その5 逆切れされる始末なので、涼子は子どもを数えると一人足りないので言い合っている時ではないと慌てる
◆◆◆ その5
それでも最初は頑張ってやっていたのだが、ある日涼子はついにキレてしまった。それは朝の出来事だった。
「今日はみんなで一緒に歌を歌いましょう!」
そう言って歌いだしたのはいいものの、音程がめちゃくちゃであった。子供のノリがイマイチだったので、涼子は次の提案をする。
「はい! じゃあ、プレールームに行って遊びますよ~!!サポート先生は先行をお願いします。」
と言って子どもたちと廊下に出たとたんに、入口マットに足を取られて転んでしまった。周りにいた子どもたちも驚いてしまい泣き出す子もいた。
転んだまま立ち上がれなくなってしまった涼子のもとに、
「大丈夫ですか?」
と言いながら近づいてきたのはサポート先生だった。
「え? どうして先生がここにいるんですか!?。」
「え? だって……。私も担任ですもの。」
「へっ?。」
どうやらサポート先生は自分は担任なみに頼りにされていると勘違いしているらしい。
子どもたちをプレールームに行かせて遊ばせる際には、担任かサポートどちらかが先にプレールームに行ってカギを開ける。準備ができたころを見計らってもう一人が送り出す。
最後の子供の後を追って部屋を出てから施錠する、というルールが決められていた。子どものヒヤリハットを防ぐ方策の一つである。
涼子はこのルールに従って、サポートさんに先に行ってもらい、最後に園室を閉めようとした。しかし、プレイルームは開錠されておらず、ルーム前には子どもが走り回っているではないか。
サポート先生を探すと今ルーム前に現れ、涼子に向かって大きな声を出した。
「ちょっと! あなた何してんの!! 早く入ってドア閉めて!!!」
「今頃何やってんですか。」
さすがの涼子も切れて、サポート先生に大きな声で問いただした。
「トイレに行くから5分待って、といったはずだけど、聞いてなかったの。」
と逆切れされる始末だった。涼子は慌てて子どもを数えると一人足りない。今は言い合っている時ではないと判断した涼子は、サポート先生にプレールームへ入ってもらい、すぐに園内を探し始めた。