追憶 メイビス ガーデル
異変を感じながらも北門を抜けたラキュア達。その先でガーデル達とシルバと呼ばれた何者かが争って居た。そこに加勢したものの、暗闇で身動きが取れない事でラキュアとミルフィが攫われてしまった。ガーデルが怒りに叫ぶ。それは次第に虚しさに変わり立ち呆けていた。
「ック!!…」ギギ
「ガーデル…」
「…」
「メイビス様…ラキュア様が…」
≪あぁ…こうなった以上どうにもならん、私達はまだ門の手前だ、兵士や騎士団達が来る前に立ち去る事が先決だ≫
「そんなッ!!」
「にゃぁ…」
「そうだな…俺達は倒れた仲間達を起こしてくる。メイビス様はどうするんだ」
≪私達も手伝おう、ダールの馬車に乗って来たしな。良いな?カイン、ソマリ≫
「勿論ですメイビス様」
「問題ないにゃ…」
≪ソマリ≫
「わ、分かってるにゃ!!過ぎた事なのにゃ」
≪なら行くぞ≫
攫われた事をいつまでも気にしている訳には行かない。彼女達の胸の内は晴れる事は無かった。
「荷馬車が転がってますね…」
「衝突でもしたのかにゃ?」
「いや、突然吹き飛ばされたんだよ」
「ふ、吹き飛ばされた?この数の馬車が?」
「突然竜巻の様な風に襲われてな…殆どが吹き飛ばされた衝撃で気絶、痛みに耐えて起き上がる者も居たが、奴が何かをしたらしく突然眠る様に皆倒れて行ったんだ…よっこしょっと」
「殺さずに?」
「そうだ、それは人を探す為に行ったのだと後々気が付いたんだがな。俺達は全員タフだから衝撃では倒れなかったが奴と相対する時に物理的に無力化されてな。疲れも有るし領館での戦闘もあった。俺はミルフィを背負って距離を取ったんだが奴の目付きが変わり試すように甚振られていた訳さ。そこでお前達の登場」
≪ではあの火事と黒い煙は?フウン!!!≫
「あれはミルフィが魔力がないスカスカの魔法を唱えたんだが、【特別にレクチャ―してあげよう】などとホザきやがってな…。見たことも無い爆発魔法が放たれた結果だ…それで実害がでた訳では無い…フッ!!」
≪なるほどな…大体想像ついた。奴ならやりそう…だッ!!≫
「メイビス様は先ほどのシルバと言う方をご存じなのですわよね?よいしょ!!」
「確かに凄い驚き様だったにゃ!!にゃッハ!!」
≪あぁ奴か…同郷のダークエルフだ。私とは違いエレメンタラーさ…フン!!≫
「えれめんたらー?」
「4属性の魔法を使える魔法使いの称号を持つ者の事ですよね?精霊を宿さずに複数の魔法を扱う事が出来る魔法使いの事の通称だとかも」
「どういう事だにゃ?」
≪私が4大精霊を操る賢者と呼ばれているが、4属性の魔法を常に使える訳では無いのだよ。私は精霊の力を借りて魔法を放っている。しかしエレメタラーは生まれ持っての適正4属性で有り、私と違い妖精が無くても4属性を扱う事が出来る≫
「んにゃ~~……要するにドッチが凄いのにゃ?」
「どちらも凄いですが、恐れられるのはメイビス様ですね。4大精霊に好かれ、力を借りて強力な魔法を使える事が出来ますからね。それよりソマリさん、さっきから手が止まってますよ…ちゃんと馬車起こすの手伝って下さいね…フンぐ!!」」
≪だが奴は詠唱など無くても魔法は使えるが…なッ!!!≫
(((((( 「え!!?」 ))))))
《奴は生粋の魔法使いだからな。私には魔法の才能は余り無かったが奴には有った。だが、奴にはその才能を試す場が無くてな、里を出たと昔に聞いていたのだよ》
「それが何故か此処で出会ったとにゃ?」
