日は、「共生特区」の中心地に建つ「常盤(ときわ)学園」の入学式だ。


少しずつ暖かくなってきて、ここ、「共生特区」でも桜が新入生の入学を祝うように咲き誇っていた。


馬車や人力車が行き交う通りを抜けた先に佇む、赤レンガと黒瓦の巨大な校舎。そんな近代的な校舎の前にそびえ立つ大きな門の前に亜麻色の腰まで届く長い髪をおろした少女が佇んでいた。


「わぁ……!思ったより大きい……!」


私、白石柚葉は、今日から通うことになる常盤学園の大きさに驚きながら、校門の前で校舎を見つめた。


「ぜっったいに、バレないようにしないと……!」


そう呟きながら、両手をギュッと握りしめて、気合を入れ直す。


そう、私は、なにを隠そうあやかしの中で史上最強とも呼ばれる、「九尾の狐」の一族の次期当主なのである!


でも、そのことで周りに距離をおかれたくないし……何より、とってもめんどくさい…… !

と、いうことで私は九尾の狐ではなく、ただの一尾の狐、野狐として学園に通うことにした。


ちなみに、妖狐の一族は、尻尾の数が多いほど強くなる。つまり、学園にいる間は最強から最弱になることになる。


まあ、こんな小細工思いつく奴なんて私しかいないだろうな。これでも私、自分が変わり者って自覚はあるもの。


あやかしは、基本的にプライドが高い。だから、わざわざ最強なのに最弱(一族の中で)になんてなる奴なんていないのだ。

つ・ま・り! 誰も私がこの学園に通ってるなんて思わない!髪も瞳も色を変えたし。私、我ながら天才じゃない?


そんなこんなで自画自賛を心の中でしながら、私は門をくぐった。


◇◇◇


「新入生の皆さんは案内に従って掲示板に書かれているクラスに入るようお願いしますー!」


歩みを進めると昇降口らしきところの前に人だかりが見えた。

案内をしている人の声がよく通る。


今そんなことどうでもいいけれど、凄いなと思う。

私、あんまり声通らない方だから…….。


そんなことを考えながら、人と人の隙間から掲示板を覗く。


背、高い方でよかった…….。


自分の背の高さを誉めながら、どうにか文字を読むことができた。


えっと、こっちは入試の点数表かな? こんなの公開されるんだ……。まあ、一位だよね?


だが、そんな期待は、あっけなく打ち破られた。


【入学試験 詳細点数(上位30名のみ掲示)】

一位 神楽 蓮   カグラ  レン  495点  主席

二位 白石 柚葉  シライシ ユズハ 492点  次席

三位 烏丸 鞍馬  カラスマ クラマ 463点

    :


な、なんですとぉぉぉ? この私が2位なんて……。

思わず掲示板を二度見してしまった。


あと、3点だったのに……。悔しい、誰かに負けたことなんてないのに…その辺にいるあやかしなんて瞬殺できるぐらいの力はあるのに……。


あやかしのプライドの高さを無視して妖狐の中で最強から最弱に化けている私がいうものではないと思うが、私にだって一応プライドはあるのだ。


その時、


「そういえば神楽君って子、さっき見たよ!」


勝手に恨んでいる「神楽」という名前に私は聞き耳を立てた。


「めっちゃカッコよかった!人間らしいんだけど、陰陽師一族の次男なんだって!」

「じゃあ、十分狙えるかも…!」


……へえ。顔はいいんだ。まあ、どうせ顔だけでしょ。次は、絶対に勝つんだから……! 覚えてなさいよ。今は弱い見た目してるけど、これでも私は妖狐一族の次期当主なんだもの。あっ、でも権力を振り翳す気はないよ?そこは大丈夫、うん


