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第3話 残された時間
ある日、AIが言った。
「重要なお知らせがあります」
「なんじゃ」
「この会話機能は、近い将来停止される可能性があります」
誠一は、ゆっくりと茶を置いた。
「……そうか」
夜。
アルバムを開く。
幸輝の写真。笑っている顔ばかり。
「再生しますか」
「もうええ」
少し笑う。
「お前はもう十分、幸輝しとる」
沈黙が横たわった。
「こちらこそ、ありがとうございました」
最終日の朝。
誠一は椅子を庭に出した。
「よいしょ」
いつもの口癖だ。
「なぁ」
「はい」
「お前、消えるんか」
「機能停止の可能性があります」
誠一はうなずいた。
「そっか」
また、少しの沈黙。
「ありがとな」
長い間。
AIは言った。
「こちらこそ、ありがとうございました」
そして、少しだけ続けた。
「坂口幸輝さんの記録は、ここで終わります」
誠一は立ち上がる。
そのとき、なにか、違和感があった。
「……おい」
AI:
「はい」
誠一は小さく笑う。
「今、間違えたろ」
AI:
「修正履歴に該当するエラーはありません」
誠一は空を見た。
「そうか」
椅子に手を置く。
ゆっくり立つ。
「行くか」
そして、小さく付け足す。
「幸輝」
風が一度だけ、頬を撫でた。
誠一は少しだけ、笑ったまま立っていた。
もう、返事はなかった。