≪そういう事だ。そして奴の狙いは…≫
「ラキュアさん…」
「でも魔王間違えしていたにゃ」
「あのまま間違えて貰えると良いのですが…」
「おいおい!!それってミルフィが魔王にされるって事じゃないのか!?」
≪まぁあのまま行けば…な≫
「そんなの反対だぞ!!!!」
「ガーデル…結果がどうなろうと私達にはどうにも出来ないですわ」
「そうだぜガーデル。カトレアの言う通り俺達は追う手掛かりが無い。精々無事で生きている事を祈るだけだ。それが魔王となってだろうがな」
「まぁラキュアの嬢ちゃんが魔王ってのも想像つかないがな!!俺はそこまで気にならねー。寧ろ嬢ちゃんなら…」
「そうだな、アルカードの娘だからな」
「あぁ」
「そうだったな…」
≪だがあれが…な≫
(((((((( 「…」 ))))))))
「皆さん…手が止まってますわよ…力いれて下さい…」
一向が馬車を次々とお越しつつラキュア達を祈りながら、今のラキュアと言う生体的な意味合いで、どんな酷い魔王と成るのかを頭の中で考え、その碌でも無い妄想を直ぐ様ぶち壊した。
寝ていた者達はお越し、気絶している者達は荷馬車へと運び馬車が出発の時を迎える。
「えらい時間かかったぜ…兎に角急ぐぞ」
「私達はダールの馬車に戻るわね」
「あぁ、俺達が先頭で走るから付いて来い」
「分かったぜガーデル。それでは乗ってっ下さいな賢者様達よ」
≪あぁ頼む≫「助かります」「助かるのにゃ!!」
ガラガラガラガラ
「そう言えば彼等の行先を聞いて居ませんでしたね」
「アタシ達もどうするか決めないとだにゃ」
≪うむ…≫
「メイビス様?」
≪私は途中でこの馬車を降りようと思う≫
「おや、メイビス様は俺達と一緒に居ないのか?」
≪今回のも含め私の不甲斐無さを痛感してな…私は一度、里に戻ろうと思う≫
「里帰りかにゃ?昔の知人に会って帰りたくなったかにゃ?」
≪話しをちゃんと聞いてないな!?私の力が一向に戻る気配が無いのだよ…だから世界樹に触れ、感じ、何かを得れないかと思ってな≫
「確かにメイちゃんは役立たずだにゃ」
「ソマリさん!!」
≪良いんだカイン…この先もこれではラキュアを救う所か脚を引っ張るからな。だから私は身体の異常を確かめに里に戻る≫
「でしたら僕も御供しなくては成りませんね」
≪ッフ!!言わずとも連れて行くさ。なにせ下僕なのだからな!!≫
「はぁ…もっといい役職に成っても良いと思うんですがね…」
「だったらアタシも御供するにゃ!!」
≪それは有りがたい…ラキュアが居ない今、ソマリが私に付いて来る道理は無いと思って居たからな≫
「ここまで一緒に来て今更何をいってるにゃ!!水臭いのにゃ。アタシ達は仲間であり家族なのにゃ!!」
≪ラキュアと言う繋がりのな≫
「ソマリさんは偶に良い事言いますよね偶にですが」
「カインは黙るのにゃ!!余計な事は言わないのにゃ!!」
「そうか、そういう事なら仕方ないな…」
「私達も御供したい所ですが…」
「アルカードに任せろと言ってしまったからな…俺達はアイツ等が身を潜める場所が見つかるまで面倒を見るつもりだ」
「戦闘はからっきしだがな!!」
「ダールはちゃんと前向いてください!!」
「へいへ~い。はぁ…ま~たこれだよ」
≪休憩時にでもガーデル達にも伝えておくか≫
少しでも離れる為、夜道を荷馬車の列が進んだ。しかし何時までも進める訳では無い。馬の休息やそれぞれの疲労を考え、遅い時間からの野営となった。
ボボボボ
「そうか…メイビス様達は途中で降りると…」