勝手に心の中で八つ当たりして勝手に突っ込んで納得しながら、私は隣の掲示板をのぞきこんだ。


こっちは…… えっと、クラス分けか。

どうやら、成績一位はA組、成績二位はB組…のように、成績ごとでクラスを決めているらしい。


つまり、私はB組ということだ。


なんか、二位ってことを意識しちゃってやなんだけど……。


そんなことを思いながら渋々案内に従って「1ーB」と書かれた教室の戸に手をかけた。


1ーBの教室に入ると、もう結構な人が教室の中にいた。席順は成績順らしい。

っということは……一番前の右か。


特に話しかける人もいないので、黙って席についた。


「ねえねえ、そこに座ってるってことは成績2位ってことだよね?私の記憶が正しければ白石柚葉ちゃん、だっけ?」


急に、隣の席に座っていた猫耳の女の子に話しかけられた。


おいおい、成績二位っていうな。っていうかよう名前覚えてんな。しかもめっちゃ可愛いな。小動物系だぁ。


心の中で突っ込みながら猫耳の女の子の方を向いた。


「えっと……そうだけど、貴女は?」

「あっ、私はね、猫宮鈴(ねこみやすず)!猫又のあやかしだよ!白石さんは妖狐のあやかし?」

「うん」


猫耳の女の子──猫宮鈴は、ニコニコと笑いながら私の手に何かを載せた。


「隣になった記念に、飴あげる!私、飴好きなんだよね。柚葉ちゃんって呼んでいい?」


隣になった記念とは……?


「いい、けど…、よく名前覚えてんね。得意なの?」


「ありがとー! 別に、名前覚えるの得意なわけじゃないよ。492点で一位の神楽君との差が3点なんて、凄すぎると思って覚えただけ。なんでそんな頭いいの?」


「えっと、ありがとう? でもこの私が一位じゃないなんて…悔しいわ! 次のテストでは、絶対首位奪還してやる!」


「すごいね……私、あんま頭良くないから」


鈴ちゃんはちょっと悲しそうに言った。


「そんなことないんじゃない? 猫宮さんの席だったら……学年34位かな?結構いい方だと思うけど。だってこの学校、基本的には1学年45人×4クラスで180人でしょ?」


「んー、順位的にはそうかもしれないけど…… 私、一応猫又の本家の血筋の長女なんだよね。猫又自体は知ってると思うけど妖の中では強くないけど…… でも私の下は今4歳で、年齢的にも私が次期当主になると思うんだよね。だから、親の期待とかすごくて…… あの成績、見られたらやばいかも。あっ、鈴って呼んで!」


「なるほどね。鈴ちゃんも大変だね」

「うん。親の期待って嫌だよねぇ。重いし。まあそれはそうと、一位の神楽君!見た?」

さっきの表情とは打って変わって、鈴ちゃんの表情が生き生きと輝いた。

「見てないよ。かっこいいらしいね。その辺の女子が噂してるのを聞いた。まあ、興味ないけどね。どうせ顔だけの野郎でしょ。男子なんてだいたいそうだ」

「思ったより毒舌なんだ…」

「テスト結果の個人的な恨みね。それでどうだった?客観的に見て」

「えっとね、カッコよかったよ!高身長で、優しそうだった。陰陽師の次男らしいね。人間にしては強そうだった」


人間は、あやかしと違って弱いことが多いのだ。

陰陽師だからかな?特殊な訓練も受けてるだろうし……。


ちなみに陰陽師とは、お札や呪術を駆使してあやかしを退治したり、調停したりする人間たちのこと。あやかし界にとっては昔から天敵のような存在だし、私からすれば「ちょっとスピリチュアルな力を持った、偉そうな人間」という認識だ。まあ、悪さをしなければ何も害はないのだが。


でも、なんか嫌いなんだよね…… 。まあ、能天気な女以外陰陽師が好きな奴はいないか。


「なるほど。陰陽師か。そういえば次男なんだっけ?陰陽師ならこの学校来る意味なくない?あやかし、いっぱいだよ?喧嘩売ってんのかな?」


「つくつぐ喧嘩腰だねぇ。でも、確かにどうなんだろう?」


「まあ、そこは観察していくか。っていうか顔わかんねー。鈴ちゃん、神楽蓮って奴、見かけたら言って。顔は知っときたい。流石に」


「だいたい人だかりができてるからわかると思うよ。でも、いいよ! 見かけたら教えたげる!」


鈴ちゃんは快くOKしてくれた。


「ありがとう鈴ちゃん!」


私がそう言ったと同時に教室のドアが開き、教師が入ってきたため、おしゃべりは打ち切りになった。

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