33話:戦場と化す館
戦士としてまだまだ現役と言われる領主ジェミルニアは己の本能に抗えずスキンヘッドことカインとの決闘を申し込み、カインはそれを断れず受ける事にした。
「しょ…障壁魔法陣…何をする気ですか…こんな場所で…」
「そいつの大槌は危ないからな…一騎当千を成し遂げるバカげた武器だ。守ってやらんと館がボロボロになりかねんのだよ」
「そんな物こんな場所で使わないでくださいよ!!それこそバカげてますって!!」
「それじゃあ本気が見れそうも無いだろ?五体満足で居たいなら本気でかかって来るが良い。生半可な力加減じゃワシの大槌は防げんぞ?」
「なんで僕がこんな事…僕なんかよりアソコの人の方が強いんですからね!!」
「ほお!!お前さんより強い奴がおるのか!!だが、この目で見てないんでな、ワシはお前さんにしか興味がないぞ?さて、お前さんは兵士にしては立ち回りが可笑しいからな、使えるモノは全部使って来い。武技か?魔法か?それとも精霊か?何を隠してるか知らんがルールを無視してかかって来るが良い」
「それも込みでこの二重の障壁って事ですか…」
「そう言う訳じゃ、来ないならワシから行くぞ?」ドゴン
ジェミルニアが大槌で軽く地面を叩と地面を伝った衝撃波がカインに迫って来た。
「っな!!遠距離攻撃!!?だがこれ位の速度なら…」ササ
「まぁ避けるよな?だが早速ボロが出とるぞ?お前さんは魔法使いかの。ほれ撃ってこい」ドゴン!!
大槌の牽制がまさかの遠距離攻撃に驚き、大槌を受け止める為の構えから遠距離を意識した構えに成っていた。それは魔法に対して魔法で受ける時の構え、カインは両手で握っていた剣を鞘に戻し片手で握りながら、左手の平を前に向けていた。
「くそっ…大槌で遠距離攻撃なんて…まるで精霊使いではないですか!!」
「なんだまだ避けるのか?防ぐ所が見たいんだがの。ほれ行くぞ?」
【地振波動】!!ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
地面を叩く衝撃が瓦礫の波となってが横に広く襲い掛かって来る。避ける事などさない為に。
カインの勿体ぶる余裕は消え失せ守りの呪文を口ずさむ。
「いくら障壁があるからってこんな!!」大地の精霊よ 我が盾と成れ【土盾】!!!
ゴゴゴゴゴゴ ドゴン!!
襲い掛かる波はカインの土壁で受け流し、横に広がり障壁にぶつかった。レンガを含んだ土の瓦礫がダムの様な堰き止めた盛上りとなって障壁の前に残る。
「ほほう、土魔法を駆使するとは珍しいの。今じゃ街の役立ち人だからの!!」
「確かに…戦うには不便ですけど…守る事に置いては素晴らしい魔法なんですよ!!」
ボゴン!!ボゴン!!ゴゴゴ!!!ドゴン!!!
お互いが地面に干渉した技を相殺し合う。しかしカインは精霊を呼んでいない。魔法戦に置いて近寄られる事は死を意味し、詠唱速度は命の要である。無詠唱で解き放つジェミルニアの攻撃に詠唱が付いて行かずその隙を突かれ懐に入られてしまった。
「本物の魔法使いで有るなら二流と言った所じゃろうな、歯を食いしばれよ小童よ」ブォォオン!!
「~~~~。まずい間に合わない!!!」ガチャン!! ドゴゴゴン!!!