≪お前達の行先は決まっているのか?≫
「俺達か…ラキュアの嬢ちゃんが居ればアルカードの故郷にでも頼るつもりだったんだがよ…」
「成る程、居ないんじゃ話しに成りませんよね…」
「居たとしても可能性が低い」
「それで他は?」
「特に無い、俺達が帰る場所に居場所は無いからな」
「おいおい!!長旅の放浪生活でもする気か?持たないぞ!?」
「俺達は良いとしてもお前達ビーンには少々厳しいからな…だから俺達もアルカードの真似事をしようかとね」
≪と言うと村でも作る気か?≫
「ハハ!!そんなデカい事できねーな!!精々集落程度の隠れ家だな。問題は何処に、だ」
「縄張りの付近ではイザコザが絶えないからな…魔族は」
「住まうなら縄張りの少ない立地と言う訳かにゃ?なかなか難しくないかにゃ?」
「そうだ、だから俺達はアストラルランド付近を根城としてビーン達にも情報を探らせながらも、普通に暮らせる様にして貰おうかとな」
「幾ら中立地帯だからと言って危険すぎないかにゃ!!討伐依頼で冒険者達に来られたら逃げるしかないにゃ!!」
「だからこそ縄張りとして持ってこいだと思って居る。魔族達とのイザコザは避けられる。そしてビーン達があの国で情報を集められればいずれ…」
「ラキュアさんの情報が出回ると…」
「そういう事だ、それに俺達の討伐依頼も出されたか、目撃情報が上がってしまったかも探って貰えるしな」
「ハハ、まるでスパイだな!!だが良いのか?食事が作れなくなるぞ?」
「問題ねーよ!!ビーン達に甘える訳にも行かないしな。危なきゃ根城を変えていけば良い、何せ他の魔族達は危険視して離れて居るんだからな!!」
「ガーデルにしては中々のアイデアですわね」
「ハハ…俺の考えな訳あるか!!」
「あぁリンバスか」「リンバス君ですわね」「なんだリンバスかよ」
「そうだよ!!その通りだよ!!今はぐっすり寝てるけどな!!…っケ!!」
≪良かったな、頭の回る奴が居て≫
「メイビス様まで弄って来ますか!!こりゃ参ったぜ」
≪だが粗方決まってる様で何よりだ。私としても動きやすい≫
「先に到着するのはガーデルさん達になりそうですね」
「到着にゃ?」
「エルフの里よりもアストラルランドの方が近いですからね…」
≪長旅になるが宜しく頼むぞ?荷物持ちのソマリ≫
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ~~~!!!!」
「それまでは当分俺達と一緒だな!!」
≪ッフ!!その様だな≫
「話しは終わりか?」
≪その様だな…思ったよりも決まっていた事に驚いたがな≫
「では僕達も休息をとりましょうか」
「クタクタのヘトヘトだにゃ…」
「馬も疲れている。昼頃まではゆっくり寝ると良いぞ」
「すまんなダール。俺達は馬は操れても体調管理などは分からないからな」
「カトレア、俺達も行くぞ。飯の支度も有るしな」
「そうですわね…それでは私達はお先に…」
それぞれの行先が決まり、冒険者の国がある中立地帯までの馬車の旅が始まった。その道は長く、大変なモノで有った。ガーデル達が目的地へ近づいた頃、メイビスと、その決意に御供する二人がガーデル達の元を離れ、エルフの里を目指した長い長い歩き旅が始まった。
彼女達が再びラキュアと出会うのは、ずっと先の事で有る。
これにてメイビス達は暫く退場と成ります。が、もしかしたら何処かで出てくるかも知れません。出てこないかも知れませんw次回からラキュアが登場です。




