その9 嫌味を言われてむしゃくしゃしていたが静奈の誘いになぜかうなずく
◆◆◆ その9
園長に嫌味を言われたばかりの涼子はさすがにむしゃくしゃしていてそんな気分ではなかったのだが、
「いいよ、行きましょう。」
静奈の誘いになぜかうなずいていた。
「じゃあ、お迎えに行くから。せんせーんちの前に着いたらスマホ鳴らすね。」
「お願いします。」
涼子は軽く返事をすると静奈から離れて仕事に戻った。
「そういえば、私ってあんまり飲めないんだけど大丈夫かな・・・」
「お待たせ~。」
静奈は時間ぴったりに涼子のスマホを鳴らした。
「お願いします。」
そういって涼子は静奈の車の助手席に乗り込むと、シートベルトを締める。静奈はゆっくりと車を発進すると繁華街に向けて出発した。
「突然誘って迷惑だったかなあ。」
仕事中の静奈に比べると静奈のテンションはやや高いような気がする。
「ううん、そんなことないよ。今日は飲みたい気分だったからうれしいな。」
「そう言ってもらえるとうれしいな。」
15分ほど走らせて静奈が止めたのは繁華街にある昔ながらの寿司屋だ。
「ここなんだけど。」
「へえ、しぶいお店だね。」
静奈を先頭に二人はすし屋の玉暖簾をくぐる。
「へい、いらっしゃい。おっ、今日はお友達を連れてきてくれたのかい?。」
静奈はここの常連らしく、大将らしき初老の男性が威勢よく声をかけてくれる。
「大将、この子は涼子ちゃんっていうの。よろしくね。」
「涼子です、初めまして、よろしくお願いします。」
よくある居酒屋での飲みを想像していた涼子にとって自己紹介が必要なお店は初めてだ。特定の店の常連になったことはかつてない。
「はいよ、お二人様、カウンターへどうぞ~。」
大将の案内で涼子と静奈は指さされたカウンター席に腰を下ろした。