詠唱途中のカインはそれを破棄し、剣を両手で持ち直して受け止めたのだが障壁へと吹き飛ばされてしまった。
「良く受け止めたな。やはりただの魔法使いでは無かったか。どちらもかじっておる様だな」
「ほお、その剣の使い方を知っているとは何者だ。ほどほどにしろよジェミルニア」
「っハ!!相手の身の安全かよ!!何だ、早速スカウトでもする気か!?だがまだ終わっちゃいねーぞ」
ぱらぱらぱらぱら
「流石にキツイですね…明らかに格上ですよ…」バサッバサ
瓦礫のカスを払い立ち上がるカイン。その手に握られた剣には黄色く仄かに光が包み混んでいた。
「それにしても何処で覚えたんだ?武器に精霊を流し込むなんざ普通の兵士には出来ないぞ?」
「詠唱破棄し、そのまま大気に留まった精霊達を剣に流し込み、戦鎚ティターンの魔力を吸収するとは驚いたわい!」
「物理的な衝撃は流石に…無理でしたがね…」
「その割には元気だな、打たれ慣れおるの!!」
「はは…誰とは言いませんが、しごかれてましたしからね…」
カインがクリフを横目で見ながら嘆き、両手を上げた。
「も、もう辞めてもいいでしょうか…」
「なんだもう降参か?ちと早すぎると思うがな」
「相手が聖騎士団じゃないなら、と高を括って受けましたが…そんモノの打ち砕かれました。勝てる気がしませんよ…」
「ハッハッハ!!そりゃそうだ!!元聖騎士団で前団長部隊の一人だからな!!」
「そんなのは若いころの話だ。」
「な、そんな方がこんな場所で!!?」
「おいおい、愛した場所をこんな呼ばわりは聞きづてならねーぞ?コイツはココを守る為に今こうして居るのだからな」
「そんな事は等の昔に言われ慣れたわ!!」
「そ、それで僕の降参は…」
「こやつ、まだ武技を出しとらんからの…本当の所はそれを確かめておきたかったが本人にやる気が無いならそれまでだろうな」
「よ、良かった!!なら僕は戻り…」
「その前にその顔でも拝ませて貰おうか。何せこれから騎士団に入るんだからな!!」
「は、はいぃ!?入りませんよ僕は!!」
「クリフ、一応彼等は旅人だと聞いたぞ?」
「それは本当か?この都市の者じゃないのか…それは残念だな、だがせめて顔くらいは…」
「いえ、それは…」
元エリート聖騎士と元未熟な聖騎士の決闘が呆気無く終わり、今度はクリフの問答と戦っていた。
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キャー!!助けてくれー!! ドタドタドタドタ
クリフが被り物をするカインにせがむ中、突然会場から叫び声が聞こえ出した。聖騎士達が居る中庭に逃げ込んでくる人々。障壁により入りきれず、クリフが障壁の解除の指示をだした。
「ニコラス!!一部の陣を停めろ!!一度障壁を解除する!!中庭に流れ込む貴族達を中へ入れろ!!」
「ッハ!!直ちに!!」
ニコラスが集中していた陣に光が消え、その後各自に指示をだしてた。会場から駆け付けた男達がジェミルニアの元に付き慌てた顔で話し出した。
「ジェミルニア様大変です!!会場内で戦闘が!!」
「どう言う事だ!!それに戦闘だと?誰が誰と戦っている?怪我人は居ないか!?何が起きている!!」
「それが私達にも分かりません…ただ貴族の子供達が何者かに人質になっており、其処に魔族が!!」
それにクリフが反応した。
「魔族だと?魔族が人質を取ったと言う事なのか?まさか牢の…」
「違います!!戦っているのはその何者かと魔族です!!」
「全く状況が分からないぞ!!兎に角ワシ等が向かう、ここで聖騎士達に障壁を貼らせるから全ての招待客を集めて守って貰え!!」
ジェミルニアの側近と思われる男達がその指示に従い、護衛達が周囲を警戒し聖騎士が障壁を再構成しだした。その騒ぎとジェミルニアの会話を聞いていたメイビス達が動き出す。
《聞こえたかソマリ》
「ばっちりにゃ!!かなり不味い事に成ってる見たいにゃ。会場内に…」もごもご
《なんだと!?その魔族はまさかラキュアでは無いだろうな!!急いでカインと共に向かうぞ!!》
「分かったにゃ!!カインを呼んでくるにゃ!!」
タタタタタタ
「人が多いにゃ…小柄なカインよりデカ物クリフ探した方が良さそうにゃ…居たにゃ!!」タタタタ
ソマリが飛びぬけて目立つ大柄の男を見つけ駆け寄った。
「なんだ、あれはお前さんの仲間じゃないか?」
「ソ、ソマ…タイガーさん!!」
「それ誰だにゃスキンヘッド!!それより急いでコッチくるにゃ!!大変な事になってるにゃ!!」
「話しなら大丈夫です。ジェミルニアさんの話しは粗方聞いて居ましたので。僕も向かいます!!」
メイビス達は騒ぎを聞きカインと合流をして会場に向かう。
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パーティが始まる少し前の日が沈んだ時間まで遡る
ボロボロのローブに身を包み、頭をフードで覆った集団が暗い街中の路地裏へと集まって居た。
「そっちの準備はどうだ」
「あぁ問題無い。ベテランの兵士達は今頃領主の屋敷だろう。さらに朗報だ」
「朗報?」
「そうだ、北門を見張る兵士共はどいつもコイツ疲れて眠たそうな顔をしてやがる。聖騎士の訓練の噂は本当だったのかもしれん」
「本当か!!なら強行突破も可能かもしれんな…成功するか分からないが、予定通り先に出口の確保をするか」
「おい、本当に今日出るのか?もし助け出せなかったらどうするんだ。」
「例え助け出せなくても…今日しか…無い。助けるのも、逃げ出すのも。もし助け出せなければ動ける奴等だけでこの都市を出る」
「それは見捨てる事にならないか?まだ待てば…」
「無理だ、これ以上ドドの店には居られない。聖騎士が嗅ぎ付けるのも時間の問題なんだぜ」
「そうだ、俺達の決意はもう決まっている。理想は全員で逃げる事だ、だが今日を逃せば、全員が捕まる最悪なパターンが今以上に高くなる」
「ならばもっと真夜中に決行するでも良いじゃないか!!」
「それでは疲れた兵達が交代で休みを取ってしまう。眠いが起きているこの時間帯が一番なんだよ」
「良く分からねーぜ…」
「元気に成った奴を無力化するのは骨が折れるんだよ。俺達は殺し屋じゃないんだ。そんな事をするならお前の店には寄る必要など無かっただろうな…」
「そう言う事よ。今までお世話になったわね。ありがとう…」
「お前等…」
「さて、ここからは別行動だ。北門の開門は任せた。俺達は領主の館へ行く」
「ガーデル!!私も!!」
「ミルフィ…お前は駄目だ。女性や子供達を纏め北門が開くまで待機だ」
「私だって戦えるわ!!」
「だったらお前が彼女達を守らなきゃならんな。心強いと言うモノだぜ」
「貴女に死なれるの一番困るわ、…あの子が生きて戻ったら何て顔するかしら…」
「わ、わたしは!!!」
「ほれ、無理矢理にでも連れて行け。上手く行ったら空に火の玉を打ち上げる。何も無ければその時だ、待たずに逃げてくれ。俺達は先に行くぞ、ミルフィ後は任せた。」
タタタタタタ
過激派のガーデル達は領館へ向かい、肉体派の男達は北門へと向かい、非力を纏めるミルフィは女性達と共に合図まで身を潜める。
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屋根を伝い、領館の敷地を遠くから覗く魔族達。
「妙に敷地が明るいな」
「夜からの招待だからだろうな、庭までしっかり明るくされてやがる」
「どうする、裏から行くか?」
「普通はそうだろうね。だが正面から行く。まずは敷地の傭兵共から無力化し脱出経路を作る。アレを見ろ」
男が指さす場所には貴族達が乗って来た馬車が止めあった。
「あの馬車を使う為に、正道を作り逃げ道を確保する。先ずはそこからだ。それが済めば馬を拝借して馬車待機させよう」
「その後はどうやって侵入する?それも真ん中からか?」
「流石にそれは無理だ。裏に回り窓を破るしか無い。人の居る場所を避け、館内を探す。館で見つからなければ領主の屋敷に向かえ。流石に住居には居ないと思うがな…」
「了解したぜ。お前が居て助かるぜリンバス。俺達脳筋には突っ込むしか考えつかないからな!!」
「気にするな、それに俺の仕事はここまでだ、後はお前等を見届け魔法を打ち上げる位さ」
「十分だ、後で拾いに来てやるぜ。行ってくる」ササッ
館を見下ろすガーデルとリンバスの段取りの会話が終わり、ガーデルが仲間を連れて動き出した。
ササッ チラ
「おいガーデル、本当に正面から行くのか?」
「最初だけだ、あの眠たそうな兵士共を文字通り眠らせるぞ。だが殺すなよ?」
「分かってるよ」
ササッ ドン!!バタ!!
「な、なんだ!!う!!……。」
次々に眠たそうに警備をする兵士達の首元を叩き意識を奪っていく魔族達。
殺そうと思えば殺せるのだが彼等はそれを決してしない。無用な殺戮は彼等の意志には無いのだから。
あるのはアルカードの意志。
「ちょろいもんだぜ。俺達じゃなきゃ殺されてんぞお前等」
倒れ込んだ兵士達に吐き捨て、着々と準備を進めて行った。馬車に馬を繋ぎ、移動経路も確保した。後は忍び込み、探すのみ。しかし
「おい、ドコモかしくも明かりだらけだぞ!!」
「忍び込むのが難しくなったな…くそ、どうする…」
「いっその事見つかる前提で入り込むか」。
「そうは言ってもどっからだよ!!」
「俺達が危害を加えても大丈夫な場所、厨房の裏口からだ。流石に兵士など居ないだろう。ついでに料理でも摘んで行こうぜ!!」
「そんな暇はねーよ!!よし、そうと決まれば行くぞ!!」
ガーデル達は調達した食材を持ち込む為の厨房の裏口から侵入する事にした。するとそこに居たのは…
「な、なんだこれは!!う!!…」バタ
「どうしたお前等!!う!!…」バタ
「こ、こんな所に人が!!う!!…」バタ
「はぁ~尿意には流石に耐えれないよなぁ…じょろじょろ~ う!!…」べちゃ
「可愛い可愛い我が馬たちよ…今日も良く働いたね…よ~しよし。う!!…」バタ
「いかんいかん!!馬車に忘れ物をしとったわい!!今日だけはこの桂が許される日じゃからの。う!!…」ズラ
暗闇を襲われ眠りに落ちた者達は一体どれほど居たのだろうか…。




